貧弱の英雄

カタナヅキ

文字の大きさ
467 / 1,110
ゴブリンキングの脅威

第454話 ナイVSガオウ

しおりを挟む
「では、試合を開始するぞ!!二人とも、準備はいいな?」
「ああ、何時でもいいぞ」
「あ、ちょっと待ってください……誰か、この剣を預かってくれない?」


ナイは試合が始める前に岩砕剣を取り上げ、恐らくは試合中に使う事は無いと思うので他の人間に預けようとした。二つの大剣を所持した状態だと動きが鈍るため、重量のある岩砕剣は今回は使わない事にした。

ガオウのような獣人族は人間よりも身軽で足が速い者が多く、素早い相手と戦う場合は重量が大きい岩砕剣で戦うのは不利だった。旋斧も大剣と化したので重さは増したが、それでも複数の魔法剣を使えるという点で旋斧の方が有利だと判断し、岩砕剣は預かってもらう。


「ミイナ、悪いけど持っててくれる?」
「仕方ない……今日の昼ご飯のおかずを分けてくれるならいい」
「ちゃっかりしているな……」
「あ、待って!!私が持っててあげるよ!!」


この中で集まった面子の中ではナイに次ぐ怪力を誇るミイナが預かるのが順当だと思われたが、ここでモモが間に入って彼女の代わりに岩砕剣に手を伸ばす。モモとしてはナイの役に立とうと思ったのだろうが、ナイは岩砕剣を渡す際に躊躇する。


「いや、モモ……気持ちは有難いけど、この大剣は重いからモモだと持ち上げる事も」
「え?何か言った?」
「持ち上げた!?」


モモは会話の際中にナイから岩砕剣を取り上げ、軽々と持ち上げる。その様子を見て他の者も驚き、テンが愛用する退魔刀よりも重量があるはずの岩砕剣をモモは簡単に持ち上げ、そのまま運んでいく。


「モ、モモちゃん……相変わらず凄い力だね」
「そうかな?別にこれぐらいの重さならリーナちゃんも持てると思うけど……」
「僕も持てるとは思うけど……そんな簡単に持ち上げられないよ」


冒険者として魔物と戦い続けているリーナはレベルも高く、普通の人間と比べたら身体能力は高い。しかし、レベルが上昇する度に筋力は強化されると言っても、彼女の場合はミイナやモモのように岩砕剣などの重量のある武器は持ち上げる事はできても軽扱いこなす事はできない。

リーナの場合は槍の使い手であるため、重い物を持つ力よりも槍などの武器で突く筋力が強く、退魔刀や岩砕剣などの武器は扱う事はできない。レベルが上がれば単純に力が増すというわけでもなく、そういう意味ではモモは彼女よりも力持ちと言える。


「すいません、準備が終わりました。何時でもどうぞ」
「うむ、では始めるぞ」
「ああ、早くしろ」


改めてナイはガオウと向き合うと旋斧を構えた。今回の相手はリーナ以来の黄金級冒険者のため、決して油断はできない。ハマーンは腕を上げると、試合の合図と共に腕を下ろす。


「始めっ!!」
「おらぁっ!!」
「くぅっ!?」


試合を開始した瞬間、ガオウはナイの元に目掛けて突っ込み、その移動速度はリーナにも匹敵した。彼は両腕の鉤爪を振りかざし、肉食獣が爪を振り下ろすうように荒々しい動作で攻撃を行う。


「牙斬!!」
「うわっ!?」


不規則な攻撃の軌道でガオウはナイの旋斧に対して鉤爪を放つと、金属音が鳴り響く。ナイは旋斧を手にした両手が軽く痺れ、即座に後退した。

ガオウは自分の攻撃を受けたナイを見て笑みを浮かべ、そこからさらに速度を上昇させてナイへと接近する。正面から向かってきたガオウに大してナイは旋斧を振り払う。


「やあっ!!」
「おっと」
「跳んだ!?」


刃が迫った瞬間、ガオウは上空へ跳び上がると、空中で身体を回転させながら鉤爪を放つ。その攻撃に対して咄嗟にナイは右腕に装着した反魔の盾を構えた。


「うおらぁっ!!」
「くっ!?」


反魔の盾を装着した右腕に衝撃が走り、鉤爪が触れた瞬間に衝撃波が発生した。反魔の盾は外部から攻撃を受けた場合、威力を増幅させて衝撃波を放つ。しかし、ガオウは空中で衝撃波を受けても怯まず、それどころか衝撃波を利用して逆に距離を取った。

どうやら反魔の盾で防がれる事は想定済みらしく、ガオウは笑みを浮かべると改めて鉤爪を構え、それに対してナイは旋斧を構え直す。想像以上にガオウの動きは早く、身軽で動きが捉えきれない。


(この人、本当に強い……今まで戦った相手の中で一番早いかもしれない)


リーナも早かったが、獣人族の場合は人間よりも高い運動能力を誇り、その動作は同じく獣人族のガロの動きに近い。しかし、ナイも負けるのは嫌なので旋斧を構えると、反撃の隙を伺う。


(動きの速い相手を捉えるには……これしかない)


旋斧を横向きに構えたナイは、もしもガオウが突っ込んで来た時に横薙ぎに振り払い、攻撃範囲を広げるしかないと判断した。そんなナイの考えを読み取ったのかガオウは眉をしかめ、挑発する様に告げる。


「考えが見え見えなんだよ!!」
「っ……!!」


ガオウは馬鹿正直に真正面から突っ込むような真似はせず、再び跳躍してナイの元へ向かう。上空からの攻撃ならばナイも旋斧を上に向けて放つしかなく、攻撃範囲を絞らねばならない。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

神様、ちょっとチートがすぎませんか?

ななくさ ゆう
ファンタジー
【大きすぎるチートは呪いと紙一重だよっ!】 未熟な神さまの手違いで『常人の“200倍”』の力と魔力を持って産まれてしまった少年パド。 本当は『常人の“2倍”』くらいの力と魔力をもらって転生したはずなのにっ!!  おかげで、産まれたその日に家を壊しかけるわ、謎の『闇』が襲いかかってくるわ、教会に命を狙われるわ、王女様に勇者候補としてスカウトされるわ、もう大変!!  僕は『家族と楽しく平和に暮らせる普通の幸せ』を望んだだけなのに、どうしてこうなるの!?  ◇◆◇◆◇◆◇◆◇  ――前世で大人になれなかった少年は、新たな世界で幸せを求める。  しかし、『幸せになりたい』という夢をかなえるの難しさを、彼はまだ知らない。  自分自身の幸せを追い求める少年は、やがて世界に幸せをもたらす『勇者』となる――  ◇◆◇◆◇◆◇◆◇ 本文中&表紙のイラストはへるにゃー様よりご提供戴いたものです(掲載許可済)。 へるにゃー様のHP:http://syakewokuwaeta.bake-neko.net/ --------------- ※カクヨムとなろうにも投稿しています

裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね

魚夢ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。 元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、 王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。 代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。 父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。 カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。 その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。 ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。 「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」 そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。 もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。 

【完結】おじいちゃんは元勇者

三園 七詩
ファンタジー
元勇者のおじいさんに拾われた子供の話… 親に捨てられ、周りからも見放され生きる事をあきらめた子供の前に国から追放された元勇者のおじいさんが現れる。 エイトを息子のように可愛がり…いつしか子供は強くなり過ぎてしまっていた…

不遇な死を迎えた召喚勇者、二度目の人生では魔王退治をスルーして、元の世界で気ままに生きる

六志麻あさ
ファンタジー
異世界に召喚され、魔王を倒して世界を救った少年、夏瀬彼方(なつせ・かなた)。 強大な力を持つ彼方を恐れた異世界の人々は、彼を追い立てる。彼方は不遇のうちに数十年を過ごし、老人となって死のうとしていた。 死の直前、現れた女神によって、彼方は二度目の人生を与えられる。異世界で得たチートはそのままに、現実世界の高校生として人生をやり直す彼方。 再び魔王に襲われる異世界を見捨て、彼方は勇者としてのチート能力を存分に使い、快適な生活を始める──。 ※小説家になろうからの転載です。なろう版の方が先行しています。 ※HOTランキング最高4位まで上がりました。ありがとうございます!

エリクサーは不老不死の薬ではありません。~完成したエリクサーのせいで追放されましたが、隣国で色々助けてたら聖人に……ただの草使いですよ~

シロ鼬
ファンタジー
エリクサー……それは生命あるものすべてを癒し、治す薬――そう、それだけだ。 主人公、リッツはスキル『草』と持ち前の知識でついにエリクサーを完成させるが、なぜか王様に偽物と判断されてしまう。 追放され行く当てもなくなったリッツは、とりあえず大好きな草を集めていると怪我をした神獣の子に出会う。 さらには倒れた少女と出会い、疫病が発生したという隣国へ向かった。 疫病? これ飲めば治りますよ? これは自前の薬とエリクサーを使い、聖人と呼ばれてしまった男の物語。

帰って来た勇者、現代の世界を引っ掻きまわす

黄昏人
ファンタジー
ハヤトは15歳、中学3年生の時に異世界に召喚され、7年の苦労の後、22歳にて魔族と魔王を滅ぼして日本に帰還した。帰還の際には、莫大な財宝を持たされ、さらに身につけた魔法を始めとする能力も保持できたが、マナの濃度の低い地球における能力は限定的なものであった。しかし、それでも圧倒的な体力と戦闘能力、限定的とは言え魔法能力は現代日本を、いや世界を大きく動かすのであった。 4年前に書いたものをリライトして載せてみます。

異世界へ行って帰って来た

バルサック
ファンタジー
ダンジョンの出現した日本で、じいさんの形見となった指輪で異世界へ行ってしまった。 そして帰って来た。2つの世界を往来できる力で様々な体験をする神須勇だった。

転落貴族〜千年に1人の逸材と言われた男が最底辺から成り上がる〜

ぽいづん
ファンタジー
ガレオン帝国の名門貴族ノーベル家の長男にして、容姿端麗、眉目秀麗、剣術は向かうところ敵なし。 アレクシア・ノーベル、人は彼のことを千年に1人の逸材と評し、第3皇女クレアとの婚約も決まり、順風満帆な日々だった 騎士学校の最後の剣術大会、彼は賭けに負け、1年間の期限付きで、辺境の国、ザナビル王国の最底辺ギルドのヘブンズワークスに入らざるおえなくなる。 今までの貴族の生活と正反対の日々を過ごし1年が経った。 しかし、この賭けは罠であった。 アレクシアは、生涯をこのギルドで過ごさなければいけないということを知る。 賭けが罠であり、仕組まれたものと知ったアレクシアは黒幕が誰か確信を得る。 アレクシアは最底辺からの成り上がりを決意し、復讐を誓うのであった。 小説家になろうにも投稿しています。 なろう版改稿中です。改稿終了後こちらも改稿します。

処理中です...