貧弱の英雄

カタナヅキ

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王国の闇

第774.5話 ギガンの苦悩、猛虎騎士団の接近

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――王都の各地にてナイ達が白面や魔物と争う中、冒険者ギルドの方にも市街地に魔物や白面が現れたという報告は届いていた。しかし、彼等の前に警備兵が立ちふさがり、冒険者達がギルドの敷地内から出ていくことを認めない。


「おい、退けよ!!何であんたらが邪魔をするんだ!?」
「静まれ!!の命により、王都内の全ての冒険者はギルド内へ待機を命じる!!これは王命であるぞ!?」
「な、何だと……!?」


警備兵達は書状を取り出し、その書状には間違いなく王家の印が記されていた。それを見せつけられては冒険者達は何も出来ず、王命に逆らった人間は例外なく死刑となる。

しかし、冒険者達からすれば街を守るはずの警備兵が自分達を閉じ込めるかのように出現し、しかも白面や魔物が市街地に現れた事は彼等も知っているはずなのに動こうとしない。この現状にギルドマスターのギガンは不満を抱き、警備兵に怒鳴りつけた。


「これは何の真似だ!!城下町の住民が危険に晒されているというのに俺達をここへ閉じ込めるつもりか!?」
「ひいっ!?」
「だ、黙れ!!これは王命だぞ、逆らえばお前の命だけではなく、この場に存在する冒険者全員がどうなるか分かっているのか!?」


警備兵はギガンの気迫に押されそうになるが、彼等も王命を伝える様に言い渡された以上は退く事は出来ず、書状を見せつける。

この書状は当然だが宰相が用意した代物であり、意識不明の状態の国王がこんな命令を下すはずがない。だが、書状を見せつけられては冒険者は動く事が出来ない。


(くそっ……いったい、何が起きている!!何だ、この嫌な胸騒ぎは……!!)


ギガンも現在の王都は危機的状況に陥っている事は理解しているが、彼の直感だがこれからとんでもない事態が王都に襲い掛かるような気がした。今朝から彼は胸騒ぎを覚え、この王都に恐るべき事件が起きるような気がした。


「白面と魔物の対処は我々が行う!!お前達冒険者はギルドにて待機しろ、これは王命だぞ!!」
「ふざけるな!!ここでじっとしているというのか!?俺達の家族が今正に危険な目に遭わされているのかもしれないんだぞ!?」
「そうだそうだ!!」
「どうして俺達が出向いたらいけないんだ!!」
「じょ、城下町の治安は我々が守る!!だからお前達は大人しくしろ、言っておくが一人でも逆らえば容赦はせんぞ!?」


冒険者ギルドは商業区に存在し、彼等を取り囲んでいるのは商業区の警備兵を纏める警備隊長であった。彼は国王からの書状を見せつけ、その場を部下に任せて離れようとした。その姿にギガンは違和感を覚え、まるで逃げる様に立ち去ろうとする彼に疑問を抱く。


「畜生、国王様は何を考えている!?そんなに俺達が信用できないのか!?」
「まあまあ、仕方ないだろ……ここは大人しくするしかないぜ」
「そうだな、怪我した奴等の世話もしないとな……」
「はあっ!?本気で言っているのか!?」


冒険者達の中にも王命に不満を抱く者は多いが、反面に命令に従おうと促す冒険者もちらほらと見られた。そんな彼等を見てギガンは更に違和感を抱き、彼はギルドの職員にも視線を向けた。

ギガンが振り返ると職員の中には何人かが険しい表情を浮かべながら顔を伏せ、あからさまに態度がおかしかった。その事にギガンは冒険者ギルド内に何者かと繋がる人間達がいる事に気付き、焦りを抱く。


(これはいったい……何が起きている!?)


既に宰相の手は冒険者ギルドにも伸びており、職員や冒険者の中には彼に従う者も多数存在した。その事にギガンは気付き始めるが、既に時は遅かった――





「――ドルトン、これからどうするんだ?城門は開きっぱなしだが、俺達は中に入るのはまずいんだろう?」
「うむ、ナイ達の事は心配だが……この状況では王都に入る事は無理じゃろう」


ナイ達に仙薬を渡した後、ドルトンとイーシャンは王都の前に馬車を停車させて待ち構えていた。未だに城門は開け開かれており、アルトを人質にしたクノが城壁の兵士達の注意を引いている事は間違いなかった。

クノとアルトの役目はナイ達を王都に戻す事であり、その後は城壁の兵士が市中に移動しない様に一人でも多く引き付ける。しかし、いくら王子を人質に取っていると言っても何時までも兵士達が大人しくしているかは分からない。


「俺達に出来る事はないのか……ヨウの予知夢も気になるしな」
「うむ、だが予知夢の最後はヨウもはっきりと覚えてはおらんそうだ。前の時のように外れてくれればいいのだが……」
「くそっ、こんな事ならもっと薬を作っておけば……うおっ!?」
「な、なんじゃっ!?」


草原内に轟音が鳴り響き、驚いた二人は振り返ると、遠方の方で火の玉のような物が撃ち上がっている事に気付く。それを見た二人は何事かと思い、ここでドルトンは双眼鏡を取り出す。


「あれはいったい……」
「おい、何が見えるんだ!?」
「ええい、急かすな……駄目じゃ、儂の老眼では見えん」
「ああ、もう貸しやがれ!!」


イーシャンはドルトンから双眼鏡を受け取ると、彼の代わりに火の玉が上がった咆哮に双眼鏡を向ける。すると、かなり離れた場所に存在するが、王都へ向けて接近する軍隊を確認する。

一千は軽く超える数の騎馬隊が王都へ向けて近付いており、その旗を見たイーシャンは度肝を抜く。その旗の紋様は「虎」の顔が記されており、この国の北部に存在する国境の守護を任されているはずの「猛虎騎士団」が王都に接近している事に気付く。


「あ、あれは猛虎騎士団だ!!猛虎騎士団の旗を翳してやがる!!」
「馬鹿な……猛虎騎士団は国境の警備のために王都から離れていると聞いておったが……!?」
「嘘じゃねえっ!!しかも、す、凄い数だ……いったいどれだけいるんだ!?」


王都に向けて接近する猛虎騎士団の姿を見てドルトンとイーシャンは嫌な予感を浮かべ、この場に留まるのはまずい気がした。二人は急いでここを離れる必要があると判断し、商団に声をかけた。


「おい、こっちに猛虎騎士団が近付いている!!なんだかやばい雰囲気だ、離れた方がいいぞ!!」
「えっ!?騎士団が!?」
「そんな馬鹿なっ……」
「言い争っている場合ではない!!早く退けっ!!」
「は、はい!!」


ドルトンの言葉に商団の人間達は慌てて従い、一方でイーシャンの方は双眼鏡で猛虎騎士団の姿を確認し、何が起きているのかと冷や汗を流す。


(先頭を移動しているのが猛虎騎士団の団長か……なっ!?)


騎馬隊の戦闘を移動する騎士の姿を見てイーシャンは愕然とした表情を浮かべ、戦闘を走っている騎士はあろうことか「漆黒の鎧」を纏っていた――
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