貧弱の英雄

カタナヅキ

文字の大きさ
413 / 1,110
グマグ火山決戦編

第402話 イチノの危機

しおりを挟む
――イチノにゴブリンの軍団が攻め寄せ、現在はリノ王子と警備兵が籠城している事を知った国王はすぐに将軍と王国騎士団を招集させ、援軍を派遣させる準備を行う。

しかし、イチノから王都まではかなりの距離が存在し、とてもではないが馬などの乗り物で移動する時間はない。ならば馬よりも早く移動できる乗り物を用意する必要があった。


「……やはり、あれを使うしかない様だな」
「しかし、国王様……あのを動かすためには大量の魔石を必要とします。それに長年の間、使用を控えていたので調整も行わなければ……」
「ならばすぐに工場区の鍛冶師に整備させよ!!リノの一大事というのに手段は選んではおられぬ!!」
「陛下、落ち着いて下さい。焦る気持ちは分かりますが……」


国王はリノが窮地に立たされていると聞いて普段の彼からは信じられないほどに取り乱しており、アッシュはそんな彼を落ち着かせようとする。


「あの船を動かすにしても数日は掛かります。その間、援軍として派遣する軍隊の選抜を行いましょう。また、今回は冒険者ギルドの冒険者の協力は必要不可欠です」
「分かっておるわ!!ギルドに連絡は伝えたのか!?」
「はい、既に連絡済みです。ギルドマスターのギガンからも黄金級冒険者3名、それに王都内に残っている金級冒険者達にも緊急指定依頼という形で協力を取り次ぎました」
「黄金級冒険者3名じゃと……もっと用意できなかったのか!!」
「生憎と王都内に残っているのは先日の火竜討伐にも御協力してくれた3名のみで……」


苛立ちを隠せない国王は援軍として派遣される者達を確認し、この時に派遣される人材の中にある者がいない事に気付く。


「待て、あのナイという者はどうした?火竜やゴーレムキングの討伐で最も活躍したそうではないか。どうして名前が出て来ぬ」
「いや、彼は正確には我が国の兵士や騎士ではなく、ましてや冒険者でもない一般人ですので……」
「何を言うか!!ゴーレムキングを倒せる程の力を持つ者を放っておけるか、アルトに連絡せよ!!ナイを同行させるように説得しろとな!!これは王命である!!」
「はっ……分かりました」


国王はナイの同行を命じると、慌てて兵士達は駆け出す。その様子を見てアッシュはまずい状況だと判断し、リノが危機と知って国王は冷静な判断ができていなかった。

実を言えば国王はある理由で他の二人の王子よりもリノの事を目に賭けており、その理由はリノは生まれた時から大きな秘密を抱えていた。


「陛下、まずは心を落ち着かせてください。リノ王子が心配なのは分かりますが……」
「むむうっ……分かっておる!!」


言葉とは裏腹に国王は机を叩き、興奮が抑えきれない様子だった。こんな姿の国王を見るのはアッシュも久しぶりであり、普段の国王は冷静で滅多に取り乱す事はない。

リノを救うためとはいえ、表向きは一般人であるナイを軍隊に同行させるなど普通ではない。だが、今回の援軍の派遣に関してはナイとしても都合が良かった――





「――イチノが攻撃を受けている!?」
「ああ、詳しい詳細は僕も知らされていないが、イチノにゴブリンの軍勢が現れて街を襲っているそうなんだ」
「ちょっと待って、イチノって……ナイ君の故郷の近くにある街の事だよね!?」
「そうだわ、前に話してくれたナイ君のお父さんの友達が住んでいる街なんでしょっ!?」
「おいおい、どうなってるんだい……」


王命を受けたアルトは屋敷に戻るとナイ達が都合よく勢揃いしており、事情を説明する。ここでナイは初めてイチノが危機を迎えている事を知って呆然とした。


「ゴブリンの軍勢が現れたって、どういう事!?」
「僕も詳しくは聞かされていないんだが……なんでもゴブリンキングが現れた可能性が高い」
「ゴブリン……キング?」
「ああ、名前ぐらいは聞いた事があるだろう?ゴブリンの王にして最強のゴブリンといわれる恐ろしい魔物さ……その危険度は竜種にも匹敵すると言われている」
「ウォンッ!?」


竜種に匹敵という言葉に一緒に聞いていたビャクは驚きの声を上げ、ナイ達も信じられない表情を浮かべる。竜種である火竜の恐ろしさは先日にナイ達も思い知らされたばかりであり、ゴブリンキングはその火竜と並ぶ存在なのかと戦慄した。


「まあ、単純な戦闘力の方は火竜が大きく上回るだろうが……ゴブリンキングの厄介な点は強さだけじゃない、他のゴブリンを従える力を持っているんだ」
「他のゴブリンを従える……」
「ナイ君は前に他のゴブリンや魔獣を従えたゴブリンメイジを覚えているかい?僕と初めて会った時に出会った奴だよ」
「え?」


アルトの言葉にナイは彼との出会いを思い出し、確かに彼がゴブリンメイジに襲われている所をナイは助けた。あの時はゴブリンメイジは明らかに他のゴブリンを従えて行動していた事を思い出す。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

神様、ちょっとチートがすぎませんか?

ななくさ ゆう
ファンタジー
【大きすぎるチートは呪いと紙一重だよっ!】 未熟な神さまの手違いで『常人の“200倍”』の力と魔力を持って産まれてしまった少年パド。 本当は『常人の“2倍”』くらいの力と魔力をもらって転生したはずなのにっ!!  おかげで、産まれたその日に家を壊しかけるわ、謎の『闇』が襲いかかってくるわ、教会に命を狙われるわ、王女様に勇者候補としてスカウトされるわ、もう大変!!  僕は『家族と楽しく平和に暮らせる普通の幸せ』を望んだだけなのに、どうしてこうなるの!?  ◇◆◇◆◇◆◇◆◇  ――前世で大人になれなかった少年は、新たな世界で幸せを求める。  しかし、『幸せになりたい』という夢をかなえるの難しさを、彼はまだ知らない。  自分自身の幸せを追い求める少年は、やがて世界に幸せをもたらす『勇者』となる――  ◇◆◇◆◇◆◇◆◇ 本文中&表紙のイラストはへるにゃー様よりご提供戴いたものです(掲載許可済)。 へるにゃー様のHP:http://syakewokuwaeta.bake-neko.net/ --------------- ※カクヨムとなろうにも投稿しています

【完結】おじいちゃんは元勇者

三園 七詩
ファンタジー
元勇者のおじいさんに拾われた子供の話… 親に捨てられ、周りからも見放され生きる事をあきらめた子供の前に国から追放された元勇者のおじいさんが現れる。 エイトを息子のように可愛がり…いつしか子供は強くなり過ぎてしまっていた…

無能と言われた召喚士は実家から追放されたが、別の属性があるのでどうでもいいです

竹桜
ファンタジー
 無能と呼ばれた召喚士は王立学園を卒業と同時に実家を追放され、絶縁された。  だが、その無能と呼ばれた召喚士は別の力を持っていたのだ。  その力を使用し、無能と呼ばれた召喚士は歌姫と魔物研究者を守っていく。

俺が死んでから始まる物語

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていたポーター(荷物運び)のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもないことは自分でも解っていた。 だが、それでもセレスはパーティに残りたかったので土下座までしてリヒトに情けなくもしがみついた。 余りにしつこいセレスに頭に来たリヒトはつい剣の柄でセレスを殴った…そして、セレスは亡くなった。 そこからこの話は始まる。 セレスには誰にも言った事が無い『秘密』があり、その秘密のせいで、死ぬことは怖く無かった…死から始まるファンタジー此処に開幕

不遇な死を迎えた召喚勇者、二度目の人生では魔王退治をスルーして、元の世界で気ままに生きる

六志麻あさ
ファンタジー
異世界に召喚され、魔王を倒して世界を救った少年、夏瀬彼方(なつせ・かなた)。 強大な力を持つ彼方を恐れた異世界の人々は、彼を追い立てる。彼方は不遇のうちに数十年を過ごし、老人となって死のうとしていた。 死の直前、現れた女神によって、彼方は二度目の人生を与えられる。異世界で得たチートはそのままに、現実世界の高校生として人生をやり直す彼方。 再び魔王に襲われる異世界を見捨て、彼方は勇者としてのチート能力を存分に使い、快適な生活を始める──。 ※小説家になろうからの転載です。なろう版の方が先行しています。 ※HOTランキング最高4位まで上がりました。ありがとうございます!

帰って来た勇者、現代の世界を引っ掻きまわす

黄昏人
ファンタジー
ハヤトは15歳、中学3年生の時に異世界に召喚され、7年の苦労の後、22歳にて魔族と魔王を滅ぼして日本に帰還した。帰還の際には、莫大な財宝を持たされ、さらに身につけた魔法を始めとする能力も保持できたが、マナの濃度の低い地球における能力は限定的なものであった。しかし、それでも圧倒的な体力と戦闘能力、限定的とは言え魔法能力は現代日本を、いや世界を大きく動かすのであった。 4年前に書いたものをリライトして載せてみます。

エリクサーは不老不死の薬ではありません。~完成したエリクサーのせいで追放されましたが、隣国で色々助けてたら聖人に……ただの草使いですよ~

シロ鼬
ファンタジー
エリクサー……それは生命あるものすべてを癒し、治す薬――そう、それだけだ。 主人公、リッツはスキル『草』と持ち前の知識でついにエリクサーを完成させるが、なぜか王様に偽物と判断されてしまう。 追放され行く当てもなくなったリッツは、とりあえず大好きな草を集めていると怪我をした神獣の子に出会う。 さらには倒れた少女と出会い、疫病が発生したという隣国へ向かった。 疫病? これ飲めば治りますよ? これは自前の薬とエリクサーを使い、聖人と呼ばれてしまった男の物語。

能力『ゴミ箱』と言われ追放された僕はゴミ捨て町から自由に暮らすことにしました

御峰。
ファンタジー
十歳の時、貰えるギフトで能力『ゴミ箱』を授かったので、名門ハイリンス家から追放された僕は、ゴミの集まる町、ヴァレンに捨てられる。 でも本当に良かった!毎日勉強ばっかだった家より、このヴァレン町で僕は自由に生きるんだ! これは、ゴミ扱いされる能力を授かった僕が、ゴミ捨て町から幸せを掴む為、成り上がる物語だ――――。

処理中です...