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王都の異変
第574話 育ての親との再会
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「罠だろうと行くしかないさ、他にイゾウとやらを掴む手がかりはないんだからね」
「そ、それはそうかもしれませんけど……」
「危険じゃないの?」
「危険?あんたら、誰に言ってんだい?あたしは聖女騎士団の団長だよ。妖刀の使い手だが何だか知らないけど、あたしに勝てる奴なんてそうはいないよ」
「……この間、ナイに負けた癖に」
「やかましい!!尻を引っ叩くよ!?」
「いやんっ」
心配する皆に対してテンは問題ないとばかりに力こぶを作り、その態度を見て止めても無駄だと悟った他の者はクノにテンを任せる事にした。
「クノ、何かあったらすぐに戻ってこい、犬笛は持っているな?」
「大丈夫でござる。もしも罠だった場合、すぐに助けを求めるでござるよ」
「クゥ~ンッ……」
シノビはクノに万が一の事態に陥った場合、犬笛を利用して自分達を呼び出す様に指示する。犬笛を吹けばクロとコクも異変に勘付いてシノビたちに二人の危険を知らせられる。
ネズミが指定した場所は以前にルナが身を隠していた廃墟であり、そこで彼女は待つという。ナイ達は連れてこない様に指示を出されているが、犬笛が届く範囲内までナイ達は付いて行くことにした。
「テン、油断するな。相手は妖刀の使い手だ……いざという時はお前もその魔剣の力を使え」
「ああ……分かってるよ」
「あれ?テンさんの魔剣って能力があるんですか?」
見送りに来たレイラの言葉を聞いてナイは驚き、テンの退魔刀に能力がある事を初めて知った。基本的には魔剣は魔力を扱える人間ならば魔法剣を扱えるが、テンが退魔刀を利用して魔法剣を扱う姿など見た事がない。
「あたしの退魔刀はちょっと特別でね……あんた達の魔剣と比べると少し使い勝手が悪いんだよ」
「へえ、そうなんですか……」
「テン殿、そろそろ目的地に向かわないと間に合わないでござる」
「おっと、こうしちゃいられないね……じゃあ、あんた達は打ち合わせ通りに動きな」
「気をつけるんだよ」
ナイ達は別々に屋敷から抜け出し、テンとクノは廃墟へ向かう一方でナイ達の方は廃墟から離れた場所にそれぞれが移動を行う。聖女騎士団は二手に分かれ、片方はクロを従えるシノビが指揮を執り、もう片方はコクとビャクを従えるナイが指揮を執る。
万が一にもネズミがイゾウと手を組み、テンに罠を嵌めるために待ち伏せていた場合を想定し、他の者達は犬笛がぎりぎり届く範囲に待機を行う。もしもクノが危険と判断して犬笛を吹いた場合、全員がすぐに動き出せるように待機しておく。
「ビャク、コク君。頼りにしてるよ」
「ウォンッ!!」
「クゥ~ンッ」
「本当にナイさんにだけは懐きますね、この狼……」
「私達には見向きもしないのに……」
コクはナイの言葉に頷き、甘える様に彼に擦り寄る。その様子を見てヒイロとミイナはため息を吐く。
クロの方も同じでシノビとクノが連れ出した忍犬(狼)たちは二人の飼い主とナイ以外の人間には決して懐かない。他に心を許しているのはビャクぐらいであり、ビャクの事を兄弟のように慕う。
「ペロペロッ……」
「クゥンッ……」
「ビャクがコクにじゃれついている……やっぱり、仲間ができて嬉しいんだね」
「そういえばビャクの家族はもういないんですよね……白狼種なんて滅多に見つかりませんし、仲間を探すのも一苦労ですね」
「ビャクがクロかコクと結婚したら子供は白狼種?それとも黒狼種?」
「そこら辺はどうなんだろうね、僕も気になるよ」
「……って、アルト王子!?付いて来てたんですか!?」
何故か王子であるはずのアルトもナイ達に同行しており、彼はビャクとコクを見て興味深そうに覗き込む。しかし、コクの方はアルトを見て警戒したように唸り声を上げる。
「グルルルッ……!!」
「おっと、落ち着いてくれ。僕は敵じゃないよ……ほら、干し肉をあげるから」
「ガウッ!!」
「あ、コク君駄目だよ……落ち着いて」
「クゥ~ンッ……」
干し肉を差し出してきたアルトに対してコクは牙を剥き出しにして唸り声を上げるが、ナイが声を掛けるとすぐに大人しくなってしまう。その様子を見てアルトは考え込み、シノビとクノとナイの共通点を見抜く。
「……そういえばシノビ君もクノ君もナイ君も黒髪だったね。もしかしたらクロ君とコク君は黒髪の人間が好きなのかな?」
「え?」
「言われてみれば……確かに黒髪の人は珍しいですよね」
「あんまりは見かけない気がする」
「確かに……」
「黒髪自体が珍しいからな」
アルトの言葉にナイ以外の者達も納得したように頷き、この世界では黒髪の人間は珍しく、アルトはある仮説を立てる。
「そういえば聞いた話によると、シノビ君もクノ君も黒髪だという事は和国の子孫という事だ。そして彼の一族が全員が黒髪だとしたら、クロ君とコク君はずっと黒髪の人間に育てられたから黒髪ではない人間に警戒心を抱くのかもしれないね」
「あ、なるほど……だから僕にも懐いたのかな?」
「クゥ~ンッ?」
ナイはアルトの言葉を聞いて納得し、コクの頭を撫でる。もしもアルトの仮説が正しければコクが黒髪ではないに人間に懐かない理由も納得できるが、同時に彼は別の事を考えていた。
「そ、それはそうかもしれませんけど……」
「危険じゃないの?」
「危険?あんたら、誰に言ってんだい?あたしは聖女騎士団の団長だよ。妖刀の使い手だが何だか知らないけど、あたしに勝てる奴なんてそうはいないよ」
「……この間、ナイに負けた癖に」
「やかましい!!尻を引っ叩くよ!?」
「いやんっ」
心配する皆に対してテンは問題ないとばかりに力こぶを作り、その態度を見て止めても無駄だと悟った他の者はクノにテンを任せる事にした。
「クノ、何かあったらすぐに戻ってこい、犬笛は持っているな?」
「大丈夫でござる。もしも罠だった場合、すぐに助けを求めるでござるよ」
「クゥ~ンッ……」
シノビはクノに万が一の事態に陥った場合、犬笛を利用して自分達を呼び出す様に指示する。犬笛を吹けばクロとコクも異変に勘付いてシノビたちに二人の危険を知らせられる。
ネズミが指定した場所は以前にルナが身を隠していた廃墟であり、そこで彼女は待つという。ナイ達は連れてこない様に指示を出されているが、犬笛が届く範囲内までナイ達は付いて行くことにした。
「テン、油断するな。相手は妖刀の使い手だ……いざという時はお前もその魔剣の力を使え」
「ああ……分かってるよ」
「あれ?テンさんの魔剣って能力があるんですか?」
見送りに来たレイラの言葉を聞いてナイは驚き、テンの退魔刀に能力がある事を初めて知った。基本的には魔剣は魔力を扱える人間ならば魔法剣を扱えるが、テンが退魔刀を利用して魔法剣を扱う姿など見た事がない。
「あたしの退魔刀はちょっと特別でね……あんた達の魔剣と比べると少し使い勝手が悪いんだよ」
「へえ、そうなんですか……」
「テン殿、そろそろ目的地に向かわないと間に合わないでござる」
「おっと、こうしちゃいられないね……じゃあ、あんた達は打ち合わせ通りに動きな」
「気をつけるんだよ」
ナイ達は別々に屋敷から抜け出し、テンとクノは廃墟へ向かう一方でナイ達の方は廃墟から離れた場所にそれぞれが移動を行う。聖女騎士団は二手に分かれ、片方はクロを従えるシノビが指揮を執り、もう片方はコクとビャクを従えるナイが指揮を執る。
万が一にもネズミがイゾウと手を組み、テンに罠を嵌めるために待ち伏せていた場合を想定し、他の者達は犬笛がぎりぎり届く範囲に待機を行う。もしもクノが危険と判断して犬笛を吹いた場合、全員がすぐに動き出せるように待機しておく。
「ビャク、コク君。頼りにしてるよ」
「ウォンッ!!」
「クゥ~ンッ」
「本当にナイさんにだけは懐きますね、この狼……」
「私達には見向きもしないのに……」
コクはナイの言葉に頷き、甘える様に彼に擦り寄る。その様子を見てヒイロとミイナはため息を吐く。
クロの方も同じでシノビとクノが連れ出した忍犬(狼)たちは二人の飼い主とナイ以外の人間には決して懐かない。他に心を許しているのはビャクぐらいであり、ビャクの事を兄弟のように慕う。
「ペロペロッ……」
「クゥンッ……」
「ビャクがコクにじゃれついている……やっぱり、仲間ができて嬉しいんだね」
「そういえばビャクの家族はもういないんですよね……白狼種なんて滅多に見つかりませんし、仲間を探すのも一苦労ですね」
「ビャクがクロかコクと結婚したら子供は白狼種?それとも黒狼種?」
「そこら辺はどうなんだろうね、僕も気になるよ」
「……って、アルト王子!?付いて来てたんですか!?」
何故か王子であるはずのアルトもナイ達に同行しており、彼はビャクとコクを見て興味深そうに覗き込む。しかし、コクの方はアルトを見て警戒したように唸り声を上げる。
「グルルルッ……!!」
「おっと、落ち着いてくれ。僕は敵じゃないよ……ほら、干し肉をあげるから」
「ガウッ!!」
「あ、コク君駄目だよ……落ち着いて」
「クゥ~ンッ……」
干し肉を差し出してきたアルトに対してコクは牙を剥き出しにして唸り声を上げるが、ナイが声を掛けるとすぐに大人しくなってしまう。その様子を見てアルトは考え込み、シノビとクノとナイの共通点を見抜く。
「……そういえばシノビ君もクノ君もナイ君も黒髪だったね。もしかしたらクロ君とコク君は黒髪の人間が好きなのかな?」
「え?」
「言われてみれば……確かに黒髪の人は珍しいですよね」
「あんまりは見かけない気がする」
「確かに……」
「黒髪自体が珍しいからな」
アルトの言葉にナイ以外の者達も納得したように頷き、この世界では黒髪の人間は珍しく、アルトはある仮説を立てる。
「そういえば聞いた話によると、シノビ君もクノ君も黒髪だという事は和国の子孫という事だ。そして彼の一族が全員が黒髪だとしたら、クロ君とコク君はずっと黒髪の人間に育てられたから黒髪ではない人間に警戒心を抱くのかもしれないね」
「あ、なるほど……だから僕にも懐いたのかな?」
「クゥ~ンッ?」
ナイはアルトの言葉を聞いて納得し、コクの頭を撫でる。もしもアルトの仮説が正しければコクが黒髪ではないに人間に懐かない理由も納得できるが、同時に彼は別の事を考えていた。
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