貧弱の英雄

カタナヅキ

文字の大きさ
219 / 1,110
王都での騒動

第218話 全身全霊の一撃

しおりを挟む
(次の攻撃で仕留めないとまずい……けど、左腕は当てに出来ない)


ナイはガーゴイル亜種と向かい合い、次の一撃で仕留める方法を必死に考える。その一方でガーゴイル亜種の方も背中に突き刺さった退魔刀に手を伸ばし、肉体から引き抜く。


『ガアアッ……!?』
「くそっ……しぶといな」


背中に刺さった退魔刀をガーゴイル亜種は引き抜くと、右手で握りしめてナイと向き合う。退魔刀を手にしたガーゴイル亜種に対してナイは増々追い詰められるが、不思議と心は落ち着いていた。

赤毛熊を越える脅威を前にしてもナイは焦らず、どのように動けば相手を倒せるのかを考える。何度も窮地を乗り越えてきた事でナイは精神面も強くなり、冷静に考える事ができた。


(左腕は当てにならない、なら右腕だけで戦うしかない……けど、剛力を使ってもこいつを一撃で倒せるとは思えない。攻撃力を増加させる方法があるとすれば……)


左腕が使えなければナイが頼れるのは右腕のみであり、ここで右腕に装着したゴマンの盾に気付く。失敗すればナイに勝ち目はないが、それでも他に考えがなければ試すしかない。


(ゴマン、力を貸して!!)


意を決したナイは跳躍を発動させてガーゴイル亜種に向けて突っ込む。その様子を見たガーゴイル亜種は両手で退魔刀を握りしめ、ナイに振り下ろそうとした。


『シャアアッ!!』
「ここっ!!」


ガーゴイル亜種は上段から退魔刀を振り下ろそうとしたが、それに対してナイはガーゴイル亜種の右側に向けて回り込み、それを見たガーゴイル亜種は咄嗟に退魔刀の軌道を変更させる。

上から叩きつけるのではなく、横薙ぎに振り払う形になった退魔刀に対してナイは盾を構え、両足に力を込めて待ち構える。そして振り払われた退魔刀がゴマンの盾に衝突した瞬間、衝撃波を生み出す。


『アガァッ――!?』
「喰らえっ!!」


衝撃波によって退魔刀は弾かれ、ガーゴイル亜種は体勢を崩す。それと同時にナイの方は盾が受けた衝撃を利用し、勢いのままに旋斧をガーゴイル亜種の右足に繰り出す。


「うおおおおっ!!」
『シャギャァアアアッ!?』


旋斧の一撃が事前に損傷を蓄積させていたガーゴイル亜種の右足に叩き込まれ、完全に右足は砕け散り、体勢を崩したガーゴイル亜種は倒れ込もうとした。だが、反射的にガーゴイル亜種は左腕を地面に突き出して倒れるのを逃れる。

その一方でナイの方は旋斧を握りしめ、まだ左腕は痺れているがどうにか両手で旋斧を構えると、体勢を崩したガーゴイル亜種と向かい合う。ここがガーゴイル亜種を倒せる最後の好機であり、ナイは旋斧を振りかざす。




――この時にナイは先ほどモモに魔力を分けてもらい、一時的に強化薬を飲み込んだ時のように肉体が強化されて三匹のガーゴイルを倒した事を思い出す。あの時は全身に魔力が溢れて肉体の機能が強化され、そのせいで一時的にナイは強化薬を飲み込んだ時と同じ状態になっていた。



強化薬は体内の魔力を活性化させ、身体機能を最大限に強化する薬ではないかとナイは気づく。それならば仮に強化薬を飲み込まずとも、自分自身で魔力を操作して全身を強化させれば強化薬を使用した時と同じ状態になれるのではないかと考える。

要するにナイは剛力を発動させる要領で今回は全身の強化を行い、身体機能を魔力で限界まで上昇させる。今までのナイは剛力を発動させるときは腕や脚の筋力だけしか強化していなかったが、今回は全身の筋肉を強化させて攻撃を繰り出す。


(この一撃で……決める!!)


腕力任せに剣を振るのではなく、全身の筋力を利用してナイは旋斧を振りかざし、この時のナイは強化薬を飲み込んだ時と同様の力を引き出す。そして彼が繰り出された旋斧の刃はガーゴイル亜種の胸元に叩き込まれ、強烈な衝撃を受けたガーゴイル亜種の肉体が後ろに倒れ込む。



ッ――――!?



声にもならない悲鳴を上げてガーゴイル亜種は倒れ込むと、同時にナイの方も地面に倒れ込み、強化薬の効果が切れた時と同様に魔力と体力を消耗し、筋肉痛に襲われる。


「ぐぅうっ……!?」


それでもナイは意識を失わず、筋肉痛の方もそれほど痛みは感じない。どうやら強化薬を使った時と違い、ナイの意志で肉体をだけ強化した事で肉体の負担が軽減されたらしい。


「倒した、のか……?」


ナイは倒れ込んだガーゴイル亜種に視線を向け、今の自分の繰り出せる最大の攻撃を叩きつけたつもりだった。これで起き上がるようならばもうナイは対抗手段はない。

ガーゴイル亜種が動き出さない事を祈りながらナイは見つめると、ここでガーゴイル亜種の肉体に異変が起きた。唐突に身体が小刻み震え始め、やがて目元から紫色の光が灯る。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

神様、ちょっとチートがすぎませんか?

ななくさ ゆう
ファンタジー
【大きすぎるチートは呪いと紙一重だよっ!】 未熟な神さまの手違いで『常人の“200倍”』の力と魔力を持って産まれてしまった少年パド。 本当は『常人の“2倍”』くらいの力と魔力をもらって転生したはずなのにっ!!  おかげで、産まれたその日に家を壊しかけるわ、謎の『闇』が襲いかかってくるわ、教会に命を狙われるわ、王女様に勇者候補としてスカウトされるわ、もう大変!!  僕は『家族と楽しく平和に暮らせる普通の幸せ』を望んだだけなのに、どうしてこうなるの!?  ◇◆◇◆◇◆◇◆◇  ――前世で大人になれなかった少年は、新たな世界で幸せを求める。  しかし、『幸せになりたい』という夢をかなえるの難しさを、彼はまだ知らない。  自分自身の幸せを追い求める少年は、やがて世界に幸せをもたらす『勇者』となる――  ◇◆◇◆◇◆◇◆◇ 本文中&表紙のイラストはへるにゃー様よりご提供戴いたものです(掲載許可済)。 へるにゃー様のHP:http://syakewokuwaeta.bake-neko.net/ --------------- ※カクヨムとなろうにも投稿しています

【完結】おじいちゃんは元勇者

三園 七詩
ファンタジー
元勇者のおじいさんに拾われた子供の話… 親に捨てられ、周りからも見放され生きる事をあきらめた子供の前に国から追放された元勇者のおじいさんが現れる。 エイトを息子のように可愛がり…いつしか子供は強くなり過ぎてしまっていた…

無能と言われた召喚士は実家から追放されたが、別の属性があるのでどうでもいいです

竹桜
ファンタジー
 無能と呼ばれた召喚士は王立学園を卒業と同時に実家を追放され、絶縁された。  だが、その無能と呼ばれた召喚士は別の力を持っていたのだ。  その力を使用し、無能と呼ばれた召喚士は歌姫と魔物研究者を守っていく。

俺が死んでから始まる物語

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていたポーター(荷物運び)のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもないことは自分でも解っていた。 だが、それでもセレスはパーティに残りたかったので土下座までしてリヒトに情けなくもしがみついた。 余りにしつこいセレスに頭に来たリヒトはつい剣の柄でセレスを殴った…そして、セレスは亡くなった。 そこからこの話は始まる。 セレスには誰にも言った事が無い『秘密』があり、その秘密のせいで、死ぬことは怖く無かった…死から始まるファンタジー此処に開幕

帰って来た勇者、現代の世界を引っ掻きまわす

黄昏人
ファンタジー
ハヤトは15歳、中学3年生の時に異世界に召喚され、7年の苦労の後、22歳にて魔族と魔王を滅ぼして日本に帰還した。帰還の際には、莫大な財宝を持たされ、さらに身につけた魔法を始めとする能力も保持できたが、マナの濃度の低い地球における能力は限定的なものであった。しかし、それでも圧倒的な体力と戦闘能力、限定的とは言え魔法能力は現代日本を、いや世界を大きく動かすのであった。 4年前に書いたものをリライトして載せてみます。

不遇な死を迎えた召喚勇者、二度目の人生では魔王退治をスルーして、元の世界で気ままに生きる

六志麻あさ
ファンタジー
異世界に召喚され、魔王を倒して世界を救った少年、夏瀬彼方(なつせ・かなた)。 強大な力を持つ彼方を恐れた異世界の人々は、彼を追い立てる。彼方は不遇のうちに数十年を過ごし、老人となって死のうとしていた。 死の直前、現れた女神によって、彼方は二度目の人生を与えられる。異世界で得たチートはそのままに、現実世界の高校生として人生をやり直す彼方。 再び魔王に襲われる異世界を見捨て、彼方は勇者としてのチート能力を存分に使い、快適な生活を始める──。 ※小説家になろうからの転載です。なろう版の方が先行しています。 ※HOTランキング最高4位まで上がりました。ありがとうございます!

エリクサーは不老不死の薬ではありません。~完成したエリクサーのせいで追放されましたが、隣国で色々助けてたら聖人に……ただの草使いですよ~

シロ鼬
ファンタジー
エリクサー……それは生命あるものすべてを癒し、治す薬――そう、それだけだ。 主人公、リッツはスキル『草』と持ち前の知識でついにエリクサーを完成させるが、なぜか王様に偽物と判断されてしまう。 追放され行く当てもなくなったリッツは、とりあえず大好きな草を集めていると怪我をした神獣の子に出会う。 さらには倒れた少女と出会い、疫病が発生したという隣国へ向かった。 疫病? これ飲めば治りますよ? これは自前の薬とエリクサーを使い、聖人と呼ばれてしまった男の物語。

能力『ゴミ箱』と言われ追放された僕はゴミ捨て町から自由に暮らすことにしました

御峰。
ファンタジー
十歳の時、貰えるギフトで能力『ゴミ箱』を授かったので、名門ハイリンス家から追放された僕は、ゴミの集まる町、ヴァレンに捨てられる。 でも本当に良かった!毎日勉強ばっかだった家より、このヴァレン町で僕は自由に生きるんだ! これは、ゴミ扱いされる能力を授かった僕が、ゴミ捨て町から幸せを掴む為、成り上がる物語だ――――。

処理中です...