貧弱の英雄

カタナヅキ

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王都の異変

第640話 完全習得「瞬間加速」

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――訓練も6日目を迎え、ナイは銀狼騎士団の団員を相手に勝利し続け、遂にクノとの対戦を迎える。ここまではナイは一度もクノに勝利はできなかったが、今回は気合が違い、木剣を彼女に構えて宣言する。


「今日こそ勝つ!!」
「おおっ……凄い気迫でござるな、しかし拙者も負けないでござる!!」
「二人とも気合は十分だな。では、試合を開始しろ!!」


リンが試合開始の合図を出すと、最初に動いたのはナイだった。開始直後にナイは後方へと移動して距離を取り、その行動を見て他の人間は呆気に取られた。


(自ら距離を取るとは……何か策を考えてきたのでござるか?)


ナイは試合場の端まで移動し、あと一歩でも下がれば場外に落ちる場所まで下がる。そんなナイを見てクノは警戒するが、ここで彼女は両手のクナイを構える。


(どんな作戦を立てようと、この距離なら拙者が先手を取れるでござる!!)


遠距離攻撃の手段を持たないナイと違い、クノの場合はクナイを投擲して攻撃する事ができる分だけ有利だった。しかもナイが種有する武器はいつもの武器ではなく、ただの木剣である。

仮にナイの目的がクノが投げ放つクナイだとしても、木剣ではクナイを破壊する事も、ましてやクナイに取り付けられている鋼線を切断する事も出来ない。いくらナイが馬鹿力だとしても木造製の剣では流石に鋼線を切る事は不可能だった。


「とっ――!?」


クナイを構えたクノはナイに向けて投げつけようとした瞬間、彼女は異様な気配を感じとる。ナイとの距離はかなり開いており、仮に彼が跳躍などの技能を発動したとしても一気に詰められる距離ではない。

しかし、忍者の直感が彼女はこのままでは自分が危ないと思い、反射的に攻撃を中断して場所を移動しようとした。だが、既にナイはを終えており、クノの元へ目掛けて両脚に力を込める。



(――ここだっ!!)



この時にナイは両脚の筋力を剛力で強化させ、更にこの状態で「跳躍」を発動させる。ナイは「俊足」の技能も身に付けており、普通の人間とは比べ物にならない脚力を誇る。大分前に闘技場でリーナとの試合で使用した「瞬間加速」を扱う。

直線方向に存在したクノに目掛けてナイはを行い、この移動法はクノも見たことが無いので咄嗟に対処する事ができなかった。


「うおおおっ!!」
「ぬあっ!?」
「速いっ!?」


今までに剛力を利用して脚力を強化し、高い建物に飛び移る事は何度かあった。しかし、今回の場合は跳躍力ではなく、移動速度を重視しての移動法であり、傍から見ればナイが瞬間移動でもしたかのようにクノの目前に迫っていた。隙だらけのクノの身体を掴んだナイは力尽くで投げ飛ばす。。


「どっせい!!」
「おわぁあああっ!?」
「まずい、誰か受け止めろっ!!」


奇怪な悲鳴を上げながらクノは試合場の場外に向けて吹き飛び、その姿を見たリンは慌てて団員達に声を掛ける。しかし、クノも吹き飛ばされながらも両手を振りかざし、試合場に向けてクナイを放つ。


「くっ……まだまだぁっ!!」


クノは反射的にクナイを試合場の床に放ち、突き刺す事で自分の指に取り付けた指輪とクナイに結び付けた鋼線を利用し、落下を免れようとした。だが、あまりにも吹き飛んだ勢いが強すぎて折角床に突き刺さったクナイも抜けてしまう。


「のわぁっ!?」
「危ない!!」
「受け止めろっ!!」


結局は数名の団員が落下してきたクノを受け止める事に成功したが、彼女は場外に落ちてしまい、それを確認したリンはナイの勝利を告げた。


「この勝負、ナイの勝利だ!!」
「よしっ!!」
「うぐぅっ……ま、負けたでござる」


ナイは勝利を確認すると拳を握りしめ、一方で場外に吹き飛ばされたクノは呆気に取られた表情を浮かべる。まさか自分がこんなにも呆気なく破れるとは思わず、彼女は悔しさよりも戸惑いの方が大きい。

試合時間は数秒ほどしか経過しておらず、内容に関してもナイの攻撃を一発受けただけでクノは吹き飛び、あっさりと負けてしまう。傍から見ていた団員達も何が起きたのか理解できておらず、その一方でリンだけはナイの両足に視線を向けてある事に気付く。


(……数日前よりも筋肉が張っている。相当に無茶をしたな)


ナイの両足の筋肉が以前よりも張っており、どうやら先ほどの移動法を編み出すために彼がこの数日の間に無茶な訓練を行っていた事を察する。しかし、当の本人はクノに初めて勝利した事を嬉しく思い、これで残す相手はだけであった。
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