貧弱の英雄

カタナヅキ

文字の大きさ
597 / 1,110
王都の異変

第593話 ナイVSゴブリン亜種

しおりを挟む
(しまった……目がっ!?)


額を出血した事で両目に血が流れ込み、視界を封じられたナイは膝を着く。その様子を見てゴブリンは笑みを浮かべ、勝利を確信した様に近付く。

しかし、ゴブリンはナイに両手の爪を放とうとした瞬間、自分の首が飛ばされる光景を想像する。野生の本能がゴブリンの行動を止め、咄嗟にゴブリンは後ろに跳ぶと先ほどまで自分の頭が存在した場所に旋斧が通り過ぎた。


「このぉっ!!」
「グギャッ……!?」


ナイは「心眼」でゴブリンの位置を読み取り、あと少しで旋斧で首を切り落とせたが避けられてしまう。慌ててゴブリンは距離を取ると、ナイは額に触れて血を抑える。


(くそ、避けられた……まだ、上手く扱えないか)


反射的にナイは心眼を発揮してゴブリンの位置を読み取り、攻撃する事には成功した。しかし、まだ心眼の方は完璧に身に付けたとはいえず、あまりに距離が離れ過ぎるとゴブリンの位置が掴めない。

ゴブリンは両目が封じられているのに自分の位置を読み取ったように攻撃を仕掛けてきたナイに警戒し、ここで彼が本当は自分の事を見えているのかと疑問を抱く。そこでゴブリンは落ちている小石を拾い上げ、ナイに投擲する。


「グギャッ!!」
「くっ!?」


ナイは咄嗟に旋斧で放たれた小石を弾くと、それを見たゴブリンは自分の行動が読まれている事に気付き、不用意に近づく事を辞めた。ゴブリンはゆっくりと移動し、足音を立てない様にする。


(静かになった……音で自分の位置を探られない様にしているのか?)


ゴブリンの声と足音が聞こえなくなった事にナイは冷や汗を流し、この状況下ではもう心眼に頼るしかない。次にゴブリンが近付いて来た時、ナイは確実に仕留めるために旋斧を握りしめた。

数秒後、遂にしびれを切らしたゴブリンが駆けつける。ナイは足音を耳にして振り返ると、ゴブリンは跳躍を行い、頭上からナイの頭に目掛けて爪を放つ。


「グギィッ!!」
「そこだぁっ!!」


ナイは上空から下りてきたゴブリンに対して旋斧を振りかざし、刃と爪が激突した。その結果、ゴブリンは爪を破壊されてしまうが、この時に破壊された爪はゴブリンの「両足」の爪だった。

両足の爪は切り裂かれたが、残りの両手の爪は健在であり、旋斧を振り抜いたナイに対してゴブリンは両腕の爪を振り下ろそうとする。


「グギィイイッ!!」
「ぷるるんっ!!」
「っ……!?」



しかし、ゴブリンにとって予想外の出来事が発生した。それは弾力を生かしてスライムが間に飛び込み、ゴブリンの顔に目掛けて突っ込む。空中でスライムの体当たりを受けたゴブリンは狙いを外し、ナイの頭上に両手の爪が通過した。


「グギャッ!?」
「そこかぁああっ!!」


ナイは旋斧を手放して声のした方向に腕を伸ばし、右手でゴブリンの足を掴むと、剛力を発動させて地面に叩き込む。まるで巨人族の如き怪力で叩きつけられたゴブリンは血反吐を吐き散らす。

しかし、ナイの攻撃はそこでは終わらず、何度もナイはゴブリンを持ち上げては地面に叩きつけ、ゴブリンの悲鳴が草原に響く。やがて再生術を利用してナイは額の傷を治し、両目の血を拭うと、そこには身体が異様な方向に折れ曲がったゴブリンが倒れていた。


「グゥッ……ギャッ……!?」
「まだ生きているのか……けど、これで終わりだ」


ナイは倒れたまま動けないゴブリンに対して旋斧を持ち上げ、確実に止めを刺すために武器を構えた。しかし、それに対してゴブリンは目を見開き、最後の力を振り絞って身体を動かし、ナイの首筋に噛みつこうとした。


「グギャアッ……!?」
「ガアアアッ!!」


だが、ゴブリンがナイの首に噛みつく事は出来ず、負傷して倒れていたはずのビャクが駆けつけ、ゴブリンの首筋に喰らいつく。そのままビャクはゴブリンの身体を振り回し、凄まじい咬筋力で首の骨を噛み砕く。


「ッ――――!?」
「グゥウッ……ペッ!!」
「ビャク……助かったよ」


首がへし折られたゴブリンは事切れたらしく、動かなくなった。ビャクはゴブリンを吐き出すと、身体から血を流しながらもナイの元へ近づき、擦り寄る。


「クゥ~ンッ……」
「よかった、怪我は痛くない?」
「ぷるぷるっ」
「君もありがとう、助かったよ……」


ナイの足元にスライムも擦り寄り、とりあえずは自分を救ってくれた二匹に感謝するとナイはビャクに回復魔法を施す。派手に出血したように見えが怪我自体はそれほどではなく、すぐに治療できた。

改めてナイは倒したゴブリンに視線を向け、間違いなく要塞で捕獲したゴブリン亜種だと確かめる。どうしてこんな場所に居るのかと思いながらもナイはゴブリンの死骸を回収し、街へ戻る事にした――
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

神様、ちょっとチートがすぎませんか?

ななくさ ゆう
ファンタジー
【大きすぎるチートは呪いと紙一重だよっ!】 未熟な神さまの手違いで『常人の“200倍”』の力と魔力を持って産まれてしまった少年パド。 本当は『常人の“2倍”』くらいの力と魔力をもらって転生したはずなのにっ!!  おかげで、産まれたその日に家を壊しかけるわ、謎の『闇』が襲いかかってくるわ、教会に命を狙われるわ、王女様に勇者候補としてスカウトされるわ、もう大変!!  僕は『家族と楽しく平和に暮らせる普通の幸せ』を望んだだけなのに、どうしてこうなるの!?  ◇◆◇◆◇◆◇◆◇  ――前世で大人になれなかった少年は、新たな世界で幸せを求める。  しかし、『幸せになりたい』という夢をかなえるの難しさを、彼はまだ知らない。  自分自身の幸せを追い求める少年は、やがて世界に幸せをもたらす『勇者』となる――  ◇◆◇◆◇◆◇◆◇ 本文中&表紙のイラストはへるにゃー様よりご提供戴いたものです(掲載許可済)。 へるにゃー様のHP:http://syakewokuwaeta.bake-neko.net/ --------------- ※カクヨムとなろうにも投稿しています

【完結】おじいちゃんは元勇者

三園 七詩
ファンタジー
元勇者のおじいさんに拾われた子供の話… 親に捨てられ、周りからも見放され生きる事をあきらめた子供の前に国から追放された元勇者のおじいさんが現れる。 エイトを息子のように可愛がり…いつしか子供は強くなり過ぎてしまっていた…

無能と言われた召喚士は実家から追放されたが、別の属性があるのでどうでもいいです

竹桜
ファンタジー
 無能と呼ばれた召喚士は王立学園を卒業と同時に実家を追放され、絶縁された。  だが、その無能と呼ばれた召喚士は別の力を持っていたのだ。  その力を使用し、無能と呼ばれた召喚士は歌姫と魔物研究者を守っていく。

俺が死んでから始まる物語

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていたポーター(荷物運び)のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもないことは自分でも解っていた。 だが、それでもセレスはパーティに残りたかったので土下座までしてリヒトに情けなくもしがみついた。 余りにしつこいセレスに頭に来たリヒトはつい剣の柄でセレスを殴った…そして、セレスは亡くなった。 そこからこの話は始まる。 セレスには誰にも言った事が無い『秘密』があり、その秘密のせいで、死ぬことは怖く無かった…死から始まるファンタジー此処に開幕

不遇な死を迎えた召喚勇者、二度目の人生では魔王退治をスルーして、元の世界で気ままに生きる

六志麻あさ
ファンタジー
異世界に召喚され、魔王を倒して世界を救った少年、夏瀬彼方(なつせ・かなた)。 強大な力を持つ彼方を恐れた異世界の人々は、彼を追い立てる。彼方は不遇のうちに数十年を過ごし、老人となって死のうとしていた。 死の直前、現れた女神によって、彼方は二度目の人生を与えられる。異世界で得たチートはそのままに、現実世界の高校生として人生をやり直す彼方。 再び魔王に襲われる異世界を見捨て、彼方は勇者としてのチート能力を存分に使い、快適な生活を始める──。 ※小説家になろうからの転載です。なろう版の方が先行しています。 ※HOTランキング最高4位まで上がりました。ありがとうございます!

帰って来た勇者、現代の世界を引っ掻きまわす

黄昏人
ファンタジー
ハヤトは15歳、中学3年生の時に異世界に召喚され、7年の苦労の後、22歳にて魔族と魔王を滅ぼして日本に帰還した。帰還の際には、莫大な財宝を持たされ、さらに身につけた魔法を始めとする能力も保持できたが、マナの濃度の低い地球における能力は限定的なものであった。しかし、それでも圧倒的な体力と戦闘能力、限定的とは言え魔法能力は現代日本を、いや世界を大きく動かすのであった。 4年前に書いたものをリライトして載せてみます。

エリクサーは不老不死の薬ではありません。~完成したエリクサーのせいで追放されましたが、隣国で色々助けてたら聖人に……ただの草使いですよ~

シロ鼬
ファンタジー
エリクサー……それは生命あるものすべてを癒し、治す薬――そう、それだけだ。 主人公、リッツはスキル『草』と持ち前の知識でついにエリクサーを完成させるが、なぜか王様に偽物と判断されてしまう。 追放され行く当てもなくなったリッツは、とりあえず大好きな草を集めていると怪我をした神獣の子に出会う。 さらには倒れた少女と出会い、疫病が発生したという隣国へ向かった。 疫病? これ飲めば治りますよ? これは自前の薬とエリクサーを使い、聖人と呼ばれてしまった男の物語。

能力『ゴミ箱』と言われ追放された僕はゴミ捨て町から自由に暮らすことにしました

御峰。
ファンタジー
十歳の時、貰えるギフトで能力『ゴミ箱』を授かったので、名門ハイリンス家から追放された僕は、ゴミの集まる町、ヴァレンに捨てられる。 でも本当に良かった!毎日勉強ばっかだった家より、このヴァレン町で僕は自由に生きるんだ! これは、ゴミ扱いされる能力を授かった僕が、ゴミ捨て町から幸せを掴む為、成り上がる物語だ――――。

処理中です...