貧弱の英雄

カタナヅキ

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王都の異変

第675話 暗殺者の情け

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「うぐっ……がああっ!?」
「ぐふぅっ……!!」
「がはぁっ……!?」
「な、何だ?今度は何が起きた!?」


唐突に倒れていた暗殺者が苦しみ出し、全員が口元から泡を噴き出し、苦しみ始める。その様子を見てゴエモンは動揺するが、すぐにナイは思い出す。


「こ、これって……」
「まずい、こいつら毒を飲んでるんだ!!」
「えっ!?」
「ぷるんっ!?」


ナイの言葉に慌てて他の者は苦しむ白面の暗殺者の元に向かうが、既に手遅れの状態だった。暗殺者の内の三人は完全に事切れており、最後に残った暗殺者も無我夢中に腕を動かす。

最後の暗殺者は先ほどナイが聖水を振りかけて腕を治療した存在であり、聖水の影響なのか他の三人と比べて苦しんではいるが死には至らない。どうにかナイは彼を助ける手段はないかと思うが、この時に男が必死にナイに奪われた白面を取り返そうとしている事に気付く。


「めん、を……それ、を……!!」
「えっ……これの事?」
「おい、どうするつもりだ?」


取り上げた白面をナイは暗殺者が求めている事に気付き、促されるままにナイは白面を暗殺者の男に被せてやった。すると、暗殺者の男の様子が変化し、徐々に落ち着き始める。


「フウッ……フウッ……!!」
「……少し楽になった?」
「なるほど、仮面の裏側に解毒薬でも仕込んでいたのか?だが……」


どうやら仮面を身に付けると毒の効果を弱らせるができるらしく、仮面を装着した途端に暗殺者は落ちついてきたが、それでも完全に毒を防げるわけではないらしく、徐々に動きが鈍くなっていく。

このままでは死ぬ事は明確であり、どうにか助ける手段はないのかとナイは思ったが、ここで暗殺者の男はナイの腕を掴む。その行為にナイは驚くが、暗殺者は仮面越しに語り掛ける。


「ナ、ナンデ……キズヲ、ナオシタ?」
「えっ?」
「コタエロ……」


暗殺者の言葉にナイは戸惑うが、恐らくは死ぬ前に疑問を抱いたまま逝きたくはないらしく、素直に応える事にした。


「……貴方が苦しんでいるのを見て咄嗟に身体が動いていた。すぐに治さないと死んでしまうと思ったから、だから治したんだよ」
「ナゼ……オレハ、テキダゾ」
「関係ないよ、そんなの……もう、目の前で誰も死んでほしくない。そう思っただけだよ」
「…………」


暗殺者はナイの言葉を聞いて何か思う所があったのか、仮面越しで表情は分からないが、死ぬ前に暗殺者はナイに自分の顔に近付けるように促す。その行為にナイは不思議に思いながらも顔を近づけて彼の口元の部分に耳を近づけると、暗殺者は仮面を僅かに外して告げる。


「――――」
「えっ……!?」


暗殺者の告げた言葉にナイは驚愕の表情を浮かべ、やがて動かなくなってしまう。最後に暗殺者が告げた言葉にナイは目を見開き、その様子を見てゴエモンが尋ねた。


「どうした?何を聞いた?」
「……ゴエモンさん、一つ聞いていいですか?」
「何だ?」


ナイはゴエモンに振り返ると、彼にある事を尋ねる。この街で情報屋を営む彼ならば知っていてもおかしくはない事であり、少し前にナイ達が遭遇した人攫いの事を問い質す。


「この街で子供を誘拐して獣人国に流す運び屋が居た事……知ってましたか?」
「…………」
「えっ?」
「ナイ君?」
「ぷるんっ?」


どうしてこの場でそのような質問をするのかとリーナ達は驚くが、その質問に対してゴエモンは何も答えず、黙って仕込み杖の鞘を拾い上げる。

この街に来た時からナイは薄々と疑問を抱いており、この街で情報屋として暮らしているゴエモンならばナイ達が捕まえた運び屋を自称する人攫いの悪党達の存在を知っていてもおかしくはない。だが、それが事実ならばゴエモンは子供を誘拐する非情な悪党の存在を知りながら見逃し続けていた事になる。

勿論、情報屋なのだから無料で情報を提供するわけにもいかない。自分が生きるために生活するには時には情報を秘匿する必要がある事もナイは理解している。しかし、死ぬ前に暗殺者が告げた言葉でナイはゴエモンに疑問を抱く。


『ソイツハ、テキダ』


最後に暗殺者はナイにゴエモンが敵である事を告げてから死んだ。自分を助けようとしたナイへの情けなのかは分からないが、死ぬ間際の人間が嘘を言うとは思えず、ナイはゴエモンを疑う。

ゴエモンは仕込み杖を鞘に戻そうと、彼は腰の帯に差す。そしてリンが得意とする「居合」の体勢に入ると、ナイは即座に壁に立てかけていた旋斧と岩砕剣に手を伸ばして向かい合う。


「――このまま帰すわけにいかなくなったな」
「ゴエモンさん……!!」
「そ、そんな……どうして!?」
「え、ええっ!?どういう事!?」
「ぷるぷるっ……!!」


武器を構えたゴエモンに対して他の者達は戸惑い、ナイでさえもゴエモンが本当に敵だと知って動揺を隠せない。嘘であってほしかったが、それを否定するには今のゴエモンは殺気を放ち過ぎていた。
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