貧弱の英雄

カタナヅキ

文字の大きさ
465 / 1,110
ゴブリンキングの脅威

第452話 船の整備

しおりを挟む
――空賊の頭は自害し、さらに捕縛した暗殺者4人が死亡した事により、アッシュ公爵は味方の中に裏切り者がいると判断した。しかし、その裏切り者を見分ける方法がない。

暗殺者達に関しては闇ギルドが送り込んだのは間違いないが、空賊に船の位置を伝えた内通者に関しては見つける手がかりはなく、船の修理を終えると再びアッシュは飛行船で移動を行う。

予期せぬ事態に陥ったが、飛行船はイチノへ向けて確実に近付いており、明日の朝には到着する位置まで辿り着いた。今回は敵の襲撃を警戒し、周囲が草原に囲まれた湖に着水し、常に警戒は怠らない。


「いいか、これから行動する時は3人以上で動くのだ!!食事も睡眠の時も他の者と離れて単独で行動する事は許さん!!交代制で今夜は見張りを怠らずに周囲を警戒し続けろ!!」
「「「はっ!!」」」


アッシュは味方内に潜んでいる「裏切り者」にこれ以上は好き勝手させないため、搭乗員達に団体行動を徹底させ、怪しい動きを見せた人間は報告するように通達する。暗殺者達の時は二人行動を厳守させたが、その時は二人とも闇ギルドが送り込んだ暗殺者だったので今回は知り合い同士の行動を避け、くじ引きで組み分けを行う。

常に三人態勢で行動を徹底させ、裏切り者が動きにくい状況を作り出す。この際にナイはリーナと別れ、他の人間と組む事になった。


「まさか儂等が組まされる事になるとはのう」
「ちぇっ……野郎同士が組んで何が面白いんだよ。できる事なら可愛い女の子と一緒になりたかったね」
「は、はあっ……」


ナイは一緒に行動する事になったのは黄金級冒険者のハマーンとガオウであり、偶然にも二人とはくじ引きで一緒になった。最もハマーンは船の整備などで忙しく、その仕事を二人も手伝わされる事になる。


「ほれ、文句を言ってないでお主も手伝わんか。ナイよ、そこにある工具を取ってくれるか?」
「これですか?」
「うむ、これを使えば魔石を簡単に取り外せるからのう。いいか、よく見ておけ。これをこうやって取り外すんじゃぞ」


ハマーンはナイ達に船に設置されている魔石の交換する方法を教え、今日中に船に取り付けられている風属性の魔石を交換する必要があった。この飛行船の動力は魔石であり、風属性の魔石を利用して船を浮上させ、火属性の魔石で加速を行う。そのため、飛行中の際は常に魔石の魔力を消耗するため、定期的に入れ替える必要があった。


「爺さん、あんたも大変だな。飛行船の運転の後はずっと船の整備を行うなんて……こんなの黄金級冒険者の仕事とは言えないだろ」
「別に嫌とは思っとらんよ。この船がまた飛べる日が気て儂としては嬉しいからのう……それに儂の本職は鍛冶師じゃ」
「そういえばハマーンさんは前にこの飛行船に乗った事があるんですよね」
「儂が鍛冶師を目指したのはこの船に乗るためでもあったからのう。優秀な鍛冶師ならば船の整備を任せられて一緒に飛行船に乗る事が出来ると知ってな。あの時は必死に一流の鍛冶師になろうと頑張ってたのう」
「そんな理由で鍛冶師になったのか!?」
「皆には秘密じゃぞ……すまんが船の側面の魔石を取り換えたい。ナイよ、ロープを取ってくれ」
「あ、はい」


ハマーンはロープを自分の腰に括り付けると、ナイにそれを持たせて船の側面に固定されている魔石の交換を行う。ナイはハマーンを落とさないようにしっかりとロープを掴み、その様子を見ていたガオウは感心した声を上げる。


「へえ……前々から思っていたが、坊主は人間にしては力があるな。あの爺さん、年老いてはいるが太ってるし、色々と工具を持っているから結構重いだろ?」
「いや……別に普段から重い物を持ち歩いているので平気です」
「聞こえておるぞ!!人をオーク扱いするでない、儂の身体の殆どは筋肉じゃっ!!」


小髭族であるハマーンは人間よりも小さいが、黄金級冒険者にして優秀な鍛冶師でもあり、普段から重い素材や工具を扱っているので老人ながらたくましい筋肉が身に着いている。大抵の小髭族は人間よりも小柄だが、その分に筋肉が凝縮されており、見た目は小さくても体重は重い。

しかし、普段から旋斧や岩砕剣などの大剣を持ち歩いているナイにとってはハマーンの体重など大して負担でもなく、彼の指示通りにロープを掴んで移動を行う。その様子を見てガオウは改めてナイが異常な筋力を身に着けている事を知る。


(このガキ、何なんだ……見た目は華奢に見えるが、普通の肉体じゃない。これだけ長い間、あの爺さんを支え続けているのに汗一つ流していない。大した奴だな)


ガオウはナイの筋力と体力に驚かされ、観察している間にもハマーンは船の整備を終わらせ、ナイに引っ張り上げてもらう。甲板に戻ったハマーンはひとまずは残りの仕事は弟子たちに任せることにした。


「ふうっ……これで重要な箇所の交換は終わった。後の事は儂の弟子たちでなんとかなるだろう」
「お疲れさまでした」
「お疲れさん」
「お前な……儂等に任せて結局は仕事を手伝わんかったな」
「こういう精密な作業は苦手でね……ほら、これやるから許してくれよ」


作業は結局はナイとハマーンに任せてガオウは手伝いはせず、その詫びのつもりなのかハマーンに水筒を渡す。中身は回復薬が入っているらしく、ハマーンは不満な表情を浮かべながらも水筒を受け取り、中身を飲む。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

神様、ちょっとチートがすぎませんか?

ななくさ ゆう
ファンタジー
【大きすぎるチートは呪いと紙一重だよっ!】 未熟な神さまの手違いで『常人の“200倍”』の力と魔力を持って産まれてしまった少年パド。 本当は『常人の“2倍”』くらいの力と魔力をもらって転生したはずなのにっ!!  おかげで、産まれたその日に家を壊しかけるわ、謎の『闇』が襲いかかってくるわ、教会に命を狙われるわ、王女様に勇者候補としてスカウトされるわ、もう大変!!  僕は『家族と楽しく平和に暮らせる普通の幸せ』を望んだだけなのに、どうしてこうなるの!?  ◇◆◇◆◇◆◇◆◇  ――前世で大人になれなかった少年は、新たな世界で幸せを求める。  しかし、『幸せになりたい』という夢をかなえるの難しさを、彼はまだ知らない。  自分自身の幸せを追い求める少年は、やがて世界に幸せをもたらす『勇者』となる――  ◇◆◇◆◇◆◇◆◇ 本文中&表紙のイラストはへるにゃー様よりご提供戴いたものです(掲載許可済)。 へるにゃー様のHP:http://syakewokuwaeta.bake-neko.net/ --------------- ※カクヨムとなろうにも投稿しています

【完結】おじいちゃんは元勇者

三園 七詩
ファンタジー
元勇者のおじいさんに拾われた子供の話… 親に捨てられ、周りからも見放され生きる事をあきらめた子供の前に国から追放された元勇者のおじいさんが現れる。 エイトを息子のように可愛がり…いつしか子供は強くなり過ぎてしまっていた…

無能と言われた召喚士は実家から追放されたが、別の属性があるのでどうでもいいです

竹桜
ファンタジー
 無能と呼ばれた召喚士は王立学園を卒業と同時に実家を追放され、絶縁された。  だが、その無能と呼ばれた召喚士は別の力を持っていたのだ。  その力を使用し、無能と呼ばれた召喚士は歌姫と魔物研究者を守っていく。

俺が死んでから始まる物語

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていたポーター(荷物運び)のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもないことは自分でも解っていた。 だが、それでもセレスはパーティに残りたかったので土下座までしてリヒトに情けなくもしがみついた。 余りにしつこいセレスに頭に来たリヒトはつい剣の柄でセレスを殴った…そして、セレスは亡くなった。 そこからこの話は始まる。 セレスには誰にも言った事が無い『秘密』があり、その秘密のせいで、死ぬことは怖く無かった…死から始まるファンタジー此処に開幕

帰って来た勇者、現代の世界を引っ掻きまわす

黄昏人
ファンタジー
ハヤトは15歳、中学3年生の時に異世界に召喚され、7年の苦労の後、22歳にて魔族と魔王を滅ぼして日本に帰還した。帰還の際には、莫大な財宝を持たされ、さらに身につけた魔法を始めとする能力も保持できたが、マナの濃度の低い地球における能力は限定的なものであった。しかし、それでも圧倒的な体力と戦闘能力、限定的とは言え魔法能力は現代日本を、いや世界を大きく動かすのであった。 4年前に書いたものをリライトして載せてみます。

不遇な死を迎えた召喚勇者、二度目の人生では魔王退治をスルーして、元の世界で気ままに生きる

六志麻あさ
ファンタジー
異世界に召喚され、魔王を倒して世界を救った少年、夏瀬彼方(なつせ・かなた)。 強大な力を持つ彼方を恐れた異世界の人々は、彼を追い立てる。彼方は不遇のうちに数十年を過ごし、老人となって死のうとしていた。 死の直前、現れた女神によって、彼方は二度目の人生を与えられる。異世界で得たチートはそのままに、現実世界の高校生として人生をやり直す彼方。 再び魔王に襲われる異世界を見捨て、彼方は勇者としてのチート能力を存分に使い、快適な生活を始める──。 ※小説家になろうからの転載です。なろう版の方が先行しています。 ※HOTランキング最高4位まで上がりました。ありがとうございます!

エリクサーは不老不死の薬ではありません。~完成したエリクサーのせいで追放されましたが、隣国で色々助けてたら聖人に……ただの草使いですよ~

シロ鼬
ファンタジー
エリクサー……それは生命あるものすべてを癒し、治す薬――そう、それだけだ。 主人公、リッツはスキル『草』と持ち前の知識でついにエリクサーを完成させるが、なぜか王様に偽物と判断されてしまう。 追放され行く当てもなくなったリッツは、とりあえず大好きな草を集めていると怪我をした神獣の子に出会う。 さらには倒れた少女と出会い、疫病が発生したという隣国へ向かった。 疫病? これ飲めば治りますよ? これは自前の薬とエリクサーを使い、聖人と呼ばれてしまった男の物語。

能力『ゴミ箱』と言われ追放された僕はゴミ捨て町から自由に暮らすことにしました

御峰。
ファンタジー
十歳の時、貰えるギフトで能力『ゴミ箱』を授かったので、名門ハイリンス家から追放された僕は、ゴミの集まる町、ヴァレンに捨てられる。 でも本当に良かった!毎日勉強ばっかだった家より、このヴァレン町で僕は自由に生きるんだ! これは、ゴミ扱いされる能力を授かった僕が、ゴミ捨て町から幸せを掴む為、成り上がる物語だ――――。

処理中です...