貧弱の英雄

カタナヅキ

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逃れられぬ運命

第132話 《貧弱》という才能

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「――ほうほう、なるほどのう。子供の時に水晶板の破片を使って技能を身に付けてきたと……それにしてもまさか貧弱の技能を持っておったとは、驚いたわい」
「ううっ……お前も苦労したんだな」
「ぐすっ……赤ん坊の時に捨てられるなんて不憫な」
「あれ!?エルマさん、いつからいたんですか?」


昔話も兼ねてナイは過去に自分がしてきた事を話すと、ゴンザレスとエルマ(何時の間にか混ざっていた)はナイが生みの親から捨てられ、更に育て親であるアルも失い、優しくしてくれた村人達も死んでしまった事を聞いて涙を流す。

話を聞き終えたマホは腕を組み、まさかナイがアルの養子でしかも「忌み子」だと呼ばれる存在だとは思いもしなかった。彼女は昨日までは本気でナイがアルの血を継ぐ子供だと信じていた。


「ふむ、まさか日付が変更する度にレベルが1に戻されるとは……しかし、その特性を利用し、多数の技能を覚えて生きてきたという事か。到底信じられん話だが、お主が嘘を吐いているようには見えんな」
「ですが老師、その話が本当なら凄い事ではないですか?10個以上の技能を身に付けているなんて……それだけの技能を持つ人間なんて聞いた事もありませんよ」
「え、そうなんですか……?」


ナイはエルマの言葉を聞いて驚き、その反応を見てマホは少し呆れた様に説明を付け加えた。


「当然であろう。技能を身に付けるためには魔物を倒すか経験石を破壊し、経験値を得てレベルを上げてSPを貯めるしかない。だが、普通の人間の場合はレベルが20も越えれば簡単にはレベルが上がらなくなる」
「あ、そうか……」
「お主はレベルがリセットされる度に魔物を倒し、少ない経験値でレベルを上げる事ができたから人よりも多くのSPを集める事が出来たんじゃ。しかし、一流の冒険者でも身に付けている技能の数はせいぜい5個から6個……そういう意味ではお主は普通ではない」


技能の習得に必要なSPの数値は「10」つまりレベルを10上げる事に新しい技能を覚えられる事を意味する。しかし、一流の冒険者であろうとレベルが50~60まで上げるのが限界であり、基本的には5~6個の技能しか持ち合わせていない。

貧弱の技能を持って生まれたナイは忌み子として認識されたが、この貧弱のお陰でナイは今日まで生き延びる事が出来たと言っても過言ではない。もしもこの技能がなければナイは魔物に殺されていた可能性もある。


「ナイよ、悲観する事はない。お主の貧弱の異能は決して恵まれぬ才能などではない。むしろ、素晴らしい才能じゃ」
「貧弱が……才能?」
「実際にお主自身も気づいておるのだろう?その貧弱のお陰でお主は強くなれた、改めてお主の話を聞いて儂は思ったよ。忌み子など、この世には存在しない」
「忌み子が……存在しない?」


陽光教会の教えを真っ向から否定する発言をしたマホにナイは驚くが、彼女は空を見上げながら語り掛ける。


「生まれた時から呪われている子供などいるはずがない……どんなに不遇に思える技能を持って生まれたとしても、その技能はきっと生まれてきた子供のために必要不可欠な力……だからお主が持つ貧弱の技能も、お主自身が望んで得た才能だと儂は思うよ」
「貧弱が……僕が望んだ力?」


マホの言葉にナイは不思議と否定できず、言われてみればそんな風な気もする。これまでにナイが窮地を脱する事が出来た根幹の理由はこの貧弱の技能のお陰だと思った。

これまでナイは自分が忌み子であると思い込んでいたが、マホの話を聞いて心が楽になり、自分は呪われた存在ではないのかもしれないと思う。辛い事はたくさんあったが、それでもこの貧弱の技能のお陰でナイは大きな力を手に入れた。


「ありがとうございます、何だか……気が楽になりました」
「うむ、そうか。それならばよかったが……ここで一つだけ注意しておくことがある。それはお主の身体の問題じゃ」
「え?」


ナイはマホの言葉を聞いて驚き、何処か怪我でもしているのかと思ったが、マホが言いたいのはナイの肉体というよりも体質の方に問題があるという。


「先ほども言ったが、お主の身体は少々特殊な肉体になっておる。その原因は恐らくは技能を覚え過ぎた事じゃな」
「技能を……覚え過ぎた?」
「技能を覚え過ぎると問題があるのですか?」
「そんな話、聞いた事もないぞ……」


マホの言葉に混乱したのはナイだけではなく、他の二人も意外そうな表情を浮かべた。これまでにナイは覚えてきた技能はどれも彼のために役立ち、長らく放置して使えない技能もいくつかあったが、それらも練習を繰り返せば使える様になった。

技能を覚えて困った事などナイは一度もなかったためにマホの言葉が信じられず、いったい何が問題なのか彼女に教わろうとすると、ここでマホはナイの胸元に指を向ける。
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