貧弱の英雄

カタナヅキ

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王都の異変

第622話 エルマの援護、ゴンザレスの加勢

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「今です、早く離れて!!」
「エルマさん!?」
「ウォンッ!!」


エルマを見てナイは驚くが、すぐにビャクは彼に声を掛けて早く背中に乗る様に促す。現在のナイは下着姿であるため、まともに戦える状態ではない。

土煙によって湖から現れた魔物達を混乱し、その間にナイ達は逃げ出そうと試みるが、ここで土煙を振り払いながら湖の主が出現した。


「シャアアアアッ!!」
「ウォンッ!?」
「うわっ!?」
「しまった!?」


一番の大物が残っていた事に気付いたエルマは慌てて攻撃を仕掛けようとするが、ナイとビャクの前に立ちはだかる湖の主に目掛けて駆けつける人影が存在した。それは巨岩を抱えたゴンザレスであり、彼は今にもナイとビャクを飲む込むために大口を開いた主の口の中に岩石を押し込む。


「うおおおっ!!」
「アガァッ!?」
「ゴンザレス君!?」
「ウォンッ!!」


ゴンザレスが主の注意を引いている間にビャクは駆け出し、その後にゴンザレスも続く。口元に岩石を押し込まれた主は苦しそうな表情を浮かべるが、恐ろしい咬筋力と頑強な牙で岩石を噛み砕く。


「フンッ!!」
「嘘っ!?噛み砕いた!?」
「くっ……!!」
「ゴンザレス!!援護します!!」


慌ててビャクに乗ったナイは湖の主と距離を作るが、後方に続くゴンザレスの元に湖の主が迫る。それを見たエルマは次々と矢を撃ち込み、進行を妨害しようとした。

しかし、敵は湖の主ではなく、主の子供と思われる他の魔物達もあちこちから迫っていた。十数匹のワニやトカゲが合わさったような魔物が追いかける姿は正に絶望だったが、ここでナイはビャクが担いでいた荷物の中から旋斧と魔法腕輪に手を伸ばす。


「ゴンザレス君、肩を貸して!!」
「何っ……!?」
「ウォンッ!?」
「何をっ……!?」


ナイの言葉に全員が驚くが、ナイは旋斧を握りしめて魔法腕輪を装着すると、ビャクの背中からゴンザレスに向けて跳躍を行う。この際にゴンザレスの肩を足場代わりに利用して更にナイは跳躍を行い、湖の主に目掛けて旋斧を振り下ろす。


「口を閉じろぉっ!!」
「アグゥウウッ!?」


湖の主の上空からナイは旋斧の刃を振り下ろすと、上顎の部分に大剣がめり込み、そのまま強制的に下顎まで貫通して湖の主の口を閉じさせる。この状態で更にナイは魔法腕輪を握りしめ、火属性の魔力を引き出す。


「焼き尽くせっ!!」
「ッ――――!?」
「ぬあっ!?」
「きゃあっ!?」
「ウォンッ!?」


湖の主に突き刺さった旋斧から火炎が噴き出すと、10メートル近い巨体が炎に包み込まれ、全身を焼き尽くす。


(くぅっ……この格好で炎はまずかったかな!?)


しばらくの間は湖の主ももがき苦しんでいたが、やがて事切れたのか動かなくなり、全身を覆っていた炎も消えていく。


『シャアアアッ!?』


他の魔物達は湖の主が死んだ途端、炎を恐れて湖の中に飛び込み、残されたナイは旋斧に乗り込んだ状態で冷や汗を流す。


「ふうっ……危なかった」
「だ、大丈夫ですか!?」
「今助けに……うおっ!?あ、熱い!?」
「キャインッ!?」
「あ、近づかないで!!炎が消えるまで離れていて!!」


湖の主を倒したナイの元に他の者が駆けつけようとしたが、先ほどの魔法剣のせいで周囲の土砂が焼け焦げ、高熱を帯びてしまう。そのせいで素足のビャクは悲鳴を上げ、ゴンザレスもエルマも熱気で近付く事はできなかった――





――大分熱が収まった後、ナイは着替えを終えると改めてエルマとゴンザレスから話を聞く。二人はナイがマホのために先に湖に向かい、薬草を採取したという話を聞いて感謝したが、エルマは説教を行う。


「私達のためにナイさんが頑張ってくれた事は理解しています。でも、最後まで話を聞かずに先に行くなんて駄目ですよ!!この湖には凶悪な魔物が生息している事を知らせたかったのに……」
「あの、本当にごめんなさい……」
「エルマ、そう怒るな。ナイのお陰で必要な薬草は採れただろう」
「それは結果論です!!もしもナイさんの身に何か起きていたらテンに顔向けできません!!」
「クゥンッ(涙目)」
「そ、そんな顔をしても駄目ですから……」


エルマはテンとは昔からの付き合いであり、彼女も聖女騎士団の一員だった時期もあった。そのため、テンが目に掛けているナイを死なせでもすればエルマはテンに合わせる顔がない。

最もナイが先に出向いて薬草を採取してくれた事でエルマとゴンザレスは危険を侵さずに目的物を回収できた。これをイリアに渡せばマホを救うために必要な特別な薬を調合できるはずだった。
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