貧弱の英雄

カタナヅキ

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忌み子と呼ばれた少年

第57話 新しい武器と技能「投擲」

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――村の中に迷い込んだと思われる狼を村の大人達が捜索する間、ナイは一足先に家に戻り、まずはアルに無事に戻ってきた事を伝えるために家に帰った。


「爺ちゃん、ただいま!!」
「おお、ナイか!!今日は随分と遅かったな、心配したぞ!!」


家に帰ったナイは最初に視界に入ったのは椅子に座り込むアルの姿であり、彼の右足は膝から先が木造製の義足だった。こちらの義足もアルが作り出した代物であり、わざわざ自分の手で造り出すのが彼らしい。

アルはどうやら武器の手入れを行っていたらしく、机の上にはいくつもの短剣が並べられていた。ナイが戻るまでに彼が扱う武器の手入れをしていたようだが、彼が戻って来て早々に短剣を見せつけた。


「どうだ?今日作ったばかりの短剣だぞ。上手く出来ているだろう?」
「うわぁっ……本当だ。でも、今までのと少し違うね」
「そいつはそうだろう。こいつは投擲用の短剣だ、あんまり大きすぎて重すぎると投げるのが難しいからな」
「投擲用……」
「どれ、実際に試してみるか?」


出来上がったばかりの短剣をアルはナイに手渡すと、それを受け取ったナイは短剣に視線を向け、これまで戦闘に利用していた短剣と比べると刃は細く尖っており、外見は「ダガー」に近い。


「狩猟の時に一角兎のようなすばしっこくて小さな獲物を仕留めるのに役立つと思ってな。お前のために作ったんだ、使ってみろ」
「うん、わかった。なら、試してみるよ」
「よし、それなら外に出るぞ。ちょっと肩を貸してくれ」


アルはナイに肩を貸して貰い、外へ移動すると丁度いい具合に薪割り用の薪が余っているのを確認する。彼は薪をナイに拾わせると、10メートルほど離れた場所に薪を並べる様に促す。


「いいか、あの3本の的に向けてそいつを投げてみろ」
「分かった」
「まあ、そう上手く当てられるもんじゃないがな……」
「大丈夫、見ててね」


新しい短剣を手にしたナイは並べられた3つの薪に視線を向けると、意識を集中させる。ナイは少し前にボアに投石した際、的確にボアの顔面に石を当てられた事を思い出す。



――この二年の間にナイは新しい技能をいくつか習得しており、その中の一つは「投擲」と呼ばれる技能が存在した。投擲の技能は何かを投げつける際に的確に対象に当てる技能であり、この技能を生かしてナイは次々と短剣を放つ。



ナイが放った短剣は見事に3つとも薪に的中し、更に短剣の刃は見事に薪を貫通していた。もしも標的が兎のような小動物ならば一撃で殺せるだけの威力はあった。


「どう?当てたよ?」
「お、おおっ……大したもんだな、まさかこうも使いこなすとはな」


アルに対してナイは自慢げに振り返ると、流石のアルも驚いた表情を浮かべ、自分の作った武器を簡単に使いこなすナイに戸惑う。その一方でナイは薪から短剣を回収する際、改めて今までの短剣よりも貫通性が高い事に気付く。

これまでのアルの短剣は切り裂く事に優れた刃だったが、今回の投擲用の短剣は刺す事に特化した刃の形をしていた。刃が細くなった分に軽くなり、それでいながら普通の短剣よりも貫通性が高い。


「爺ちゃん、これ気に入ったよ。狩猟の時に使わせてもらうね」
「そうか、喜んでくれて何よりだ。だが、獲物を狩る時は気を付けろ。薪と違って相手は動いているからな、しっかりと狙って投げつけるんだぞ」
「うん、ありがとう。あ、そうだ……爺ちゃん、実は村の中に狼が迷い込んだのかもしれないんだ!!」
「……狼、だと?」


ナイは急いで戻ってきた理由を思い出してアルにも狼の件を伝えると、途端に彼は表情を一変させ、家の傍の倉庫に視線を向ける。その様子を見てナイは不思議に思うと、アルは言いにくそうに頭を掻く。


「あ~……それって、もしかしてあいつの事か?」
「えっ?」


アルの言葉にナイはどういう意味なのかと疑問を抱くと、アルは倉庫の中を確認する様に促す。そのアルの行動に疑問を抱きながらもナイは倉庫を開くと、そこには毛布に包まった白色の狼が横たわっていた。


「うわっ!?」
「クゥンッ……?」
「おっと、起こしちまったか。ほらほら、落ち着け……こいつは敵じゃないぞ」


倉庫の中に眠っていた狼を見てナイは驚き、狼は声を聞いて目を覚ましたのか顔を上げると、アルが落ち着かせるように声をかける。

狼はアルの顔を確認すると倉庫から抜け出して彼の元に近付く。アルは何処から取り出したのか干し肉を手にすると、それを狼に分け与えた。


「ほら、これをやるから大人しくしてろよ」
「ウォンッ!!」
「しっ、声がでかい!!気づかれるだろうが!!」
「じ、爺ちゃん……こいつって、まさか」


アルから干し肉を受け取った狼は嬉しそうに嚙り付き、その場で食べ始める。その様子を見ていたナイは驚いた表情をアルに向けると、彼は頭を掻きながら事情を説明してくれた。
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