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王都の異変
第677話 ゴエモンの勝機
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――老人といっても差し支えない年齢のゴエモンではあるが、彼の剣の技量は並の剣士では相手にならない程に高い。情報屋を営む前はゴエモンは腕利きの傭兵として知られていた。
ゴエモンが情報屋を始めたのは30才からであり、傭兵を辞めた後も身体を鍛える事は怠らず、時には客と揉め事を起こした際は持ち前の剣術で対応した。王都に訪れてからは情報屋としての実績を積み重ね、遂には王都一の情報屋と自負する程に情報屋としての誇りを持つ。
しかし、皮肉にも情報屋でありながら自分が恋した相手が同じく自分と同じ情報屋である事を見抜けず、彼は恋人を作ってしまった。結局はその恋人が情報屋だと知ったのは自分達を利用していた白面が壊滅した後だと知り、二人は王都を離れて別の街で結婚して暮らす。
最初の数年は情報屋稼業で集めた金を元手に真っ当な人生を歩もうと頑張った。しかし、傭兵に復帰するにしてもゴエモンは年を取り過ぎたせいで誰にも相手にもされず、そもそも命の危機がある仕事をすれば自分が死んだときに妻が苦労する。
結局はゴエモンは情報屋に戻るしか生きる道はなく、妻も反対はしなかった。しかし、その結果が再び白面に利用される事になる。
『愚かな男だ……表の世界で生きる道を捨てるとはな。今後もその能力は我々のために生かしてもらうぞ』
妻が誘拐された日、ゴエモンの元に仮面を被った老人が訪れた。その後、攫われた妻のためにゴエモンは白面に従い、生きていく人生に戻る――
――昔の出来事を思い返したゴエモンは改めてナイと向かい合い、表面上は冷静に向かい合っているが、内心では焦っていた。
(このガキ……甘い部分はあるが、只者じゃないな)
どんな人生を送ればこんな風に育つのかと興味を持つぐらい、ゴエモンはナイに対して危機感を抱いていた。ナイを見ているだけでゴエモンは最初に彼が見せた大剣の扱い方を思い出し、嫌な予感が消えない。
彼と最初に出会った時はゴエモンは何処にでもいる普通の少年にしか見えなかった。しかし、実際に話してみると彼が想像以上に得体の知れない存在だと思い知らされた。決定的なのはナイが大剣を繰り出した時、ゴエモンは全盛期のテンの姿を思い出す。
(聖女騎士団の副団長テン……世界最強の騎士と謳われたジャンヌの右腕、その女の若い頃と互角の力を持つとしたら俺に勝ち目なんぞない)
仮にナイが全盛期のテンと同格の実力を持つ場合、年老いたゴエモンでは勝ち目はなかった。ゴエモンは自分の剣の腕には自信を持っているが、それでも全盛期のテンと比べると天と地ほどの差が存在する。
正攻法で挑んだとしてもゴエモンがナイに勝てる保証はない。だが、これまでの流れからナイは精神的に甘さがあり、人殺しを拒む傾向があった。
(死にかけの暗殺者のためにわざわざ薬を利用した……こいつは人を殺せない、ならそこに勝機がある)
特攻を覚悟でゴエモンがナイに挑めば人を殺す事に恐れを抱いているナイは不用意に反撃できず、それを利用してゴエモンはナイを殺す事ができるかもしれない。逆に言えばその方法以外に正気を見出せず、ゴエモンは掛けに出た。
(行くぞ、小僧!!)
覚悟を決めたゴエモンはナイに目掛けて突っ込み、この時に彼は鞘から刃を抜く際、横に振り払うのではなく、下から剣を振り抜く形で放つ。
変則的な剣の軌道でゴエモンはナイの意表を突き、彼を切りつけようとした。実際にナイは下からゴエモンの刃が迫る姿を見て驚くが、迫りくる刃に対して彼は予想外の行動を取る。
「このぉっ!!」
「なっ!?」
「ええっ!?」
「嘘っ!?」
「ぷるんっ!?」
下から繰り出された刃に対してナイは大剣では対処できないと判断し、闘拳を装着した左拳を叩き込む。まさか刃を受けられるとは思わなかったゴエモンは呆気に取られるが、すぐに彼は次の行動に移す。
「くっ……!!」
ゴエモンは刃を弾かれると、即座に懐に手を伸ばして隠し持っていた短剣を取り出し、それをナイへ突き刺そうとした。ナイはゴエモンを止めようとしたが、ゴエモンはナイの顔面に目掛けて短剣を放つ。
「くたばれっ!!」
「ふがぁっ!?」
「ナイ君!?」
「そんなっ!?」
顔面に向けて短剣が振り下ろされ、それを見たモモとリーナは悲鳴を上げるが、あろう事かナイは口を開くと短剣の刃を歯で受け止め、ゴエモンは衝撃の表情を浮かべた。
「なぁっ!?」
「ふんっ!!」
短剣の刃を歯で噛みついた状態でナイの「迎撃」の技能が発動し、ゴエモンに目掛けて掌底を繰り出す。思いもよらぬ反撃を受けてゴエモンは壁に叩きつけられ、白目を剥いて床に倒れ込む。
ゴエモンが倒れたのを確認すると、ナイは短剣を吐き出し、口元に手を押し当てて下も唇も切れていない事を確認すると安堵した。
ゴエモンが情報屋を始めたのは30才からであり、傭兵を辞めた後も身体を鍛える事は怠らず、時には客と揉め事を起こした際は持ち前の剣術で対応した。王都に訪れてからは情報屋としての実績を積み重ね、遂には王都一の情報屋と自負する程に情報屋としての誇りを持つ。
しかし、皮肉にも情報屋でありながら自分が恋した相手が同じく自分と同じ情報屋である事を見抜けず、彼は恋人を作ってしまった。結局はその恋人が情報屋だと知ったのは自分達を利用していた白面が壊滅した後だと知り、二人は王都を離れて別の街で結婚して暮らす。
最初の数年は情報屋稼業で集めた金を元手に真っ当な人生を歩もうと頑張った。しかし、傭兵に復帰するにしてもゴエモンは年を取り過ぎたせいで誰にも相手にもされず、そもそも命の危機がある仕事をすれば自分が死んだときに妻が苦労する。
結局はゴエモンは情報屋に戻るしか生きる道はなく、妻も反対はしなかった。しかし、その結果が再び白面に利用される事になる。
『愚かな男だ……表の世界で生きる道を捨てるとはな。今後もその能力は我々のために生かしてもらうぞ』
妻が誘拐された日、ゴエモンの元に仮面を被った老人が訪れた。その後、攫われた妻のためにゴエモンは白面に従い、生きていく人生に戻る――
――昔の出来事を思い返したゴエモンは改めてナイと向かい合い、表面上は冷静に向かい合っているが、内心では焦っていた。
(このガキ……甘い部分はあるが、只者じゃないな)
どんな人生を送ればこんな風に育つのかと興味を持つぐらい、ゴエモンはナイに対して危機感を抱いていた。ナイを見ているだけでゴエモンは最初に彼が見せた大剣の扱い方を思い出し、嫌な予感が消えない。
彼と最初に出会った時はゴエモンは何処にでもいる普通の少年にしか見えなかった。しかし、実際に話してみると彼が想像以上に得体の知れない存在だと思い知らされた。決定的なのはナイが大剣を繰り出した時、ゴエモンは全盛期のテンの姿を思い出す。
(聖女騎士団の副団長テン……世界最強の騎士と謳われたジャンヌの右腕、その女の若い頃と互角の力を持つとしたら俺に勝ち目なんぞない)
仮にナイが全盛期のテンと同格の実力を持つ場合、年老いたゴエモンでは勝ち目はなかった。ゴエモンは自分の剣の腕には自信を持っているが、それでも全盛期のテンと比べると天と地ほどの差が存在する。
正攻法で挑んだとしてもゴエモンがナイに勝てる保証はない。だが、これまでの流れからナイは精神的に甘さがあり、人殺しを拒む傾向があった。
(死にかけの暗殺者のためにわざわざ薬を利用した……こいつは人を殺せない、ならそこに勝機がある)
特攻を覚悟でゴエモンがナイに挑めば人を殺す事に恐れを抱いているナイは不用意に反撃できず、それを利用してゴエモンはナイを殺す事ができるかもしれない。逆に言えばその方法以外に正気を見出せず、ゴエモンは掛けに出た。
(行くぞ、小僧!!)
覚悟を決めたゴエモンはナイに目掛けて突っ込み、この時に彼は鞘から刃を抜く際、横に振り払うのではなく、下から剣を振り抜く形で放つ。
変則的な剣の軌道でゴエモンはナイの意表を突き、彼を切りつけようとした。実際にナイは下からゴエモンの刃が迫る姿を見て驚くが、迫りくる刃に対して彼は予想外の行動を取る。
「このぉっ!!」
「なっ!?」
「ええっ!?」
「嘘っ!?」
「ぷるんっ!?」
下から繰り出された刃に対してナイは大剣では対処できないと判断し、闘拳を装着した左拳を叩き込む。まさか刃を受けられるとは思わなかったゴエモンは呆気に取られるが、すぐに彼は次の行動に移す。
「くっ……!!」
ゴエモンは刃を弾かれると、即座に懐に手を伸ばして隠し持っていた短剣を取り出し、それをナイへ突き刺そうとした。ナイはゴエモンを止めようとしたが、ゴエモンはナイの顔面に目掛けて短剣を放つ。
「くたばれっ!!」
「ふがぁっ!?」
「ナイ君!?」
「そんなっ!?」
顔面に向けて短剣が振り下ろされ、それを見たモモとリーナは悲鳴を上げるが、あろう事かナイは口を開くと短剣の刃を歯で受け止め、ゴエモンは衝撃の表情を浮かべた。
「なぁっ!?」
「ふんっ!!」
短剣の刃を歯で噛みついた状態でナイの「迎撃」の技能が発動し、ゴエモンに目掛けて掌底を繰り出す。思いもよらぬ反撃を受けてゴエモンは壁に叩きつけられ、白目を剥いて床に倒れ込む。
ゴエモンが倒れたのを確認すると、ナイは短剣を吐き出し、口元に手を押し当てて下も唇も切れていない事を確認すると安堵した。
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