貧弱の英雄

カタナヅキ

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王国の闇

第759話 闘技場に待ち構える存在

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「よし、到着……皆はまだ来てないか」


ナイは地上へ降り立ち、まだ他の皆は来ていない事を確認する。クロとコクならばナイの臭いを嗅ぎついて後から追いかけてくると判断し、先にナイは闘技場の様子を伺う。

アルトの予想ではここに他の人間が閉じ込められているのであれば警備が厳重なはずだが、予想に反して闘技場の周囲は人気がなく、兵士や騎士の一人も見当たらない。建物の中に隠れているとしても様子がおかしかった。


(……何か嫌な予感がする)


闘技場というよりも工場区その物の様子がおかしく、区内の至る場所にある鍛冶屋を伺うと、荒されたような痕跡が残っていた。途中でハマーンの店も立ち寄ってみるが、こちらの店が一番荒されており、武器や防具が盗まれた痕跡が残っていた。


(ひどい、火事場泥棒にでもあったのかな……ん?この足跡は何だ?)


混乱に乗じて悪党が店を荒らしたのかと思ったが、店内に明らかに人間ではない生き物の足跡も残っており、念のために「観察眼」で調べてみるとそれは魔物の足跡だと見抜く。

よくよく観察するとハマーンの店だけではなく、闘技場の周囲には大量の魔物の足跡が残っていた。この事から闘技場内から魔物が脱出したという話は本当だが、荒されている店を見てナイは嫌な予感を浮かべる。


「まさか、この店を荒したのは……魔物の仕業か?」


魔物の中にはゴブリンのような知恵が回る存在は人間の武器を奪う事はよくある事だった。しかし、闘技場に捕まっていた魔物が抜け出し、更に工場区中の武器や防具を奪ったとなると、大変な事態に陥る可能性が高い。

ハマーンの店から出ようとした時、ナイは「気配感知」を発動すると店の外から大量の魔物の気配を感じ取る。外へ抜け出すと、大量のゴブリンとオークの集団が待ち構え、しかも全員が上等な武器や防具を身に付けた状態で待ち構えていた。


「「「ギィイイイッ!!」」」
「「「プギィイイイッ!!」」」
「こいつら……待ち伏せしてたのか?」


ナイは自分が訪れた途端に現れた魔物達に疑問を抱き、とりあえずは旋斧と岩砕剣に手を伸ばすと、不意に何処かで聞きなれた声が響く。


「あはははっ!!誰かと思ったら、あの時のお兄さんじゃない?」
「この声は……まさか!?」


声のした方に振り返ると、そこには少年のような外見をした子供がハマーンの店の屋根の上に座っていた。その背中には蝙蝠を想像させる羽根が生えており、以前に白猫亭に乗り込んだ吸血鬼で間違いなかった。

子供のような容姿をしているが、この吸血鬼はナイよりも遥かに長く生きており、事件の後は拘束されてアッシュ公爵が管理する闘技場で他の魔物と一緒に管理されているはずだった。しかし、少年の姿をした吸血鬼はナイの姿を見ると、笑みを浮かべる。


「お兄さんに出会えて嬉しいな……これで僕も復讐が出来るよ。新しいお人形さんもいっぱい手に入ったし、今度こそお兄さんを僕の奴隷にしてあげるよ!!」
「新しい人形?まさか……こいつらの事か?」


少年の言葉にナイは驚いた様子で魔物達に振り返り、この魔物達は吸血鬼が操っているのかと思ったが、その言葉に対して吸血鬼は首を振った。


「違う違う、そいつらは僕の人形じゃないよ。そいつらを指示する奴が僕の人形さんだよ……でも、そうだな。お兄さんが僕の人形を壊す可能性もあるし、少しでも体力を削って貰おうかな。お前達、やれ!!」
「「「ギィイイイッ!!」」」
「「「プギィイイイッ!!」」」


少年の言葉に魔物達は反応し、一気にナイに目掛けて駆け出す。その様子を見てナイはため息を吐きながら背中の二振りの大剣を抜く。

闘技場の魔物達は工場区中に存在する鍛冶屋から武器や防具を奪い、その中には魔法金属製の鎧や盾も装備した個体もいた。野生の魔物と戦うよりも厄介だと思われたが、そんな敵に対してナイは全力で旋斧と岩砕剣を振りかざす。


「はぁあああっ!!」
「「「ギィアアアアッ!?」」」
「「「プギャアアアッ!?」」」
「……あ、あれ?」


ナイが両手の大剣を振りかざした瞬間、ゴブリンとオークは薙ぎ払われ、派手に吹き飛ぶ。その光景を見ていた吸血鬼は呆気に取られ、一方でナイは両手の大剣を勢いよく振りかざす。


「でりゃあっ!!」
「ギャウッ!?」
「ふんっ!!」
「プギィイイッ!?」
「ちょ、ちょっと……ふざけている場合じゃないだろ、早く取り押さえなよ!!何をしてんの!?」


大剣が振り払われる度に数匹の魔物が吹き飛び、全く相手にならなかった。その光景を見ていた吸血鬼も流石に黙っていられずに怒鳴りつけるが、圧倒的な戦力差によって魔物達は蹴散らされる。

闘技場内にて管理されていたオークやゴブリンではナイと圧倒的な力の差が存在し、戦闘が開始してから数十秒程度で100体近くのオークとゴブリンの大群は蹴散らされた。その様子を見ていた吸血鬼は顔色を青ざめ、一方でナイの方は物足りない気分だった。
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