不遇職とバカにされましたが、実際はそれほど悪くありません?

カタナヅキ

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蛇足編

ミスリル鉱石

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「ここならミスリル鉱石を売ってくれる?」
「どうかしらね……この国の鍛冶師にとってはミスリルは一番の価値がある鉱石のはずよ。そう易々と渡してくれるとは思わないけど……」
「大丈夫だよ!!話してくれれば分かってくれるよ!!」
「いざという時はリンダが色仕掛けすればいい」
「何故、私がそんな事を!?」
「だって私達はレナのお嫁さんだし、旦那様以外に媚びを売るわけにはいかない」
「ううっ……お、お断りします!!」
「こら、リンダは真面目なんだからからかったら駄目だよ」


コトミンの言葉にリンダはそっぽを向くが、とりあえずは鍛冶屋の中に入る事にした。巨人族の王都で経営しているだけはあってどこの鍛冶屋も巨人族が通り抜けられる程に天井が高く、中には巨人族の鍛冶師も存在した。


「馬鹿野郎!!何度言ったら分かるんだ!!トンカントントンカンだ!!お前の場合はトンカントンカントンカンじゃねえっ!!」
「す、すいません親父!!」
「たくっ、この調子だと10年は店を任せられないな!!」


巨人族の鍛冶師にドワーフの老人が叱りつけており、巨人族の鍛冶師などレナは初めて見た。とりあえずは中に入って話しかけようとした時、老人がレナ達に気付いて訝し気な表情を浮かべる。


「誰だお前等!?今は仕事中だ、用事があるなら後にしろ!!」
「あ、すいません。ここの鍛冶屋でミスリル鉱石を取り扱っていますか?よければ買い取りたいんですけど……」
「何だと!?」
「ふ、ふざけるな!!お前等も奴等の仲間か!?」
「奴等?」


ミスリル鉱石と口にした途端に巨人族の鍛冶師とドワーフの老人は殺気立ち、二人の反応にレナ達は困る。どうしてミスリル鉱石を買い取りたいと言っただけで彼等が怒るのか理由が分からず、まずは落ち着かせるためにシズネが話しかけた。


「落ち着きなさいよ。貴方達から無理やりミスリル鉱石を奪うような真似はしないわ、私達は今日ここへ来たばかりの旅人よ」
「ふんっ!!観光客か……本当に奴等の仲間じゃないんだろうな?」
「奴等って誰の事ですか?」
「他の鍛冶屋の奴等だ!!あいつら俺達がまともな道具を作れないだろうと言い張ってミスリル鉱石を奪おうとしやがる!!」
「どういう事ですか?」
「……ちっ、仕方ねえな。茶でも入れてやるからこっちにこい」


誤解が解けたのかドワーフの老人はレナ達を奥に案内し、ひとまずは全員を座らせる事にした。律儀に魔獣達の分のお茶も用意し、スライム達には皿に水を入れて置く。


「お前等、魔物使いか何かか?よくもまあ、これだけの数の魔物を従えているな」
「えっと……まあ、そんなもんです」
「皆、良い子だよ~」
「ウォンッ(鼻を鳴らす)」
「キュロロッ(つぶらな瞳)」
「ブモォッ……(猫舌なのでお茶が熱くて飲めない)」
「「ぷるぷるっ(←お互いの相手の皿の水の方が多いと争う)」」
「本当に変わった連中だな……」


バルトロス王国では魔物達を引き連れていると何処の街でもちょっとした騒ぎになるが、巨人国ではそれほど大きな騒ぎは起きない。巨人国は現在は様々な種族が出入りするため、魔物使いが居たとしても大して騒がれないのかもしれない。

お茶を飲みながらレナ達は鍛冶師の二人から話を聞き、まずはドワーフの老人の名前は「ゴーン」そして弟子の巨人族の鍛冶師は「ムン」というらしい。ゴーンはこの店の経営者であり、少し前までは鍛冶を執り行っていたが現在は引退して弟子のムンに道具作りを任せている事が判明した。


「半年前に儂は事故に巻き込まれてな、この腕は義手じゃ」
「あ、本当だ!!」
「全然気づかなかった……」
「私は見抜いてたわ。でも、精巧な義手ね……本物の腕にしか見えないわ」
「確かに」


ゴーンの右腕は義手らしく、彼は片腕を失ったせいで鍛冶ができなくなった。だからムンが彼の代わりに仕事を行おうとするが、生憎と彼は半人前で現在もゴーンの指導を受けて仕事を続けていたが、未だに師が満足するだけの物は造り上げられない。


「こいつが一人前の鍛冶師になるには数年はかかる。今の所は儂が作り置きしていた商品を販売しているが、この調子だと経営もままならん」
「すいません、親父……俺は才能がないので苦労を掛けます」
「馬鹿もん!!謝る暇があるならば鉄を打て!!」
「は、はい!!」


ムンはゴーンに言われるがままに鉄を打ち付け、その様子を見ていたレナ達は素人目から見てもムンは鍛冶に慣れていない事が分かる。そもそも巨人族は人間と違って器用な作業は苦手としており、鍛冶を行う巨人族などレナ達は初めて見た。


「他にお弟子さんはいないのですか?」
「何人かいた。だが、俺が事故にあった途端に他の鍛冶屋に引き抜かれた」
「そんな!?」
「よくある話だ……弟子が俺に従っていたのは俺が奴等よりも優れた鍛冶の技術を持っていたからだ。だが、こんな腕になってしまった以上は俺は鍛冶はできない。弟子共が鍛冶をできなくなった俺を見限るのも当然と言えば当然の話だ」
「親父!!俺は一生親父について行きますから!!」
「ふんっ!!お前の場合は俺以外に頼りにできる相手がいないからだろう!!」
「ひ、酷い!?」


ゴーンの言葉にムンはショックを受けるが、ゴーンは苦笑いを浮かべていた。口は悪いが自分の元に残ってくれた彼には感謝しているらしく、レナはそれを見て彼は悪いドワーフではないと悟る。
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