貧弱の英雄

カタナヅキ

文字の大きさ
241 / 1,110
王都での騒動

第236話 かつての強敵

しおりを挟む
「ビャク!!」
「ウォオオオンッ!!」


ゴブリンメイジが少年に向けて魔法を放つ前にナイはビャクに声を掛けると、即座にビャクは鳴き声を上げた。その結果、魔物の群れはビャクの方に振り返り、自分達よりも大きくて恐ろしい風貌の白狼種を見て驚愕した。

よりたくましく成長したビャクは力の弱い魔物なら見るだけで怯えて動けなくなり、特にファングの方は同じ狼型の魔獣であるが故、格の違いを思い知らされる。ビャクの咆哮を耳にしたファングたちの動きが止まり、その間にナイは少年の元へ向かう。


(助けないと!!)


ナイはゴブリンメイジを乗せたファングが止まっている隙に接近し、彼は左腕に装着した反魔の盾に視線を向け、盾の内側に仕込んだ仕掛み武器を放つ。


「このっ!!」
「ギャアアッ!?」
「うわっ!?」


反魔の盾の内側にはボーガンと酷似した武器が内蔵され、その仕込み武器にはナイの養父のアルが作り上げたミスリル製の刃が収納されている。矢の代わりに発射された刃はゴブリンメイジの腕に的中し、杖を落とす。


(魔法が使えなければこいつは強くない!!)


ゴブリンメイジの事はナイもよく知っており、魔法を使えない状態に追い込めば敵ではない。ここでナイは両足に剛力を発動させ、筋力を強化させた状態で跳躍を行う。


「はあああっ!!」
『ギャアアッ!?』
「うわっ!?」


魔物の群れに突っ込んだナイは旋斧を振りかざし、次々とゴブリン達を蹴散らす。数秒後には群れの半分がやられ、その様子を見ていた少年は呆気に取られた表情を浮かべる。

生き残った魔物達はナイには勝てないと判断したのか逃げ始め、その中には片腕を負傷したゴブリンメイジの姿もあった。


「グギィッ……!!」
「逃がすか!!」


逃げようとするゴブリンメイジに対してナイは足元に落ちていた石を拾い上げると、「投擲」の技能を生かして全力で投げつける。逃げようとしたゴブリンメイジの後頭部に石がめり込み、白目を剥いて地面に倒れた。


「アガァッ!?」
「ガウッ!?」


ゴブリンメイジを乗せていたファングは唐突に背中から崩れ落ちたゴブリンメイジに戸惑い、他のゴブリン達も呆気に取られた。しかし、すぐにナイ達の姿を見ると恐怖の表情を浮かべて逃走する。


「「「ギィイイイッ!?」」」
「「「ガアアッ!?」」」
「ウォオンッ!!」


逃げ惑う魔物の群れに対してビャクが即座に追跡を行い、後の敵はビャクに任せてナイは魔物に襲われていた少年の元へ向かう。


「君、大丈夫?」
「あ、ああ……助かったよ」
「こんな所で一人でいると危ないよ?」


腰が抜けたのか倒れ込んでいる少年にナイは手を伸ばすと、少年は苦笑いを浮かべながらその手を掴み、立ち上がらせてもらう。


「ありがとう。本当に助かったよ……それにしても君、もしかして冒険者なのか?」
「いや、そういうのじゃないけど……」
「それにさっきの白狼種、あれは君が使役しているのかい?」
「友達、いや家族みたいなものかな」
「クゥ~ンッ……」


会話の際中にビャクが戻り、口元を赤く濡らした状態だった。どうやら逃げた魔物を始末してきたらしく、あちこちにゴブリンとファングの死骸が倒れていた。

見逃しても問題はなかったのだが、ビャクにとっては良い運動になったらしく、満足そうに尻尾を振る。ゴブリンメイジがどうしてこんな場所に存在したのかは気になるが、少年が襲われる前に討伐できたのは幸いだった。


「白狼種か、珍しいな。実物を見るのは初めてだよ」
「クゥンッ?」
「あれ、ビャクが怖くないの?」
「怖い?どうして?君に懐いているという事は人にも慣れているんだろう?それよりも、もう少しだけ近くで見ていいかい?」


少年は血塗れのビャクを見ても怖がる素振りはなく、それどころか興味深そうに近付いて観察を行う。その少年の態度にナイとビャクは戸惑うが、ここでナイはゴブリンメイジが落とした杖を拾い上げる。


(この杖……何処から手に入れたんだろう)


ゴブリンメイジが所持していた杖は火属性の魔石が取り付けられており、魔石も杖も簡単に手に入る代物ではないため、人間から奪った物なのは間違いない。

どこかで魔術師が襲われて杖を奪われたと考えるのが妥当だが、問題なのはゴブリンメイジが王都の付近で現れたなどという情報はナイも聞いた事がない。そもそも王都の付近でゴブリンを見かけたのも初めてであり、嫌な予感を抱く。


(こういう時の予感は外れた事がないんだよな……)


ナイは杖を回収して改めて少年に振り返り、どうして彼が魔物の群れに襲われる経緯に至ったのかを問い質す。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

神様、ちょっとチートがすぎませんか?

ななくさ ゆう
ファンタジー
【大きすぎるチートは呪いと紙一重だよっ!】 未熟な神さまの手違いで『常人の“200倍”』の力と魔力を持って産まれてしまった少年パド。 本当は『常人の“2倍”』くらいの力と魔力をもらって転生したはずなのにっ!!  おかげで、産まれたその日に家を壊しかけるわ、謎の『闇』が襲いかかってくるわ、教会に命を狙われるわ、王女様に勇者候補としてスカウトされるわ、もう大変!!  僕は『家族と楽しく平和に暮らせる普通の幸せ』を望んだだけなのに、どうしてこうなるの!?  ◇◆◇◆◇◆◇◆◇  ――前世で大人になれなかった少年は、新たな世界で幸せを求める。  しかし、『幸せになりたい』という夢をかなえるの難しさを、彼はまだ知らない。  自分自身の幸せを追い求める少年は、やがて世界に幸せをもたらす『勇者』となる――  ◇◆◇◆◇◆◇◆◇ 本文中&表紙のイラストはへるにゃー様よりご提供戴いたものです(掲載許可済)。 へるにゃー様のHP:http://syakewokuwaeta.bake-neko.net/ --------------- ※カクヨムとなろうにも投稿しています

【完結】おじいちゃんは元勇者

三園 七詩
ファンタジー
元勇者のおじいさんに拾われた子供の話… 親に捨てられ、周りからも見放され生きる事をあきらめた子供の前に国から追放された元勇者のおじいさんが現れる。 エイトを息子のように可愛がり…いつしか子供は強くなり過ぎてしまっていた…

無能と言われた召喚士は実家から追放されたが、別の属性があるのでどうでもいいです

竹桜
ファンタジー
 無能と呼ばれた召喚士は王立学園を卒業と同時に実家を追放され、絶縁された。  だが、その無能と呼ばれた召喚士は別の力を持っていたのだ。  その力を使用し、無能と呼ばれた召喚士は歌姫と魔物研究者を守っていく。

俺が死んでから始まる物語

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていたポーター(荷物運び)のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもないことは自分でも解っていた。 だが、それでもセレスはパーティに残りたかったので土下座までしてリヒトに情けなくもしがみついた。 余りにしつこいセレスに頭に来たリヒトはつい剣の柄でセレスを殴った…そして、セレスは亡くなった。 そこからこの話は始まる。 セレスには誰にも言った事が無い『秘密』があり、その秘密のせいで、死ぬことは怖く無かった…死から始まるファンタジー此処に開幕

不遇な死を迎えた召喚勇者、二度目の人生では魔王退治をスルーして、元の世界で気ままに生きる

六志麻あさ
ファンタジー
異世界に召喚され、魔王を倒して世界を救った少年、夏瀬彼方(なつせ・かなた)。 強大な力を持つ彼方を恐れた異世界の人々は、彼を追い立てる。彼方は不遇のうちに数十年を過ごし、老人となって死のうとしていた。 死の直前、現れた女神によって、彼方は二度目の人生を与えられる。異世界で得たチートはそのままに、現実世界の高校生として人生をやり直す彼方。 再び魔王に襲われる異世界を見捨て、彼方は勇者としてのチート能力を存分に使い、快適な生活を始める──。 ※小説家になろうからの転載です。なろう版の方が先行しています。 ※HOTランキング最高4位まで上がりました。ありがとうございます!

帰って来た勇者、現代の世界を引っ掻きまわす

黄昏人
ファンタジー
ハヤトは15歳、中学3年生の時に異世界に召喚され、7年の苦労の後、22歳にて魔族と魔王を滅ぼして日本に帰還した。帰還の際には、莫大な財宝を持たされ、さらに身につけた魔法を始めとする能力も保持できたが、マナの濃度の低い地球における能力は限定的なものであった。しかし、それでも圧倒的な体力と戦闘能力、限定的とは言え魔法能力は現代日本を、いや世界を大きく動かすのであった。 4年前に書いたものをリライトして載せてみます。

エリクサーは不老不死の薬ではありません。~完成したエリクサーのせいで追放されましたが、隣国で色々助けてたら聖人に……ただの草使いですよ~

シロ鼬
ファンタジー
エリクサー……それは生命あるものすべてを癒し、治す薬――そう、それだけだ。 主人公、リッツはスキル『草』と持ち前の知識でついにエリクサーを完成させるが、なぜか王様に偽物と判断されてしまう。 追放され行く当てもなくなったリッツは、とりあえず大好きな草を集めていると怪我をした神獣の子に出会う。 さらには倒れた少女と出会い、疫病が発生したという隣国へ向かった。 疫病? これ飲めば治りますよ? これは自前の薬とエリクサーを使い、聖人と呼ばれてしまった男の物語。

能力『ゴミ箱』と言われ追放された僕はゴミ捨て町から自由に暮らすことにしました

御峰。
ファンタジー
十歳の時、貰えるギフトで能力『ゴミ箱』を授かったので、名門ハイリンス家から追放された僕は、ゴミの集まる町、ヴァレンに捨てられる。 でも本当に良かった!毎日勉強ばっかだった家より、このヴァレン町で僕は自由に生きるんだ! これは、ゴミ扱いされる能力を授かった僕が、ゴミ捨て町から幸せを掴む為、成り上がる物語だ――――。

処理中です...