貧弱の英雄

カタナヅキ

文字の大きさ
749 / 1,110
王国の闇

第735話 宰相の目的

しおりを挟む
――時刻は深夜を迎え、シンは自室に訪れるとそこには黒仮面を被った人物が待っていた。それを見たシンはすぐに「シャドウ」だと気付き、お互いに顔合わせる様に座り込む。

机の上にはワイングラスが二つ置かれており、普段は滅多に酒を飲まないシンだが、シャドウが訪れる時は必ず酒を用意する。


「王女はどうした?まだ見つからんのか?」
『居所は掴んでいる、だがちょっと手が出せない状況でな……』
「手が出せない……何故だ?」
『安心しろ、王女の始末は必ず行う。あんたは自分の仕事に集中していろ』


シンからすれば王女はもう邪魔者でしかなく、シャドウに対して排除するように指示していた。彼を通して城下町に潜伏していた白面にも彼女を見つけ次第に抹殺するように伝えたが、未だに彼女が生きている事にシンは訝しむ。

白面を利用して街中で騒ぎを起こしたのは邪魔者の王国騎士団を引き寄せるためであり、計画通りに王都内の王国騎士団に大打撃を与える事に成功した。もう王都の戦力は格段に落ちており、猛虎騎士団が到着すれば宰相の計画は果たされる。


「明日には猛虎騎士団が到着する。猛虎騎士団が到着すればもうこの王都で我々に対抗できる存在はいない、黒狼騎士団も銀狼騎士団も聖女騎士団でさえも今の状況ではどうする事も出来ぬ」
『なるほど、あんたがその気になればこの国の王にもなれるという事か』
「勘違いするな、はあくまでも影の一族……この国を裏から支えるのが我々の役目だ。王の座に興味はない」
『……そうだったな』


猛虎騎士団はシンの息子であるロランが統率しており、当然だが彼もシンと同じ一族であるため、シンの命令ならば必ず従う。もしもシンが王都を攻め落とせと命じればロランはそれを実行し、王都を掌握する事も容易い。

しかし、シンはあくまでも今回の白面を利用した計画は邪魔者である王女を排除するためであり、その後は。猛虎騎士団を呼び出したのは乱心したシンを殺させ、実の親子であろうと国に仇を為す者は許されてはならない事を知らしめるつもりためである。



――宰相であるシンの目的はこの国の秩序を保つためであり、決して私利私欲で動いているわけではない。この国のためならば自らを犠牲にする事を躊躇わず、そのために今回の大がかりな計画を立てた。



彼の目的は獣人国との争いの火種になりかねない王女を始末し、そして自分が王女の暗殺を計画した事を自白するつもりだった。多くの人間の前で自分の罪を告白した後、自分の息子であるロランに自分を討たせる。

ロランもこの事は承知済みであり、だからこそ彼は重要な国境の守備を離れて王都へ戻って来た。獣人国とは既にシンが裏で交渉済みであり、王女の命を奪う事を条件に獣人国は王国に手を出さない様に取引を終えている。

今回の計画はシンは自分一人だけが罪を背負い、王女の暗殺を計画したのが自分だと暴露して息子に討たせる。そうすれば邪魔者の王女を抹殺し、ロランは父親であろうと国の忠義のために戦った騎士として国王から信頼を得られる。そして次の宰相はロランが選ばれる手筈だった。

家臣の中にはシンの計画に加担する者も多く、彼等はシンの死後に次の宰相はロランを推挙する予定だった。元々ロランはこの国の大将軍にして王国騎士筆頭を務める程の男であり、宰相の座を兼任してもそれほどおかしくない。

国の秩序を保つためならばシンは手段を選ばず、自分と同じ一族であるシャドウの協力の元、今回の計画を実行した。


「バッシュ王子は非常に惜しかった……もしも一日でも早くに王子が国王陛下に儂が謀反を企てていると報告すれば、儂等の計画は破綻していたであろう」
『儂等の計画、か……だが、その時はその時であんたも手を打ってたんだろう?』
「無論、その時はもう一つの計画を実行していたがな」


シャドウの言葉にシンは笑みを浮かべ、シンはありとあらゆる事態に備え、用心深く複数の計画を練っていた。


「……それよりも、いつまでそんな物を身に付けておる。その状態では酒も飲む事もできんだろう、ここに人が来る事は絶対にない。今のお主は本体なのであろう?」
『分かるのか?』
「当たり前だ……儂等は実のなのだからな」
『……そうか』



――シャドウは黒仮面を外すと、ここで彼は初めて全身を包み込んでいた闇属性の魔力を消し去り、正体を現す。その顔はシンであるシンと全く同じ顔をしており、もしも来ている服が同じならば見分けがつかないほどであった。



シンとシャドウは実の兄弟であり、しかも双子として生まれた。だからこそ小さい時から容姿は瓜二つであり、実の家族でさえも彼等を見分ける事はできなかった。だが、片方は表の世界に生きていくのに対し、もう片方は裏の世界へと赴く。

表と裏の世界でそれぞれシンとシャドウは成り上がり、片方は国の宰相まで上り詰め、もう片方は裏社会を牛耳る闇ギルドさえも恐れる存在へと変貌した。そして今回の計画はお互いの強力があったからこそ実行できた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

神様、ちょっとチートがすぎませんか?

ななくさ ゆう
ファンタジー
【大きすぎるチートは呪いと紙一重だよっ!】 未熟な神さまの手違いで『常人の“200倍”』の力と魔力を持って産まれてしまった少年パド。 本当は『常人の“2倍”』くらいの力と魔力をもらって転生したはずなのにっ!!  おかげで、産まれたその日に家を壊しかけるわ、謎の『闇』が襲いかかってくるわ、教会に命を狙われるわ、王女様に勇者候補としてスカウトされるわ、もう大変!!  僕は『家族と楽しく平和に暮らせる普通の幸せ』を望んだだけなのに、どうしてこうなるの!?  ◇◆◇◆◇◆◇◆◇  ――前世で大人になれなかった少年は、新たな世界で幸せを求める。  しかし、『幸せになりたい』という夢をかなえるの難しさを、彼はまだ知らない。  自分自身の幸せを追い求める少年は、やがて世界に幸せをもたらす『勇者』となる――  ◇◆◇◆◇◆◇◆◇ 本文中&表紙のイラストはへるにゃー様よりご提供戴いたものです(掲載許可済)。 へるにゃー様のHP:http://syakewokuwaeta.bake-neko.net/ --------------- ※カクヨムとなろうにも投稿しています

【完結】おじいちゃんは元勇者

三園 七詩
ファンタジー
元勇者のおじいさんに拾われた子供の話… 親に捨てられ、周りからも見放され生きる事をあきらめた子供の前に国から追放された元勇者のおじいさんが現れる。 エイトを息子のように可愛がり…いつしか子供は強くなり過ぎてしまっていた…

無能と言われた召喚士は実家から追放されたが、別の属性があるのでどうでもいいです

竹桜
ファンタジー
 無能と呼ばれた召喚士は王立学園を卒業と同時に実家を追放され、絶縁された。  だが、その無能と呼ばれた召喚士は別の力を持っていたのだ。  その力を使用し、無能と呼ばれた召喚士は歌姫と魔物研究者を守っていく。

俺が死んでから始まる物語

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていたポーター(荷物運び)のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもないことは自分でも解っていた。 だが、それでもセレスはパーティに残りたかったので土下座までしてリヒトに情けなくもしがみついた。 余りにしつこいセレスに頭に来たリヒトはつい剣の柄でセレスを殴った…そして、セレスは亡くなった。 そこからこの話は始まる。 セレスには誰にも言った事が無い『秘密』があり、その秘密のせいで、死ぬことは怖く無かった…死から始まるファンタジー此処に開幕

帰って来た勇者、現代の世界を引っ掻きまわす

黄昏人
ファンタジー
ハヤトは15歳、中学3年生の時に異世界に召喚され、7年の苦労の後、22歳にて魔族と魔王を滅ぼして日本に帰還した。帰還の際には、莫大な財宝を持たされ、さらに身につけた魔法を始めとする能力も保持できたが、マナの濃度の低い地球における能力は限定的なものであった。しかし、それでも圧倒的な体力と戦闘能力、限定的とは言え魔法能力は現代日本を、いや世界を大きく動かすのであった。 4年前に書いたものをリライトして載せてみます。

不遇な死を迎えた召喚勇者、二度目の人生では魔王退治をスルーして、元の世界で気ままに生きる

六志麻あさ
ファンタジー
異世界に召喚され、魔王を倒して世界を救った少年、夏瀬彼方(なつせ・かなた)。 強大な力を持つ彼方を恐れた異世界の人々は、彼を追い立てる。彼方は不遇のうちに数十年を過ごし、老人となって死のうとしていた。 死の直前、現れた女神によって、彼方は二度目の人生を与えられる。異世界で得たチートはそのままに、現実世界の高校生として人生をやり直す彼方。 再び魔王に襲われる異世界を見捨て、彼方は勇者としてのチート能力を存分に使い、快適な生活を始める──。 ※小説家になろうからの転載です。なろう版の方が先行しています。 ※HOTランキング最高4位まで上がりました。ありがとうございます!

エリクサーは不老不死の薬ではありません。~完成したエリクサーのせいで追放されましたが、隣国で色々助けてたら聖人に……ただの草使いですよ~

シロ鼬
ファンタジー
エリクサー……それは生命あるものすべてを癒し、治す薬――そう、それだけだ。 主人公、リッツはスキル『草』と持ち前の知識でついにエリクサーを完成させるが、なぜか王様に偽物と判断されてしまう。 追放され行く当てもなくなったリッツは、とりあえず大好きな草を集めていると怪我をした神獣の子に出会う。 さらには倒れた少女と出会い、疫病が発生したという隣国へ向かった。 疫病? これ飲めば治りますよ? これは自前の薬とエリクサーを使い、聖人と呼ばれてしまった男の物語。

能力『ゴミ箱』と言われ追放された僕はゴミ捨て町から自由に暮らすことにしました

御峰。
ファンタジー
十歳の時、貰えるギフトで能力『ゴミ箱』を授かったので、名門ハイリンス家から追放された僕は、ゴミの集まる町、ヴァレンに捨てられる。 でも本当に良かった!毎日勉強ばっかだった家より、このヴァレン町で僕は自由に生きるんだ! これは、ゴミ扱いされる能力を授かった僕が、ゴミ捨て町から幸せを掴む為、成り上がる物語だ――――。

処理中です...