748 / 1,110
王国の闇
第734話 白猫亭では……
しおりを挟む
――白猫亭では聖女騎士団が集まり、ヒナとクロネは手分けして治療を行う。回復薬の類があればよかったが、生憎と聖女騎士団の団員全員分の回復薬の予備などなかったため、本格的な治療を行えない。
「ヒナちゃん、商業区で回復薬を買いに行く事は無理かしら?」
「駄目ですね。商業区の方も被害が大きくて殆どの薬屋も開いていないそうです。それにどの店も既に荒らされているらしくて……」
「そう……けど、こんな治療だと治るのに時間が掛かってしまうわ」
「……平気だよ、こんな傷。唾でも付けとけば治るさ」
「テンさん!?目を覚ましていたの!?」
意識を失っていたはずのテンが目覚めていた事にヒナは驚き、テンは痛みをこらえながら起き上がろうとするが、普通の人間ならば身動きすらできない程の重傷だった。テンの隣にはルナも眠っており、彼女の方は特に大怪我はなく、呑気に眠っていた。
「う~んっ……テン、それは私の肉だぞ……勝手に食べるな」
「たくっ、こんな時でもこいつは呑気だね……あいててっ!?」
「テンさん、無茶は駄目よ!!骨がどれだけ折れてると思ってるの!?」
「く、くそっ……そんな事よりも姫様は!?」
「あ、リノ王女はその……」
テンの言葉にヒナとクロネは言いにくそうな表情を浮かべ、その態度からテンはリノの身に何か起きたのかと表情を青くさせるが、意を決したようにヒナが説明する。
「安心してテンさん……リノ王女は無事よ、マホ魔導士がここよりも安全な場所に連れ出してくれたの」
「マホ魔導士が……だけど、エルマの話だと立っているのもやっとの状態じゃなかったのかい?」
「……実はマホ魔導士の知り合いが来てくれて助けてくれたの。だから今は王女様はマホ魔導士と一緒に安全な場所に避難しているわ。シノビさんもここへ来たんだけど、その話を伝えるとすぐにマホ魔導士の元に向かったから大丈夫よ」
「その話、本当かい?あたしを安心させようと嘘を吐いているんじゃないだろうね?」
「こんな時にそんな質の悪い嘘を言わないわよ……」
「そうかい……それなら安心だね」
ヒナの言葉を聞いてテンは心底安堵した表情を浮かべ、マホの知り合いという点は気になったが、少なくともマホやシノビがリノの傍に居るのならば安全だと思い、ベッドに横たわる。
安心した様子でベッドに身体を預けたテンにヒナとクロネは安堵するが、実際の所はヒナが話した内容は間違ってはいないが、一点だけ誤魔化している箇所があった。それはマホの知り合いが助けたという話だが、厳密に言えばその知り合いこそが大きな問題を抱えていた。
(テンさんに言えるわけがないわ……まさか、あの人が協力してくれたなんて……)
身体を休ませるテンを見てヒナは罪悪感を覚え、彼女の脳裏に今日の昼間の騒動が蘇った――
――時刻は昼間まで遡り、ゴウカと対峙したマホは彼の目的を果たすために協力を申し込む。
『ゴウカよ、お主の目的は強者との戦闘だったな?』
『うむ、そのとおりだ!!』
『ならば儂と共に王女様を守れ。そうすればお主の望みは必ず敵う事を約束する』
『王女を守れ?それはどういう意味だ?』
『言葉通りじゃ……現在の王女は色々な人間に命を狙われておる。あの方の傍に居れば王女の命を狙う輩と戦う事が出来る』
『ほう、それは暗殺者という事か?だが、白面如きでは俺の相手にはならんぞ?』
マホの言葉を聞いてもゴウカは納得は出来ず、リノを守った所で彼女の元に訪れる暗殺者が白面程度であれば彼の敵ではない。しかし、そんな彼にマホは言葉を付け足す。
『何を言っておる、リノ王女の元に訪れるのは命を狙う者ばかりではない。必ずやリノ王女を取り戻すために国内の王国騎士が派遣される。その中にはリンやドリス、」それにもしかしたらロランも動くかもしれん』
『何!?あの猛虎騎士団団長のロランか!?』
『そうじゃ、お主もまだロランとは会った事はあるまい?あの男は強いぞ、お主も勝てるかどうかは分からん』
『むむむっ……』
ロランの武勇はゴウカもよく噂で聞いており、一度戦ってみたいと思っていた。リノ王女を守るという事は白面だけではなく、王国内の彼女の命を狙う人間を敵に回す事を意味しており、マホは言葉巧みにゴウカを利用してリノの安全を守ろうと考えた。
『どうじゃ?お主にも悪い話ではあるまい、まあ儂の話が信じられないのであればとっとと消え失せるがいい。儂にも王女にも興味はないであろう?』
『はっはっはっ!!面白いちびっ子だな、俺を利用しようというのか?だが、その提案は気に入ったぞ!!王女でも何でもこの俺が守ってやる!!その代わりに必ずロランと戦わせろ!!それが条件だぞ!!』
『うむ……魔導士の称号を懸けて約束しよう』
『ええええっ!?』
ヒナは目の前で行われた交渉に愕然とするしかなく、その後にマホとゴウカは本当に手を組んで気絶した王女を連れ出し、白猫亭を立ち去った――
「ヒナちゃん、商業区で回復薬を買いに行く事は無理かしら?」
「駄目ですね。商業区の方も被害が大きくて殆どの薬屋も開いていないそうです。それにどの店も既に荒らされているらしくて……」
「そう……けど、こんな治療だと治るのに時間が掛かってしまうわ」
「……平気だよ、こんな傷。唾でも付けとけば治るさ」
「テンさん!?目を覚ましていたの!?」
意識を失っていたはずのテンが目覚めていた事にヒナは驚き、テンは痛みをこらえながら起き上がろうとするが、普通の人間ならば身動きすらできない程の重傷だった。テンの隣にはルナも眠っており、彼女の方は特に大怪我はなく、呑気に眠っていた。
「う~んっ……テン、それは私の肉だぞ……勝手に食べるな」
「たくっ、こんな時でもこいつは呑気だね……あいててっ!?」
「テンさん、無茶は駄目よ!!骨がどれだけ折れてると思ってるの!?」
「く、くそっ……そんな事よりも姫様は!?」
「あ、リノ王女はその……」
テンの言葉にヒナとクロネは言いにくそうな表情を浮かべ、その態度からテンはリノの身に何か起きたのかと表情を青くさせるが、意を決したようにヒナが説明する。
「安心してテンさん……リノ王女は無事よ、マホ魔導士がここよりも安全な場所に連れ出してくれたの」
「マホ魔導士が……だけど、エルマの話だと立っているのもやっとの状態じゃなかったのかい?」
「……実はマホ魔導士の知り合いが来てくれて助けてくれたの。だから今は王女様はマホ魔導士と一緒に安全な場所に避難しているわ。シノビさんもここへ来たんだけど、その話を伝えるとすぐにマホ魔導士の元に向かったから大丈夫よ」
「その話、本当かい?あたしを安心させようと嘘を吐いているんじゃないだろうね?」
「こんな時にそんな質の悪い嘘を言わないわよ……」
「そうかい……それなら安心だね」
ヒナの言葉を聞いてテンは心底安堵した表情を浮かべ、マホの知り合いという点は気になったが、少なくともマホやシノビがリノの傍に居るのならば安全だと思い、ベッドに横たわる。
安心した様子でベッドに身体を預けたテンにヒナとクロネは安堵するが、実際の所はヒナが話した内容は間違ってはいないが、一点だけ誤魔化している箇所があった。それはマホの知り合いが助けたという話だが、厳密に言えばその知り合いこそが大きな問題を抱えていた。
(テンさんに言えるわけがないわ……まさか、あの人が協力してくれたなんて……)
身体を休ませるテンを見てヒナは罪悪感を覚え、彼女の脳裏に今日の昼間の騒動が蘇った――
――時刻は昼間まで遡り、ゴウカと対峙したマホは彼の目的を果たすために協力を申し込む。
『ゴウカよ、お主の目的は強者との戦闘だったな?』
『うむ、そのとおりだ!!』
『ならば儂と共に王女様を守れ。そうすればお主の望みは必ず敵う事を約束する』
『王女を守れ?それはどういう意味だ?』
『言葉通りじゃ……現在の王女は色々な人間に命を狙われておる。あの方の傍に居れば王女の命を狙う輩と戦う事が出来る』
『ほう、それは暗殺者という事か?だが、白面如きでは俺の相手にはならんぞ?』
マホの言葉を聞いてもゴウカは納得は出来ず、リノを守った所で彼女の元に訪れる暗殺者が白面程度であれば彼の敵ではない。しかし、そんな彼にマホは言葉を付け足す。
『何を言っておる、リノ王女の元に訪れるのは命を狙う者ばかりではない。必ずやリノ王女を取り戻すために国内の王国騎士が派遣される。その中にはリンやドリス、」それにもしかしたらロランも動くかもしれん』
『何!?あの猛虎騎士団団長のロランか!?』
『そうじゃ、お主もまだロランとは会った事はあるまい?あの男は強いぞ、お主も勝てるかどうかは分からん』
『むむむっ……』
ロランの武勇はゴウカもよく噂で聞いており、一度戦ってみたいと思っていた。リノ王女を守るという事は白面だけではなく、王国内の彼女の命を狙う人間を敵に回す事を意味しており、マホは言葉巧みにゴウカを利用してリノの安全を守ろうと考えた。
『どうじゃ?お主にも悪い話ではあるまい、まあ儂の話が信じられないのであればとっとと消え失せるがいい。儂にも王女にも興味はないであろう?』
『はっはっはっ!!面白いちびっ子だな、俺を利用しようというのか?だが、その提案は気に入ったぞ!!王女でも何でもこの俺が守ってやる!!その代わりに必ずロランと戦わせろ!!それが条件だぞ!!』
『うむ……魔導士の称号を懸けて約束しよう』
『ええええっ!?』
ヒナは目の前で行われた交渉に愕然とするしかなく、その後にマホとゴウカは本当に手を組んで気絶した王女を連れ出し、白猫亭を立ち去った――
0
あなたにおすすめの小説
神様、ちょっとチートがすぎませんか?
ななくさ ゆう
ファンタジー
【大きすぎるチートは呪いと紙一重だよっ!】
未熟な神さまの手違いで『常人の“200倍”』の力と魔力を持って産まれてしまった少年パド。
本当は『常人の“2倍”』くらいの力と魔力をもらって転生したはずなのにっ!!
おかげで、産まれたその日に家を壊しかけるわ、謎の『闇』が襲いかかってくるわ、教会に命を狙われるわ、王女様に勇者候補としてスカウトされるわ、もう大変!!
僕は『家族と楽しく平和に暮らせる普通の幸せ』を望んだだけなのに、どうしてこうなるの!?
◇◆◇◆◇◆◇◆◇
――前世で大人になれなかった少年は、新たな世界で幸せを求める。
しかし、『幸せになりたい』という夢をかなえるの難しさを、彼はまだ知らない。
自分自身の幸せを追い求める少年は、やがて世界に幸せをもたらす『勇者』となる――
◇◆◇◆◇◆◇◆◇
本文中&表紙のイラストはへるにゃー様よりご提供戴いたものです(掲載許可済)。
へるにゃー様のHP:http://syakewokuwaeta.bake-neko.net/
---------------
※カクヨムとなろうにも投稿しています
【完結】おじいちゃんは元勇者
三園 七詩
ファンタジー
元勇者のおじいさんに拾われた子供の話…
親に捨てられ、周りからも見放され生きる事をあきらめた子供の前に国から追放された元勇者のおじいさんが現れる。
エイトを息子のように可愛がり…いつしか子供は強くなり過ぎてしまっていた…
無能と言われた召喚士は実家から追放されたが、別の属性があるのでどうでもいいです
竹桜
ファンタジー
無能と呼ばれた召喚士は王立学園を卒業と同時に実家を追放され、絶縁された。
だが、その無能と呼ばれた召喚士は別の力を持っていたのだ。
その力を使用し、無能と呼ばれた召喚士は歌姫と魔物研究者を守っていく。
俺が死んでから始まる物語
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていたポーター(荷物運び)のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもないことは自分でも解っていた。
だが、それでもセレスはパーティに残りたかったので土下座までしてリヒトに情けなくもしがみついた。
余りにしつこいセレスに頭に来たリヒトはつい剣の柄でセレスを殴った…そして、セレスは亡くなった。
そこからこの話は始まる。
セレスには誰にも言った事が無い『秘密』があり、その秘密のせいで、死ぬことは怖く無かった…死から始まるファンタジー此処に開幕
不遇な死を迎えた召喚勇者、二度目の人生では魔王退治をスルーして、元の世界で気ままに生きる
六志麻あさ
ファンタジー
異世界に召喚され、魔王を倒して世界を救った少年、夏瀬彼方(なつせ・かなた)。
強大な力を持つ彼方を恐れた異世界の人々は、彼を追い立てる。彼方は不遇のうちに数十年を過ごし、老人となって死のうとしていた。
死の直前、現れた女神によって、彼方は二度目の人生を与えられる。異世界で得たチートはそのままに、現実世界の高校生として人生をやり直す彼方。
再び魔王に襲われる異世界を見捨て、彼方は勇者としてのチート能力を存分に使い、快適な生活を始める──。
※小説家になろうからの転載です。なろう版の方が先行しています。
※HOTランキング最高4位まで上がりました。ありがとうございます!
帰って来た勇者、現代の世界を引っ掻きまわす
黄昏人
ファンタジー
ハヤトは15歳、中学3年生の時に異世界に召喚され、7年の苦労の後、22歳にて魔族と魔王を滅ぼして日本に帰還した。帰還の際には、莫大な財宝を持たされ、さらに身につけた魔法を始めとする能力も保持できたが、マナの濃度の低い地球における能力は限定的なものであった。しかし、それでも圧倒的な体力と戦闘能力、限定的とは言え魔法能力は現代日本を、いや世界を大きく動かすのであった。
4年前に書いたものをリライトして載せてみます。
エリクサーは不老不死の薬ではありません。~完成したエリクサーのせいで追放されましたが、隣国で色々助けてたら聖人に……ただの草使いですよ~
シロ鼬
ファンタジー
エリクサー……それは生命あるものすべてを癒し、治す薬――そう、それだけだ。
主人公、リッツはスキル『草』と持ち前の知識でついにエリクサーを完成させるが、なぜか王様に偽物と判断されてしまう。
追放され行く当てもなくなったリッツは、とりあえず大好きな草を集めていると怪我をした神獣の子に出会う。
さらには倒れた少女と出会い、疫病が発生したという隣国へ向かった。
疫病? これ飲めば治りますよ?
これは自前の薬とエリクサーを使い、聖人と呼ばれてしまった男の物語。
能力『ゴミ箱』と言われ追放された僕はゴミ捨て町から自由に暮らすことにしました
御峰。
ファンタジー
十歳の時、貰えるギフトで能力『ゴミ箱』を授かったので、名門ハイリンス家から追放された僕は、ゴミの集まる町、ヴァレンに捨てられる。
でも本当に良かった!毎日勉強ばっかだった家より、このヴァレン町で僕は自由に生きるんだ!
これは、ゴミ扱いされる能力を授かった僕が、ゴミ捨て町から幸せを掴む為、成り上がる物語だ――――。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる