伝説の魔術師の弟子になれたけど、収納魔法だけで満足です

カタナヅキ

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修行の旅

第61話 ギルドマスターとの面談

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(本当にでかいなこの人……それに物凄く強そうだ)


ギガンは大きいだけではなく、ミノタウロスを想像させる筋骨隆々とした体型をしていた。彼はイチノから脱出したというナイとエリナに話を聞くために建物の奥へ招く。


「私の部屋に行こう。誰か茶菓子を用意してくれ」
「了解しました」
「儂の分も頼むぞ」
「何だ?お前等ギルドマスターと知り合いだったのか?」
「いや、そういうわけじゃないんだけど……」
「あたし達は話があるからハルちゃんは大人しくしててください」
「んだと……」
「ごめん、話が終わったらすぐに戻るから……あ、そうだ。ビャクの事を頼める?」
「ウォンッ!!」
「うわっ!?なんだこのワンコ……」


ハルナにビャクの事を任せてナイ達はギルドマスターの部屋に招かれ、巨人族用の大きさに合わせた内装の部屋に案内される。部屋の中の家具は全て規格外に大きく、机や椅子も大き過ぎて普通の人間が座るのは無理かと思われたが、部屋の中央にはちゃんと人間用の机と椅子が用意されていたのでそちらにナイ達は座り込む。

ラオはナイの隣に座ると、ギガンは巨人族用の椅子を用意して向き合う。改めて向かい合うとナイは自分が小人になったような気分を味わう程の大きさだった。


「改めて自己紹介させてくれ。私の名前はギガン、黒虎のギルドマスターを勤めている」
「儂とこいつは同期でな。昔は一緒に組んで仕事を行っておった」
「へえ~ならギガンさんも冒険者だったんですね」
「ああ、最も20年以上前の話だがな」


ギガンはラオとは古い付き合いらしく、冒険者として活躍していた頃は二人で仕事を行う事も多かったらしい。だからギガンはラオの事を信頼しており、今回のイチノの偵察を任せたという。


「ラオから話は聞いている。うちの冒険者が世話になったそうだな」
「え?いや、別にそんな事は……」
「もしかしてトロールの事ですか?」


トロールに襲われた際にナイ達は腰を抜かした冒険者達の代わりに戦い、どうにか勝利を果たした。しかし、そもそもトロールに最初に深手を負わせたのはラオであり、もしもナイ達が手を出さずともラオが一人居れば十分に守り切れると思われたが、当のラオは二人に感謝していた。


「お主らが代わりに戦ってくれたお陰で無駄な魔力を消費せずに済んだ。この年齢になると魔力が回復するまで時間が掛かるからな……」


魔術師は高齢になるほど魔力の回復速度が落ちるらしく、ナイの師匠であるクロウも日常生活では滅多に魔法を使わない。もしもトロールと戦う事になっていればラオは攻撃魔法を使用せねばならず、身体に負担が掛かっていた。だからナイ達が戦ってくれたお陰で魔力を温存できたので礼を言う。


「改めて礼を言わせてもらうぞ。あの時は本当に焦ったぞ、予定よりも大分早くにトロールの奴等が現れたからな」
「え?予定って……どういう意味ですか?」
「まるでトロールが現れる事を知っていたみたいですね」
「当然じゃ。あのトロール二匹は事前にギルドが用意した魔物だからな」
「「えっ!?」」


あっさりと告げられたラオの言葉にナイ達は衝撃を受け、ギガンは慌てた様子でラオに話しかける。


「おい、ラオ……」
「おっと、儂とした事が口が滑ってしまったな。だが、この二人は部外者ではあるが儂等の考えた試練に巻き込まれた可哀想な被害者でもある。それならば真実を隠すのは忍びないと思わんか?」
「むうっ……」
「あの、どういう意味ですか?」
「真実って何の話すか?」


二人の話にナイとエリナは全くついてこれず、いったい何を話しているのか問い質す。ギガンは観念したように冒険者達に襲撃を仕掛けたトロールの正体を明かす。


「すまない。実は草原にいたトロールはギルドが用意した魔物なんだ」
「ええっ!?」
「じゃあ、襲われたのは偶然じゃないんですか!?」
「うむ。あのトロール二匹は少し前に儂が捕獲した魔物じゃ」


草原で襲い掛かってきたトロールの正体を知ってナイ達は驚きを隠せず、どうしてギガンが自分の管理するギルドに所属する冒険者達に危険な目に遭わせようとしたのかとナイには理解できなかった。


「な、何であんな恐ろしい魔物を襲わせたんですか!?」
「……それが彼等のためになると思ったからだ」
「ためになるって……」
「まあ、まずは儂等の話を聞いてくれんか?こちらにも色々と事情があったんじゃ」


ギガンとラオが魔物を捕縛して自分達のギルドの冒険者を襲わせた理由、それは数日前に遡る――





――ニノは一か月前まで魔物の襲撃を受けていた。ゴブリンとホブゴブリンの軍勢が度々押し寄せ、警備兵と冒険者が協力して迎撃を行う。戦いは数か月も続いたが、遂にニノに襲撃を仕掛けた魔物を追い払う事ができた。

最近は魔物の姿を見かける事も無くなり、街は平和を取り戻し始めていた。だが、イチノから避難してきた民は自分達の街に戻りたがり、彼等のためにイチノを奪還するためにギガンは冒険者を収集させた。

イチノを奪還するためには腕利きの冒険者を選別し、ニノの護衛もあるので大勢の冒険者を派遣する事は難しい。そこで「少数精鋭」として高い階級の冒険者だけを集ってイチノに派遣しようという案に決まりかけたが、それに反発したのは低い階級の冒険者だった。

彼等は階級が低いという理由だけで討伐隊に参加できない事に不満を注げ、自分達も同行させてくれと頼み込む。話し合いの末にギガンは討伐隊の参加を申し込む冒険者を集め、彼等に「偵察」の任務を与えた。


「儂と同行していた冒険者はギルドの中でも血の気の多い奴等でな。自分達ならば足手纏いにならないと言い張っておったが、あんなのは虚勢に過ぎん。手っ取り早く手柄を立てて昇格したいという欲求が見え見えじゃ」
「な、なるほど……」
「確かに気の強い人ばかりでしたね」


ラオが連れていた冒険者達は自分達よりも上の階級の冒険者である彼にも歯向かい、それでいながらトロールが襲い掛かってきた時は、腰を抜かして何の役にも立たなかった。ラオは彼等を討伐隊に参加させたとしても役に立つどころか他の人間の足手纏いになると判断し、街へ引き返した事を明かす。


「お主らと出会えていなければ面倒な事になっておった。奴等は口だけは一丁前だが肝心の実力が伴っておらん。もしもイチノに連れて行けば真っ先に魔物の餌食になるだろう」
「私もラオと同意見だ。彼等はまだ未熟だ、もしも討伐隊に参加させたら命を落としかねない。それならばイチノに向かわせる前に自分達ではどうにもならない相手を用意すれば自分の未熟さを理解して引き返すと思ったのだが……」
「それがあのトロールということですか?」


話を聞いてナイは納得し、草原で襲い掛かったトロールは未熟な冒険者を引き返させるために用意された魔物だと知る。ラオが同行していたのは冒険者をトロールから守るためであり、彼は深々と溜息を吐き出す。


「トロールに臆するような未熟者を連れても何の役にも立たん。魔物に恐れて腰を抜かす臆病者など尚更な」
「な、なるほど」
「ようやく理解したっす」


二人の話を聞いてナイ達は納得し、彼等は冒険者を危険な目に遭わせるつもりはなく、むしろ無用な犠牲を避けるための行為だと判明した。
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