貧弱の英雄

カタナヅキ

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忌み子と呼ばれた少年

第11話 命を奪うという事

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「――ナイ、どこにいる!!返事をしろ、ナイ!!」


アルはナイとはぐれた後、すぐに追いかけようとしたが一角兎の攻撃を受けた際にあばら骨に罅が入ったらしく、それでも痛みを堪えながら森の中に消えたナイを探す。

探している途中でナイの足跡を発見して辿ると、一角兎と遭遇した場所に戻ってきた。そこには血塗れの一角兎の前でへたり込むナイの姿を見てアルは驚く。


「ナイ!?無事なのか!?」
「……じ、爺ちゃん」
「ああ、良かった……だが、これはどういう事だ?」


ナイが無事である事にアルは安心しかけたが、すぐに一角兎の死骸と血塗れの鉈が転がっている事に気付き、まさかとは思うがナイが一人で一角兎を倒したのかと戸惑う。

レベル1でしかも子供であるナイが魔物の一角兎を倒したという事にアルは動揺を隠せず、一方でナイの方も初めて生き物を自分の手で殺した事に身体を震わせていた。その様子を見てアルはまずはナイを落ち着かせる事にした。


「そうか、これはお前がやったのか……よく頑張ったな」
「じ、爺ちゃん……僕、怖いよ……」
「いいか、ナイ……お前は間違ってなんかいない。人が生きるためには時には他の生き物を狩らなければならないんだ。お前はこいつから自分を守るために戦った。だから、これは悪い事なんかじゃない。お前は正しい事をしたんだ」
「でも……」
「いいか、この魔物はお前や俺の事を殺そうとしたんだ。だがな、誰かの命を奪おうとするときは、自分も殺される事を覚悟しなければならない……こいつもきっと、自分が殺される事を覚悟していたんだろう」
「えっ……?」


アルの言葉を聞いたナイは死骸に視線を向けるが、死骸は何も話す事はない。アルはナイの頭に手を起きながら話を続ける。


「俺が狩人になった時、師匠からこう言われたよ。生き物の命を奪う時、自分も命を失う覚悟を抱けとな……こいつはお前の事を殺そうとした。だから、こいつだってお前に殺される事は覚悟してたはずだ」
「…………」
「ナイ、お前はこいつを殺したんじゃない、勝ったんだ。勝ったからお前は生き残れたんだ。それをしっかりと覚えておけ……負けたら死ぬ、勝ったら生き残る。それだけの話なんだよ」
「勝った……僕が、勝った?」


ナイは自分の両手に視線を向け、一角兎を殺した時にこびり付いた血液に染まった掌を見て震えるが、それでも拳を握りしめて身体の震えを抑えつける。そして改めて一角兎の死骸に視線を向け、どうすればいいのかをアルに問う。


「爺ちゃん……こいつ、どうしたらいいの?」
「そうだな……こいつを狩ったのはお前だ。なら、お前が決めろ」
「えっ?」
「こいつを持ち帰って家で食べるのもいい、でも可哀想と思ったのなら墓でも作ってやればいい。お前の好きにしろ、何しろこいつを狩ったのはお前なんだからな」


アルの言葉にナイは改めて一角兎に視線を向け、様々な幸運が重なり合った上での勝利とはいえ、この一角兎を倒したのはナイである。だからこそアルはナイに判断を任せると、ナイは自分の判断を伝えた。


「僕は――」





――その日の晩、ナイとアルは一角兎の肉をしっかりと味わい、この日の出来事を忘れないようにナイは一角兎を残さずに食べた。ちなみに大半の魔物は食用で普通の動物よりも栄養価も高い。

一角兎の角は滋養強壮の効果が高いため、薬の素材として保管する事にした。その日の夜、ナイは眠れぬ夜を過ごす。初めて狩猟を成功したにも関わらず、心が落ち着かなかった。


「ふうっ……眠れないや」
「ふがぁっ……ふごぉっ……」


ナイの隣ではアルが眠りこけており、普段はナイの方が眠るのが早かったので気にしなかったが、アルはいびきが酷かった。ナイが眠れない原因はアルのいびきがうるさいのも要因の一つであり、彼は起き上がると外へ出る事にした。


「……満月か、綺麗だな」


今夜が満月である事にナイは初めて気づき、美しく光り輝く月を見上げながらナイは家の前に存在する薪割りの際に利用する切り株に座り込む。この時にナイは外へ出る時に持ち出した「水晶の破片」を取り出す。



――こちらの水晶は実は陽光教会へ抜け出す際、アルが激怒して水晶板を破壊した時、その時に散った破片の一部である。破片の大きさは掌に収まる程度だが、偶然なのか長方形のように妙に綺麗な割れ方をしていた。



陽光教会を抜け出す際にナイは破片を拾い上げ、それを返す前に無理やりにアルに連れ去られてしまった。今度街に赴く時に返さなければならないと思っているが、アルは二度とあの街に戻るつもりはなく、結局は返し損ねた。


(これ、どうしよう……)


ナイが一人では街まで到底辿り着けず、かといってアルに相談しようか考えたが、陽光教会で騒ぎを起こした事を考えても相談しにくかった。困り果てた状態でアルは水晶の破片を覗いていると、不意に自分の右手の甲に魔法陣が浮かんでいる事に気付く。
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