貧弱の英雄

カタナヅキ

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旋斧の秘密

第342話 脂肪の鎧VS改良型刺剣

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「アガァッ……フガァアアアッ!!」
『おおっと!!ここでトロールは遂に全ての餌を食べつくしました!!クロノ選手、万事休すか!?』
「や、やべぇっ!!早く逃げろ!!」
「殺されるぞっ!!」


トロールは地面に落ちていた全ての餌を食いつくすと、唐突に態度が一変させて雄叫びを上げる。それを見た観客が一斉に騒ぎ出し、その反応を見てナイは嫌な予感抱く。

餌を食べつくしたトロールは腹を抑え、あれほど食べていたというのに腹の音が鳴り響く。貪欲なゴブリンや赤毛熊以上のとんでもない食欲であり、先ほどまでは大人しかったトロールは血走った目でナイを見つめると、彼を「餌」だと判断したのか腕を伸ばす。


「フガァッ!!」
「うわっ!?」


意外にもトロールは俊敏な動作で腕を振り下ろすと、ナイは「跳躍」の技能を発揮して後方に回避する。その判断は功を奏し、トロールの腕は地面に叩きつけられた瞬間に振動が走る。


(この力……赤毛熊よりもやばい!?)


トロールは赤毛熊を上回る膂力を誇り、更にナイを捕まえようと腕を振り下ろす。先ほどとは打って変わって空腹の状態に陥ったトロールはナイを捕まえようと全力で動く。

自分に向けて伸ばされる腕を躱しながらもナイは隙を伺い、振り下ろされた腕に対して「迎撃」の技能を発動させ、反魔の盾で弾き返す。


「ここだっ!!」
「フガッ!?」
『は、弾き返した!?クロノ選手、信じられない力です!!』
「嘘だろ、おい!?」
「マジかよ!!」


ナイは反魔の盾を利用して上から振り下ろされたトロールの右腕を受けると、衝撃波が発生してトロールの攻撃を弾き返す。トロールは大きく体勢を崩し、その隙を逃さずに畳み込む。

ナイは旋斧を振りかざして今度は足元に目掛けて放つ。先ほどは大きな腹の脂肪によって攻撃を弾かれたが、他の箇所ならば攻撃が通じるかもしれないと判断して攻撃を仕掛ける。


「ここならどうだ!!」
「フギャッ!?」


左足の脛の部分にナイは旋斧を叩き込むと、トロールは初めて悲鳴らしきを越え上げて倒れ込む。だが、攻撃を仕掛けた際にナイはまたもや刃を弾かれてしまい、腹以外の部分もトロールの全身は「脂肪の鎧」で覆いつくされている事に気付く。


(駄目だ、腹以外の場所も柔らかくて弾き返される……これは生半可な攻撃は通じなさそうだな)


先ほどの攻撃でトロールは左足の脛部分にが残る程度の損傷は与える事に成功した。しかし、この様子では戦闘不能に追い込むには難しく、ここでナイは新しい装備を試す事にした。


(よし、アルトから改良して貰った刺剣を試そう)


ナイは旋斧を背中に戻すと、刺剣を一本取り出す。ナイが常備している刺剣の数は三本だが、まずは最初の一本目を投擲した。


「このっ!!」
「フガァッ……!?」


刺剣を構えたナイは「剛力」を発動させ、腕力を強化した状態で全力で「投擲」を行う。投げ放たれた刺剣はトロールの腹部に的中したが、刃が腹部に突き刺さる事はなく、先ほどの旋斧のように弾かれてしまう。

貫通力の高い刺剣ならばあるいはトロールの肉体にも損傷を与えられるのではないかと思ったが、やはり通常攻撃でトロールに損傷を負わせるのは難しい。それを理解した上でナイは新しい刺剣を取り出す。


(普通に投げても通じないか……なら、これならどうだ!?)


アルトの改造が加えられた刺剣の柄の部分には小型の風属性の魔石が嵌め込まれており、こちらはフックショットに取り付けた風属性の魔石と同じく、手元で操作するだけで作動する。

魔石を捩じった瞬間に刺剣の刃に風の魔力が送り込まれ、渦巻状の風の魔力が纏う。それを確認したナイはもう一度トロールに向けて放つ。


「喰らえっ!!」
「フガァッ……!?」


またもや短剣を投げてきたナイに対してトロールは構わずに近寄ろうとしたが、この時に投げ込まれた短剣は風の魔力の影響で高速回転を行う。

渦巻状の風の魔力によって回転しながら加速した刺剣がトロールの腹部に的中した瞬間、血飛沫が舞い上がる。回転を加えた事でトロールの腹部に突き刺さった瞬間に肉を巻き込み、そのまま皮膚を引きちぎって内部にまで到達する。


「フギャアアアアッ!?」
『ええっ!?し、信じられません!!トロールが……あのトロールがを上げています!!』
「そんな馬鹿なっ!?」
「ど、どうなってるんだ!?」


トロールが悲鳴を上げる姿に観衆は驚き、これまでのトロールの試合で損傷を受けた事は一度もなかった。どんな相手だろうとトロールの脂肪の鎧を突破できず、損傷を与える事もできなかった。

しかし、アルトの改造が施された刺剣はトロールの腹部を貫き、トロールの腹から血が滲み出す。だが、あまり長時間の効果は発揮できないのか、刺剣は数秒ほどで魔力が消えてしまい、回転も止まってしまう。
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