貧弱の英雄

カタナヅキ

文字の大きさ
694 / 1,110
王都の異変

第683話 地下の拠点

しおりを挟む
「――よし、変装は終わったな」
「ううっ……この仮面、変な臭いがする」
「毒を飲んだ時にこの仮面を付けたら進行を遅らせるみたいだから、もしかしたらこの仮面も何か特別な効果があるのかもしれないね……」
「確かに……」
「ぷるぷるっ(似合ってる?)」
「プルミンは付けなくてもいいと思うよ?」


全員が白面を装備した後、移動を再開する。単独で見張り役をしていた白面の暗殺者を捕まえる事ができたのは幸運であり、人数分の仮面を取りそろえる事ができた。ゴエモンの話によれば昔とは違って白面の仮面には毒は仕込まれておらず、毒耐性の技能を持たないリーナやモモでも問題なく装着する事ができた。

ナイ達は下水道を移動し、遂に白面の拠点と思われる出入口に辿り着く。正確には出入口といっても隠し通路であり、特別な手順を踏まなければ入る事は出来ない。


「いいか、同時に壁に嵌め込まれている魔石を回転させるんだぞ」
「同時ですね……分かりました」
「俺は反時計回り、お前は時計回りだ。絶対に間違えるなよ……もしも反対方向に回したら仕掛けが作動してこの扉は開かなくなるからな」


隠し通路を開くための出入口の隠し壁には細工が施されており、二人同時に離れた位置に存在する魔石を動かさなければならない。

ナイとゴエモンは同時に魔石を操作すると、二人の間の通路が突如として凹み始め、やがて地下に続く階段が出現した。ここから先はゴエモンも知らない未知の領域であり、油断は出来ない。


「よし、行くぞ……覚悟はいいな?」
「う、うん……」
「大丈夫です」
「……行きましょう」
「ぷるぷるっ……(←モモの頭の上で勇ましい表情を浮かべる)」


全員に確認するとゴエモンは率先して階段を降り、白面の拠点と思われる地下空間へ赴く。ちなみに隠し通路は他にもいくつか存在するらしく、それを全てゴエモンは調べつくしていた。

今頃はクノがアルト達と合流していたら彼等は警備兵と共に下水道へ移動し、この拠点に向かっているはずだった。白面がどの程度の規模かは不明だが、援軍が到着するまでナイ達は敵に勘付かれない様に行動し、ゴエモンの妻を救い出さなければならない。


(……ナイ君、本当に大丈夫なの?ゴエモンさんがもしも裏切ったら、僕達は捕まっちゃうかもしれないよ?)
(大丈夫……この人は嘘を吐いてないと思うよ)


リーナは手持ちの武器がないので不安を抱いてナイに小声で話しかけるが、ナイはゴエモンが死にかけた時、彼が本気で妻を愛している事に気付く。そうでもなけれえば死にかけた時に妻の救出などナイに頼むはずがない。

ゴエモンは妻を救うためならばどんな事でもする覚悟は伝わった。最悪の場合、ナイ達を騙して白面の組織に引き渡す可能性もある。だが、ナイはゴエモンが裏切る時が来るとしたら自分達の力が白面に劣っていると判断された時だと考え、逆に言えば白面よりも自分達の方が心強い存在である事を示せば彼は裏切らないと思った。


(大丈夫だよ……何があろうと二人は守るから)
(ナ、ナイ君……)
(格好いい……)
(ぷるんっ(キュンッ)……)


ナイの言葉にモモは頬を赤らめ、リーナは心強く思い、プルミンでさえも嬉しそうな表情を浮かべる。ナイは自分の力に自惚れているわけではなく、今の自分ならば二人を守り切れる力がある気がした。


(何だろう、この感じ……今から危険な場所に行くはずなのにどうしてこんなに落ち着いているんだろう)


修羅場を幾度も潜り抜けてきたせいか、ナイはこれから暗殺者組織の拠点に乗り込むというのに自分が焦っていない事に我ながら疑問を抱く。だが、考えている間に階段を下りた先に存在する扉に到着した。


「……鍵は掛かっていないな、中に入るぞ。ここから先は不用意に声を出すなよ」
「はい、分かりました」
「う、うん……」
「離れない様に気を付けないとね……この格好だと、他の人と紛れたら見つけられないかもしれないから」
「ぷるぷるっ(←仮面を装着)」
「いや、プルミンは無理しなくていいから……」


リーナの言葉にナイ達は頷き、ゴエモンは緊張しているのか腕を震わせながら扉を開く。そして中に入った瞬間、衝撃的な光景が映し出された。


『えっ……?』


全員の声が重なり、ナイ達の視界に映し出されたのはまるで地上に存在する「酒場」のような場所だった。中に居る者は全員が獣人族であり、彼等全員が仮面を外し、他の者と談笑したり、食事を味わい、まるで普通の人間のように過ごしていた。


「たくっ、昨日はきつかったぜ……こいつがへまをして警備兵に見つかってよ」
「おいおい、それでどうしたんだ?始末したのか?」
「いや、拉致して頭から酒をぶっかけて放置したよ。そいつ、元から評判が悪くてな。勤務中に酒を飲んで酔っ払ったと勘違いされて解雇されたよ。殺しても良かったんだが、それだと色々と面倒な事になるからな……」
「悪かったって……」


会話を行う者達の話を盗み聞きしたナイ達は彼等が白面の暗殺者である事を理解するが、どうにもこれまでにナイ達が相対した白面の暗殺者とは雰囲気が違う。会話の内容は物騒ではあるが、まるで地上の人間のように振舞い、とてもナイ達に襲い掛かった白面の暗殺者達と同じ仲間とは思えない。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

神様、ちょっとチートがすぎませんか?

ななくさ ゆう
ファンタジー
【大きすぎるチートは呪いと紙一重だよっ!】 未熟な神さまの手違いで『常人の“200倍”』の力と魔力を持って産まれてしまった少年パド。 本当は『常人の“2倍”』くらいの力と魔力をもらって転生したはずなのにっ!!  おかげで、産まれたその日に家を壊しかけるわ、謎の『闇』が襲いかかってくるわ、教会に命を狙われるわ、王女様に勇者候補としてスカウトされるわ、もう大変!!  僕は『家族と楽しく平和に暮らせる普通の幸せ』を望んだだけなのに、どうしてこうなるの!?  ◇◆◇◆◇◆◇◆◇  ――前世で大人になれなかった少年は、新たな世界で幸せを求める。  しかし、『幸せになりたい』という夢をかなえるの難しさを、彼はまだ知らない。  自分自身の幸せを追い求める少年は、やがて世界に幸せをもたらす『勇者』となる――  ◇◆◇◆◇◆◇◆◇ 本文中&表紙のイラストはへるにゃー様よりご提供戴いたものです(掲載許可済)。 へるにゃー様のHP:http://syakewokuwaeta.bake-neko.net/ --------------- ※カクヨムとなろうにも投稿しています

【完結】おじいちゃんは元勇者

三園 七詩
ファンタジー
元勇者のおじいさんに拾われた子供の話… 親に捨てられ、周りからも見放され生きる事をあきらめた子供の前に国から追放された元勇者のおじいさんが現れる。 エイトを息子のように可愛がり…いつしか子供は強くなり過ぎてしまっていた…

無能と言われた召喚士は実家から追放されたが、別の属性があるのでどうでもいいです

竹桜
ファンタジー
 無能と呼ばれた召喚士は王立学園を卒業と同時に実家を追放され、絶縁された。  だが、その無能と呼ばれた召喚士は別の力を持っていたのだ。  その力を使用し、無能と呼ばれた召喚士は歌姫と魔物研究者を守っていく。

俺が死んでから始まる物語

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていたポーター(荷物運び)のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもないことは自分でも解っていた。 だが、それでもセレスはパーティに残りたかったので土下座までしてリヒトに情けなくもしがみついた。 余りにしつこいセレスに頭に来たリヒトはつい剣の柄でセレスを殴った…そして、セレスは亡くなった。 そこからこの話は始まる。 セレスには誰にも言った事が無い『秘密』があり、その秘密のせいで、死ぬことは怖く無かった…死から始まるファンタジー此処に開幕

帰って来た勇者、現代の世界を引っ掻きまわす

黄昏人
ファンタジー
ハヤトは15歳、中学3年生の時に異世界に召喚され、7年の苦労の後、22歳にて魔族と魔王を滅ぼして日本に帰還した。帰還の際には、莫大な財宝を持たされ、さらに身につけた魔法を始めとする能力も保持できたが、マナの濃度の低い地球における能力は限定的なものであった。しかし、それでも圧倒的な体力と戦闘能力、限定的とは言え魔法能力は現代日本を、いや世界を大きく動かすのであった。 4年前に書いたものをリライトして載せてみます。

不遇な死を迎えた召喚勇者、二度目の人生では魔王退治をスルーして、元の世界で気ままに生きる

六志麻あさ
ファンタジー
異世界に召喚され、魔王を倒して世界を救った少年、夏瀬彼方(なつせ・かなた)。 強大な力を持つ彼方を恐れた異世界の人々は、彼を追い立てる。彼方は不遇のうちに数十年を過ごし、老人となって死のうとしていた。 死の直前、現れた女神によって、彼方は二度目の人生を与えられる。異世界で得たチートはそのままに、現実世界の高校生として人生をやり直す彼方。 再び魔王に襲われる異世界を見捨て、彼方は勇者としてのチート能力を存分に使い、快適な生活を始める──。 ※小説家になろうからの転載です。なろう版の方が先行しています。 ※HOTランキング最高4位まで上がりました。ありがとうございます!

エリクサーは不老不死の薬ではありません。~完成したエリクサーのせいで追放されましたが、隣国で色々助けてたら聖人に……ただの草使いですよ~

シロ鼬
ファンタジー
エリクサー……それは生命あるものすべてを癒し、治す薬――そう、それだけだ。 主人公、リッツはスキル『草』と持ち前の知識でついにエリクサーを完成させるが、なぜか王様に偽物と判断されてしまう。 追放され行く当てもなくなったリッツは、とりあえず大好きな草を集めていると怪我をした神獣の子に出会う。 さらには倒れた少女と出会い、疫病が発生したという隣国へ向かった。 疫病? これ飲めば治りますよ? これは自前の薬とエリクサーを使い、聖人と呼ばれてしまった男の物語。

能力『ゴミ箱』と言われ追放された僕はゴミ捨て町から自由に暮らすことにしました

御峰。
ファンタジー
十歳の時、貰えるギフトで能力『ゴミ箱』を授かったので、名門ハイリンス家から追放された僕は、ゴミの集まる町、ヴァレンに捨てられる。 でも本当に良かった!毎日勉強ばっかだった家より、このヴァレン町で僕は自由に生きるんだ! これは、ゴミ扱いされる能力を授かった僕が、ゴミ捨て町から幸せを掴む為、成り上がる物語だ――――。

処理中です...