貧弱の英雄

カタナヅキ

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王国の闇

第730話 聖女騎士団の敗北

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『そこを退け』
「くっ……行かせるわけないだろうがっ!!」
『ふむっ……余程大事な人間がいるらしいな』


テンは命に代えても通すわけには行かず、ゴウカの前に立ち塞がる。しかし、そんな彼女の態度を見て増々ゴウカは中に存在する人間に興味を抱き、彼女を押し退けて宿屋の中に入り込む。


『悪いが通らせてもらうぞ』
「ぐあっ!?」
「テ、テンさん!?どうしたの!?」


外からテンの悲鳴が聞こえて宿の中に居たヒナが飛び出すと、彼女はゴウカを前にして顔色を青ざめる。一方でゴウカはヒナに視線を向け、彼女に問い質す。


『教えてくれ、お前の他に中に誰かいるのか?』
「あっ、あっ……」
「や、止めろっ……その娘に手を出すなっ……!!」


テンは必死に地面を這いつくばり、ゴウカの足首を掴む。何としてもヒナを守ろうとするテンであったが、ゴウカはそんな彼女の態度を見てテンにとってヒナがどれほど大事な存在だと気付く。


『安心しろ、一般人に手を出す程落ちぶれてはいない。だが……中に居る人間の事を教えて貰おうか』
「ひっ!?」
「ヒナ、早く逃げろっ……こいつはあたしが食い止める!!」
「で、でも……」


這いつくばっているテンを見て、ヒナはどう考えても今の彼女がゴウカを抑えきれるとは思えずに立ち尽くす。その様子を見て埒が明かないと判断したゴウカはヒナを捕まえようと手を伸ばした時、ここで彼の兜に矢が衝突した。

自分の兜に矢が当てられた事にゴウカは驚き、顔を見上げるとそこには屋根の上に弓を構えるエリナの姿が存在した。彼女だけは先ほどの攻撃の際に難を逃れ、ずっと屋根の上でゴウカの様子を観察していたのだ。


「そ、それ以上に近付いたら容赦しないっすよ!!今度はその頭を撃ち抜きます!!」
『ほう、それは面白い……だが、お主の腕では無理だ。諦めろ、何もしなければ危害は加えない』
「そ、そういうわけにはいかない……私だって、聖女騎士団の団員ですから!!」
「エリナ、止めなっ!?」


ゴウカに向けてエリナは矢を構え、今度は兜の隙間に目掛けて放つ。その攻撃に対してテンは止めようとしたが、ゴウカは迫りくる矢を頭を反らして回避する。

エルマの矢を見切る程の動体視力を誇るゴウカならばエリナの矢が通用するはずがなく、彼はエリナに視線を向けるとドラゴンスレイヤーを振り払う。


「ふんっ!!」
「うわぁあああっ!?」
「エリナ!?」
「エリナさん!?」


剣圧のみで屋根の上のエリナを吹き飛ばし、彼女は屋根の上に転がりこんで意識を失ったのか動けなくなる。ゴウカはエリナの姿が見えなくなると、彼女達がここまでして宿屋の中に通そうとしない理由に疑問を抱く。


『娘よ、ここに誰がいる?』
「え、あっ……」
「駄目だ、言うんじゃないよ!!早く逃げなっ……うぐぅっ!?」
『すまん、静かにしてくれ』


ゴウカは倒れているテンの頭に手を伸ばし、彼女を気絶させるために地面に叩きつける。強い衝撃を受けたテンは白目を剥いて意識を失い、その光景を見たヒナは身体を震わせた。


「テ、テンさんっ……!?」
『大丈夫だ、気絶させただけだ……それよりも中に誰かいるのか教えてくれ』
「ああっ……!?」


ヒナはゴウカの問いかけに腰を抜かし、もう逃げられないと悟る。そんな彼女を見てゴウカは困ったように腕を組む。怯えさせるつもりはなかったのだが、これでは埒が明かない。

しかし、この時にヒナの後ろから足音が鳴り響き、ゴウカは顔を向けるとそこにはクロネに抱えて貰ったマホが姿を現す。


「すまんのう、ここまで運んでくれて助かった……下ろしてくれ」
「は、はいっ……」
「クロネ、さん……」


地下の酒場に避難していたはずのクロネがマホを連れてきた事にヒナは驚くが、マホを前にしてゴウカは呆気に取られ、彼は魔導士であるマホと対峙するのは初めてだった。


「お主がゴウカか、噂はよく耳にしておるぞ」
『むう、なんだこのちびっ子は……いや、この気配。只者ではないな』
「無礼な男じゃな、儂はここにいる誰よりも大人じゃぞ」
『何だと!?それは失礼した、謝ろう!!』


魔導士であるマホと、黄金級冒険者のゴウカが向き合い、その光景を見ただけでヒナは失禁しそうになったが、どうにか堪えて二人の様子を伺う。

この状況下でマホが現れた事にヒナは戸惑うが、彼女の方はゴウカを見上げ、他の者は彼の気迫を受けただけで身体を震わせるが、マホは特に怯えた様子もなく、自然な態度を貫く。


「なるほど、これは凄まじい力の持ち主のようじゃ……あのを思い出す」
『ほう!!その二人とは誰の事だ?』
「残念じゃが、どちらも死んでおるよ」
『それは残念だ……』


マホの口ぶりに興味を抱いたゴウカだが、彼女の次の言葉を聞いてあからさまに落ち込む。しかし、そんな彼に対してマホは告げた。
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