不遇職とバカにされましたが、実際はそれほど悪くありません?

カタナヅキ

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蛇足編

悪魔

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「この私を出し抜こうなんていい度胸だね。お礼代わりにあんたの魂を喰らわせてもらおうか」
「ひいいっ!?嫌だ、助けてくれぇっ!?」
「もう遅いんだよ」


捕まった男は必死に逃げ出そうとするが、体内に死霊石を埋め込まれている限りはミヤの術から逃れることはできない。男の身体から闇属性の魔力が漏れ出し、徐々に皮膚が黒色化していく。


「がああっ!?」
「死霊魔術師だからといって驕ったね。シャドウ家の血筋でない人間が闇属性の魔力に抗い切れると思うな!!」
「あ、あく、ま……がぁああああっ!?」


男の胸元に髑髏の紋様が浮きあがり、全身が黒く染まると髑髏の口元から淡く光り輝く球体が出現した。この球体の正体こそ男の魂であり、肉体が崩壊したことで男の魂が排出された。それをミヤは掌に収めると、彼女は笑みを浮かべた。

呪術師の扱う術には他者の魂を操る禁術も存在し、彼女の掌に収まった魂を握り潰せば男は生まれ変わることもできない。しかし、ミヤは男の魂を無駄にするつもりはなく、今しばらくは自分の肉体が生き延びるために彼の魂を取り込む。


「これで一か月は保てるかね……こんな時のためにあんたは生かしておいたんだよ」


ミヤは死霊魔術師を仲間に入れていたのは自分がいざという時に生き延びるためであり、最初から自分の命の延命のために用意していた保険に過ぎない。シャドウ家の人間を取り込まない限りは彼女は若返ることはないが、他の人間の魂を得ることで彼女は肉体を一時的に復活することができた。

魂を口から吸い込むとミヤは車椅子から立ち上がり、老婆の姿から40代ぐらいの年齢まで若返ることに成功した。全盛期にはまだほど遠いが、他者の魂を喰らうことで彼女は何度も若返って生き延びてきた。


「ちっ……この程度の魂じゃ腹の足しにもならないね。やっぱりシャドウ家の人間じゃないと無理そうか……」


ダインを殺して彼の血液を吸い上げるか、あるいはダインの魂を喰らうことでしか彼女は真に復活することはできない。シャドウ家の人間はダイン以外に存在しない以上はミヤは完全復活するにはダインを捕まえる以外の選択肢はない。


「さてと、のんびり話している暇もなさそうだ……この隠れ家も使えなくなるね」


ミヤは転移の神器を利用して早々に退散することにした。レナ達が間もなく到着するはずであり、ここに到着したら転移の神器は奪われてしまう。失うには惜しい神器だが今のミヤではレナに太刀打ちはできない。


「久々に帰るとするからね。我が祖国に……」


数十年ぶりにミヤはバルトロス王国へ帰ることを決め、彼女は転移の神器が設置された部屋へ向かう――





――1時間後、レナ達は新帝国の隠れ家に到着した。途中で何度か罠に嵌まりそうだったがどうにか乗り越えてきたが、既にミヤは転移の神器を使用して退散していた。隠れ家には真っ黒に染まった男の死体しか存在せず、それを確認したゴウカは悔し気な表情を浮かべた。


「くそっ、もぬけの殻か!!」
「やはり敵は既に逃げ出したようですね……」
「…………」


事前にレナだけはアイリスを通してミヤが退散していることは聞いており、転移の神器で彼女がバルトロス王国へ向かったことは気付いている。だが、それが分かっても簡単にはバルトロス王国へ戻ることはできない。


『アイリス、この転移の神器を使って俺達も王国に戻れないの?』
『無理です。ミヤは王国に戻る際に罠を仕掛けています。もしも転移したらレナさん達も無事では済みません。王国に戻るとしたら別の方法に頼るしかありません』
『くそっ、こんな時に水晶札が使えれば……』


レナはマリアの転移魔法が施された水晶札を切らしてしまい、バルトロス王国の王都まで戻るにしても巨人国からでは時間が掛かり過ぎてしまう。リーリスに連絡を取って白竜を派遣してもらう手もあるが、それでも移動するのに時間が掛かってしまう。

アイリスのお陰でミヤの目的はダインであることは分かっているが、レナはダインを助けに向かうにも時間が掛かり過ぎる。ダインのことは心配であるが今のレナにはどうすることもできない。


「レナたん、何だか嫌な予感がするよ……」
「私も……」
「二人とも……大丈夫だよ。俺が何とかしてみせるから」


ティナとコトミンは不安を抱き、この二人の勘は鋭いので無意識に仲間に危険が迫っていることに気付いているのかもしれない。そんな二人を安心させるためにレナは頭を撫でながらバルトロス王国に残した仲間達の顔を思い浮かべる。


(ダイン……信じてるから)


王国に危機が迫っていることを知りながらもレナは何も出来ず、残された仲間達を信じて帰国する方法を探すしかなかった――





――そして間もなくレナが不在の間に王国で大きな事件が起きようとしていた。
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