貧弱の英雄

カタナヅキ

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旋斧の秘密

第337話 試合の受付

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「いらっしゃいませ、本日のご用件はなんでしょうか?試合の観戦の場合ならば一般席なら銅貨5枚、最前列の特等席の場合は銀貨1枚、上階の席の場合は銀貨1枚となります」
「僕は観戦、彼は試合に出場したい……貴賓席で頼むよ」
「こ、これは……失礼しました、アッシュ公爵様のお客様でしたか!!」


受付を行っていた男性にアルトはアッシュ公爵から受け取っていた手紙を渡すと、それを見た男性は慌てて頭を下げ、一般客は立入るのも禁じられている貴賓席に彼を案内する。


「じゃあ、ナイ君。僕は観客席で君の事を応援しているよ。試合が終わった後は迎えに行くから控室で待っていてくれ」
「あ、うん……」
「ナイ様ですね、アッシュ公爵様の許可を確認しました。どうぞ、こちらへおいで下さい」


手紙を確認した受付の男性はアルトを貴賓席にまで連れ出し、闘技場の警護を行う兵士がナイを案内する。ナイは兵士に連れられるままに選手の控室に向かう――





――ナイが案内されたのは一般参加の選手が待機する部屋ではなく、特別な控室だった。他に選手の姿はなく、この部屋は特別な試合を行う選手だけが案内されるという。


「こちらでお待ちください。お飲み物や食事が欲しい場合は遠慮なくお申し付けください」
「え?そんな物まで用意してくれるんですか?」
「はい、部屋を出て右に向かうと売店もあります。回復薬や魔道具の類を販売しているので必要な物があればそちらを利用してください」
「あ、はい……」


どうやらナイは参加者の中でも特別に扱われているらしく、兵士達の対応も丁寧だった。だが、腹は減っていないので食事を行う気分でもなく、試合が始まる前に集中力を高めるためにナイは座禅を行う。

魔操術を教わった時にナイは座禅で精神力を磨くようにマホから指導され、心が落ち着かないときは座禅を行うように心掛けている。大観衆の前で試合を行うのはナイも初めての経験のため、緊張しないで戦えるか不安はあった。


「ふうっ……よし、落ち着いた」
『ナイ様、間もなく試合の時刻を迎えます。兵士が迎えにくるので控室で待機して下さい』
「うわっ!?な、何だ!?」


やっと落ち着いた所で急に何処からか聞こえてきた声にナイは焦った声を上げるが、天井を見上げるとトランペットの先端部分を想像させる形をした奇妙な魔道具が取り付けられていた。


「何だこれ……ここから声が聞こえてきたのか?」


ナイは天井に取り付けられた謎の魔道具に視線を向けると、この時に魔道具の内部に風属性の魔石が採りつけられている事が判明し、どうやら魔石を利用して部屋の中に声を送り込んでいる事が判明する。

今までに見た事もない魔道具だったので驚いてしまったが、流石は工場区に存在する闘技場であり、他の地区の建物にはない機能も搭載されていた。


「せっかく落ち着いたのにまたドキドキしてきたよ……まあいいか、戦う事に集中しよう」


今回のナイは魔法剣の実戦経験を積むために参加するため、魔法腕輪の確認を行う。実戦で魔法剣を使ったのは後にも先にもガーゴイル亜種との戦闘だけであり、いざという時に魔法剣を使って戦えるように経験は積んでおかなければならない。


(覚悟を決めろ……よし、行くぞ!!)


気合を込める様にナイは頬を叩き、改めて仮面を整えて迎えの兵士が来るのを待つ。それから数分後、兵士が控室に訪れた。


「ナイ様、お待たせしました。これより試合場まで案内します」
「分かりました」
「あ、それと……試合の際は観客の皆様にはクロノ様と紹介されますのでご注意ください」
「あ、はい」


兵士が迎えに来るとナイは頷き、試合が始まった後はナイは「クロノ」を演じなければならない。観客は彼をクロノだと思って声を掛けてくる事もあるため、気を付けなればならない。

控室を抜け出し、兵士の案内の元でナイは通路を歩く。思っていた様に闘技場内は広く、試合場の前まで辿り着くのに時間が掛かってしまった。


「こちらでお待ちください。この扉を潜り抜けた時点で試合はすぐに始まりますのでご注意ください」
「分かりました」
「ではご武運を……」


試合場に繋がる門の前までナイは辿り着くと、兵士は足早に立ち去る。改めてナイは門が開くまで待っていると、ここで自分の身体が震えている事に気付く。


(うっ、また緊張してきた……上手く戦えるかな)


震える身体を抑えながらもナイは目を閉じて精神を集中させると、やがて門が徐々に開き始め、外側から観客の声援と女性の声が響く。


『お待たせしました!!これより午前の部、最終試合を行います!!今回の試合に参加するのは初出場のクロノ選手です!!入場して下さい!!』


試合場から聞こえてきた声にナイは覚悟を決めて踏み出すと、目の前に広がる光景を見て彼は驚く。試合場は砂地に覆われた地面であり、試合場の周囲には柱が立っていた。柱の頂上部には無色の水晶玉が飾られており、魔術兵と思われる兵士も待機していた。
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