不遇職とバカにされましたが、実際はそれほど悪くありません?

カタナヅキ

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蛇足編

閑話 《ダインとバルの過去その1》

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――監獄都市から転移魔法で帰還したダイン達は冒険都市に戻るとレナの屋敷へ訪れた。彼の屋敷ならば無料で泊めてくれるので宿代の節約のために訪れたのだが、ダイン達はレナ達が旅に出たことを初めて知った。


「ええっ!?レナ達が何処に行ったのか分からない!?」
「は、はい……行先も告げずに急に旅に出られたので我々も困っています。アイラ様はレナ様なら大丈夫だとおっしゃっているのですが……」
「あらら……当てが外れましたね」
「旅行か?それとも武者修行の旅に出たのか?」


屋敷の執事から話を聞いたダインはレナが不在だと知ってショックを隠せず、ミイネとゴンゾウはレナ達が何処に行ったのか気になった。だが、ダインは自分の手持ちを確認して顔色を青ざめた。


「や、やばい……今日はレナの家に泊まれると思って宿代なんて残してないぞ!?」
「だからあれほどお金の管理は僕に任せておけと言ったんですよ」
「悪いがダイン、俺も人に金を貸す余裕はない。今日は牙竜のギルドに戻って泊まってくる」


冒険都市の冒険者ギルドには冒険者専用の宿泊施設が存在し、事情があれば施設に無料で泊まることができる。この制度のお陰でレナも冒険都市に訪れたばかりの頃は宿屋を借りずに済んだ。しかし、他の街で冒険者登録したダインは何処のギルドにも泊まれない。


「ど、どうすればいいんだ……このままだと野宿になる!!」
「この街にレナさん以外に知り合いはいないんですか?」
「いるにはいるけど……絶対に頭を下げたくない奴しかいない」
「バルさんのことか?」


昔からダインと付き合いのあるバルならば事情を話せば彼を泊めてくれるだろうが、彼女が無料で泊めてくれるはずがなく、きっと面倒事を任せて来るのは目に見えていた。


「バルには頼れない!!絶対にまた僕をいじめてくるはずだ!!」
「いじめるって、そんなに意地悪な人ですか?」
「いや、わりとまともな人だと思うが……」
「それはゴンゾウがバルの正体を知らないからだよ!!あの女は身内に対してだけは異様に厳しいんだ!!僕が昔どんな目に遭わされたのか知りたいか!?」
「ど、どんなことをされたんですか?」


これまでにない気迫で怒鳴りつけるダインにミイネは圧倒され、小さい頃の彼がバルにどのような目に遭わされたのかを聞かされる――





――自分の家から逃げ出したダインは偶然にも冒険都市に向かう商団の馬車に紛れ込み、王都を離れて冒険都市へ辿り着いた。だが、子供の彼ではまともに働くこともできず、生き残るために影魔法の力を悪用して食べ物を盗もうとした。しかし、よりにもよって彼が盗みを働こうとしたのは若かりし頃のバルだった。


『ようやく捕まえたよこのクソガキ!!』
『うわぁっ!?は、離せよ!?』
『何が離せだっ!!あたしのサンドイッチを返しなっ!!』


ダインが食べ物を盗んだ相手は若かりし頃のバルだった。彼女はダインを捕まえるとボロボロの格好を見て疑問を抱き、痣だらけの肉体を見て心配する。日常的に暴力を振るわれていたダインは全身に怪我を負っており、訳ありだと察したバルは彼を地面に下ろす。


『どうしたんだいあんた、その汚い服は……よくみるとあちこち怪我をしてるじゃないか』
『う、うるさい!!離せよこの野郎!!』
『誰が野郎だ!!あたしは女だ!!』
『はぐっ!?』


生意気な口を叩くダインにバルは容赦なく拳骨を食らわせ、気絶したダインを連れて帰る。これがダインとバルの出会いだった――





――当時のバルはまだ冒険者を辞めて将軍職に就いていたが、他の将軍と揉め事を起こして辞めてしまった。実際の所は王妃が第一王女のナオと親し気な関係を築いていたバルを警戒し、彼女の将軍の座に就かせておくと後々に厄介な存在になり得ると判断して彼女を解雇に追い込む。

バルは将軍を辞めた後は冒険都市へと戻り、再び冒険者稼業を再開しようかと考えていた時にダインと出会う。当時のダインはまだ子供で他の人間に対して心を開かなかった。小さい頃から虐待されていたダインは他人を信じることができず、最初の頃は何度もバルの元を逃げ出そうとした。


『はあっ、はあっ……もう放っておいてくれよ!!』
『そうはいかないよ。あんたみたいな自分が一番不幸だなんて顔をしているガキを見てるとむかつくからね』
『な、なんだよそれ……分けわからないぞ!?』


いくらダインが逃げようとしてもバルは決して逃さず、彼を何度でも連れ帰す。結局はダインも逃げることを諦めて自分の素性を明かした。


『……僕はシャドウ家の子供だよ』
『シャドウ家?確か呪術師の家系かい?』
『よく知ってるな……けど、僕は呪術師なんかじゃない!!』


シャドウ家の存在はバルも噂で聞いたことがあり、彼女が王都に滞在していた時に存在を知った。シャドウ家はバルトロス王国を影から支えてきた存在だと聞いたことがあるが、バルが将軍に就いている間は幸か不幸か一度も顔を合わせたことがない。
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