貧弱の英雄

カタナヅキ

文字の大きさ
461 / 1,110
ゴブリンキングの脅威

第448話 「付与魔術師」イリアの実力

しおりを挟む
――王国内には三人しか存在しない魔導士の一人であるイリアは「付与魔術師」であり、彼女は他の人間に魔力を分け与える事でその人間を強化させる魔法を扱える。

魔操術を扱える人間ならば他人に魔力を分け与える技術を身に着けることはできるが、イリアの場合は特別で彼女は自分の魔力を与えるだけではなく、その人間の適正が高い魔力を活性化させる能力を持つ。

例えば聖属性の適正が高い人間の場合は身体能力が一時的に強化されるが、これが他の属性の場合だと勝手が違う。ドリスのように火属性の魔法を得意とする人間は付与魔法を受けると、炎や熱を操る力が強化される。

エルマも付与魔法を扱えるが、彼女の場合はイリアのように人間を対象に魔力を送り込むという技術は行えず、あくまでも彼女は無機物に魔法の力を付与させる事しか出来ない。逆にイリアの場合は生物にしか付与魔法を発動出来ず、同じ付与魔術師といっても得意不得意が存在した。


「皆さん、頼みましたよ!!付与《エンチャント》!!」
「うわっ!?」
「くぅっ……!?」
「この感覚……久しぶりですわ!!」
「うおっ……!?」


イリアが魔法を唱えた瞬間に全員の身体が光り輝き、ナイとゴンザレスは身体に白炎を纏うと、ドリスの手にした真紅は輝きを増し、リンが所有する暴風も風の魔力が溢れ出す。


「な、何だこいつら……兄貴、やばいんじゃないですか!?」
「ば、馬鹿野郎!!怯むな、空の上なら俺達に敵う奴はいない!!」
「よ、よし!!ぶっ殺せっ!!」
「クエエエッ!!」


ナイ達の様子の変化を見て空賊たちは少しだけ怖気づくが、すぐにここが自分達の有利な空だと思い直し、攻撃を仕掛ける。しかし、そんな彼等に対してビャクは咆哮を放つ。


「ウォオオオンッ!!」
「クエエッ!?」
「グエッ……!!」
「ば、馬鹿!!落ち着け!!」
「くそっ、怯えるな!!」


ビャクが咆哮を放つとヒッポグリフの群れは彼の存在を嫌でも意識させられ、取り乱してしまう。その隙を逃さずにナイは駆け出し、旋斧を振りかざす。


「ビャク、援護ありがとう!!」
「やばい、こっちに来るぞ!?」
「ばか、ガキなんか恐れるな……うおおおっ!?」
「クエエッ!?」


旋斧を構えたナイは凄まじい速度でヒッポグリフに接近すると、盗賊達の目にはまるでナイが瞬間移動でもしたかのように一瞬で近付いたようにしか見えなかった。

ヒッポグリフと戦うのはナイは初めてだったが、旋斧を握りしめたナイは全身の筋力を使い、今の状態ならば剛力を発動せずとも敵を倒せると確信する。


「だああっ!!」
「グエエッ!?」
「うぎゃああっ!?」


ヒッポグリフの身体を旋斧が切り裂いた瞬間、首元と胴体が切断された事でヒッポグリフに乗り込んでいた男も床に倒れ込む。その光景を見てナイはある確信を抱く。


(こいつら、そんなに硬くない!!これなら勝てる!!)


どうやらヒッポグリフの強さはそれほどではなく、少なくとも赤毛熊やミノタウロスといった魔獣よりも弱い。無論、空を飛べるので厄介な相手ではあるが、それならば空に逃げる暇も与えずに攻撃すればいいだけの話である。


「ふんっ!!」
「グエエッ!?」
「うわぁっ!?」


ナイから少し離れた場所ではゴンザレスがヒッポグリフの首を締め付け、巨人族の腕力を生かして床に倒れ込ませる。この際に背中に乗っていた者も巻き込まれ、ヒッポグリフに押し潰される形となる。

現在のゴンザレスはナイと同様にイリアの付与魔法によって聖属性の魔力が活性化し、強化された状態だった。元々体格と筋力が恵まれているゴンザレスならば油断しなければヒッポグリフに後れを取る事はない。


「リンさん、ここは貴女の出番ですわよ!!」
「分かっている、邪魔にならない様に下がっていろ……お前達、頭を伏せろ!!」
「えっ?」
「むっ!?」


ここでリンが遂に動き出し、彼女は日本刀を想像させる「暴風」という魔剣を腰に差すと、剣術の「居合」の体勢を取る。但し、彼女の武器の間合いには敵は存在せず、距離が離れ過ぎていた。


「何だ?一体何の真似だ?そこから俺達に攻撃でもするつもりか?」
「おい、待て……こいつ、確か銀狼騎士団の副団長じゃないのか!?」
「やばい、お前等早く空へ……!!」
「――遅いっ!!」


リンの構えを見て空賊の何人かは馬鹿にしたが、すぐに察しの良い者は銀狼騎士団のリンの噂を思い出し、慌てて空へ逃げようとした。

しかし、彼等が行動をう移す前にリンは刀を鞘から引き抜いた瞬間、強烈な風圧が発生すると、甲板に居りていたヒッポグリフとその背中に乗り込んだ者達に向けて「風の斬撃」を放つ。

風属性の魔力で構成された斬撃がヒッポグリフの肉体を切り裂き、更に背中に乗り込んでいた者達の両足を巻き込む。この結果、数体のヒッポグリフと空賊の男達の両足が切り裂かれ、悲鳴が響き渡る。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

神様、ちょっとチートがすぎませんか?

ななくさ ゆう
ファンタジー
【大きすぎるチートは呪いと紙一重だよっ!】 未熟な神さまの手違いで『常人の“200倍”』の力と魔力を持って産まれてしまった少年パド。 本当は『常人の“2倍”』くらいの力と魔力をもらって転生したはずなのにっ!!  おかげで、産まれたその日に家を壊しかけるわ、謎の『闇』が襲いかかってくるわ、教会に命を狙われるわ、王女様に勇者候補としてスカウトされるわ、もう大変!!  僕は『家族と楽しく平和に暮らせる普通の幸せ』を望んだだけなのに、どうしてこうなるの!?  ◇◆◇◆◇◆◇◆◇  ――前世で大人になれなかった少年は、新たな世界で幸せを求める。  しかし、『幸せになりたい』という夢をかなえるの難しさを、彼はまだ知らない。  自分自身の幸せを追い求める少年は、やがて世界に幸せをもたらす『勇者』となる――  ◇◆◇◆◇◆◇◆◇ 本文中&表紙のイラストはへるにゃー様よりご提供戴いたものです(掲載許可済)。 へるにゃー様のHP:http://syakewokuwaeta.bake-neko.net/ --------------- ※カクヨムとなろうにも投稿しています

【完結】おじいちゃんは元勇者

三園 七詩
ファンタジー
元勇者のおじいさんに拾われた子供の話… 親に捨てられ、周りからも見放され生きる事をあきらめた子供の前に国から追放された元勇者のおじいさんが現れる。 エイトを息子のように可愛がり…いつしか子供は強くなり過ぎてしまっていた…

無能と言われた召喚士は実家から追放されたが、別の属性があるのでどうでもいいです

竹桜
ファンタジー
 無能と呼ばれた召喚士は王立学園を卒業と同時に実家を追放され、絶縁された。  だが、その無能と呼ばれた召喚士は別の力を持っていたのだ。  その力を使用し、無能と呼ばれた召喚士は歌姫と魔物研究者を守っていく。

俺が死んでから始まる物語

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていたポーター(荷物運び)のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもないことは自分でも解っていた。 だが、それでもセレスはパーティに残りたかったので土下座までしてリヒトに情けなくもしがみついた。 余りにしつこいセレスに頭に来たリヒトはつい剣の柄でセレスを殴った…そして、セレスは亡くなった。 そこからこの話は始まる。 セレスには誰にも言った事が無い『秘密』があり、その秘密のせいで、死ぬことは怖く無かった…死から始まるファンタジー此処に開幕

帰って来た勇者、現代の世界を引っ掻きまわす

黄昏人
ファンタジー
ハヤトは15歳、中学3年生の時に異世界に召喚され、7年の苦労の後、22歳にて魔族と魔王を滅ぼして日本に帰還した。帰還の際には、莫大な財宝を持たされ、さらに身につけた魔法を始めとする能力も保持できたが、マナの濃度の低い地球における能力は限定的なものであった。しかし、それでも圧倒的な体力と戦闘能力、限定的とは言え魔法能力は現代日本を、いや世界を大きく動かすのであった。 4年前に書いたものをリライトして載せてみます。

不遇な死を迎えた召喚勇者、二度目の人生では魔王退治をスルーして、元の世界で気ままに生きる

六志麻あさ
ファンタジー
異世界に召喚され、魔王を倒して世界を救った少年、夏瀬彼方(なつせ・かなた)。 強大な力を持つ彼方を恐れた異世界の人々は、彼を追い立てる。彼方は不遇のうちに数十年を過ごし、老人となって死のうとしていた。 死の直前、現れた女神によって、彼方は二度目の人生を与えられる。異世界で得たチートはそのままに、現実世界の高校生として人生をやり直す彼方。 再び魔王に襲われる異世界を見捨て、彼方は勇者としてのチート能力を存分に使い、快適な生活を始める──。 ※小説家になろうからの転載です。なろう版の方が先行しています。 ※HOTランキング最高4位まで上がりました。ありがとうございます!

エリクサーは不老不死の薬ではありません。~完成したエリクサーのせいで追放されましたが、隣国で色々助けてたら聖人に……ただの草使いですよ~

シロ鼬
ファンタジー
エリクサー……それは生命あるものすべてを癒し、治す薬――そう、それだけだ。 主人公、リッツはスキル『草』と持ち前の知識でついにエリクサーを完成させるが、なぜか王様に偽物と判断されてしまう。 追放され行く当てもなくなったリッツは、とりあえず大好きな草を集めていると怪我をした神獣の子に出会う。 さらには倒れた少女と出会い、疫病が発生したという隣国へ向かった。 疫病? これ飲めば治りますよ? これは自前の薬とエリクサーを使い、聖人と呼ばれてしまった男の物語。

能力『ゴミ箱』と言われ追放された僕はゴミ捨て町から自由に暮らすことにしました

御峰。
ファンタジー
十歳の時、貰えるギフトで能力『ゴミ箱』を授かったので、名門ハイリンス家から追放された僕は、ゴミの集まる町、ヴァレンに捨てられる。 でも本当に良かった!毎日勉強ばっかだった家より、このヴァレン町で僕は自由に生きるんだ! これは、ゴミ扱いされる能力を授かった僕が、ゴミ捨て町から幸せを掴む為、成り上がる物語だ――――。

処理中です...