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王国の闇
第776話 裏切り者
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「……よう」
「どうも、こんな公の場で顔を合わせるのは久しぶりに感じますね~」
「お前達……」
「見ての通りじゃ……この二人はもうお主の味方ではない」
現れたイリアとイシの姿を見てシンは震え、そんな彼に対してマホは語り掛ける。体調を取り戻しているマホを見た時点でシンは全てを悟っていた。
「あの薬を渡したのか!?」
「ええ、一度作り出せば後は簡単なもんですよ」
「よく言うぜ……俺まで手伝わされたぞ」
「だが、お陰で助かったぞ……万全とは程遠いが、これならば十分に儂も戦えるであろう」
マホが回復した理由はイリアとイシが作り出した「魔力回復薬改」のお陰であり、この二人が作り出した薬を飲んだ事でマホは回復を果たす。
ある人物の「呪い」によってマホは自力で魔力を回復させる機能が殆ど失われており、市販の魔力回復薬程度では碌に魔力を取り戻す事もできなかった。だが、イリアが考案して作り出した特製の薬ならばマホの魔力を完全までとはいわないが多少は回復させる事ができた。
この日のためにイリアはイシを巻き込んで薬を貯め込み、それを飲んだマホは完全回復までにはいかないが、それでも戦えるだけの魔力を取り戻す。シンはイリアとイシがマホに繋がっていたなど気付かず、自分が嵌められた事に気付く。
「いったい何時からだ……どっちが先に裏切った?」
「裏切った?宰相、何の話を……」
「お主等は下がっておれ。宰相とは儂等が話す」
シンの言葉に周囲の者達は戸惑うが、そんな彼等をマホは下がるように命じると、シンは改めてイリアとイシに顔を向けた。イシの方は罰が悪そうな表情を浮かべるが、イリアの方は飄々とした態度を貫く。
「い、言っておくが俺はさっきまでは何も知らされていなかった……だが、あんたに仕えるのはもう懲り懲りなんだよ」
「儂と繋がっておったのはイリアじゃ。いや、正確に言えばイリアは最初からお主の味方ではない。この計画を考えたのも彼女じゃ、つまりは儂の方が協力者という事になるな」
「そういう事ですね」
「なっ……!?」
マホの隣にイリアは移動すると、彼女はマホの肩に手を置いて笑みを浮かべる。実を言えばイリアの方がシンを嵌めるための計画を練り、それをマホに明かして彼女に協力してもらった。
――シンに仕えていたイリアは彼のお陰で「魔導士」としての地位を与えられ、自分が自由に研究できる権利を得た。元々は優秀な薬師だったイリアは師匠であるイシと共にシンの指示に従い、裏で白面を操るための毒薬などを生成していた。
しかし、人の命を救うはずの医者や薬師が人を殺すための毒薬を作り続ける事にイシは精神的に追い詰められ、イリアとしても良い気分はしない。最も前者の場合は良心の呵責だが、後者の場合は自由に研究させるという条件なのに実際にはシンの命令を従わなければならない日々に嫌気を覚える。
イリアはこのままシンの命令を聞いて生き続けるよりも、彼を出し抜く方法を考える。そして彼女が目を付けたのはナイであり、シンは最初はナイを始末するように命じた。
ナイは他の王族とも交友があり、将来的には彼等の誰かに仕えるかもしれない。しかし、世間的には「忌み子」である彼を受け入れた場合、今後は忌み子として扱われていた子供達の対応を改めなければならない。
王国では古の時代から忌み子が生まれたら陽光教会の方で隔離させ、教会の人間に育てる政策を行ってきた。しかし、その忌み子であるナイが活躍し、注目を浴びれば浴びる程に忌み子の見方が変わる。実際に王都に訪れてからナイは一年も経過しない内に功績を立て続け、有名な存在になりつつあった。
シンとしては忌み子である彼を受け入れた場合、これまで行ってきた国の政策が間違っていた事を認める事態に陥るかもしれない。そうなった場合は国の混乱はどれほど大きくなるのか分からず、そんな事態を引き起こしてしまったら他国に大きな隙を与えてしまう。
他国でも忌み子の扱い方は慎重ではあるが、王国ほどに具体的な政策は取り行っていない。しかし、王国の場合はもう何百年も前から忌み子は普通の人間の生活を許されず、隔離されて育てられている。
それにも関わらずに忌み子であるナイを王族が招き入れ、しかも王国騎士などの称号を与える事になれば国の政策を真っ向から否定する事になる。そうすれば他国からも非難を受ける可能性もあり、宰相としてシンはナイの存在をこれ以上は放置できなかった。
これまではシンがナイに直接手を出せなかった理由、それは彼の功績があまりにも大きく、大勢の人間と関わりを持ち過ぎた。アルト王子に気に入られ、バッシュ王子も彼を認めており、しかもアッシュ公爵家やフレア公爵家(ドリス)からは貴族のメダルまで送り込まれている。
この状況でナイを罠に嵌めて彼を犯罪者にでも仕立て上げて処刑でもしようものなら大勢の人間に怪しまれ、必ずやナイを救い出そうとする者が現れる。そのためにシンはナイに直接手出しはできなかった。しかし、それはあくまでも今現在の話であり、彼は過去にナイを始末できる好機はあった。
「どうも、こんな公の場で顔を合わせるのは久しぶりに感じますね~」
「お前達……」
「見ての通りじゃ……この二人はもうお主の味方ではない」
現れたイリアとイシの姿を見てシンは震え、そんな彼に対してマホは語り掛ける。体調を取り戻しているマホを見た時点でシンは全てを悟っていた。
「あの薬を渡したのか!?」
「ええ、一度作り出せば後は簡単なもんですよ」
「よく言うぜ……俺まで手伝わされたぞ」
「だが、お陰で助かったぞ……万全とは程遠いが、これならば十分に儂も戦えるであろう」
マホが回復した理由はイリアとイシが作り出した「魔力回復薬改」のお陰であり、この二人が作り出した薬を飲んだ事でマホは回復を果たす。
ある人物の「呪い」によってマホは自力で魔力を回復させる機能が殆ど失われており、市販の魔力回復薬程度では碌に魔力を取り戻す事もできなかった。だが、イリアが考案して作り出した特製の薬ならばマホの魔力を完全までとはいわないが多少は回復させる事ができた。
この日のためにイリアはイシを巻き込んで薬を貯め込み、それを飲んだマホは完全回復までにはいかないが、それでも戦えるだけの魔力を取り戻す。シンはイリアとイシがマホに繋がっていたなど気付かず、自分が嵌められた事に気付く。
「いったい何時からだ……どっちが先に裏切った?」
「裏切った?宰相、何の話を……」
「お主等は下がっておれ。宰相とは儂等が話す」
シンの言葉に周囲の者達は戸惑うが、そんな彼等をマホは下がるように命じると、シンは改めてイリアとイシに顔を向けた。イシの方は罰が悪そうな表情を浮かべるが、イリアの方は飄々とした態度を貫く。
「い、言っておくが俺はさっきまでは何も知らされていなかった……だが、あんたに仕えるのはもう懲り懲りなんだよ」
「儂と繋がっておったのはイリアじゃ。いや、正確に言えばイリアは最初からお主の味方ではない。この計画を考えたのも彼女じゃ、つまりは儂の方が協力者という事になるな」
「そういう事ですね」
「なっ……!?」
マホの隣にイリアは移動すると、彼女はマホの肩に手を置いて笑みを浮かべる。実を言えばイリアの方がシンを嵌めるための計画を練り、それをマホに明かして彼女に協力してもらった。
――シンに仕えていたイリアは彼のお陰で「魔導士」としての地位を与えられ、自分が自由に研究できる権利を得た。元々は優秀な薬師だったイリアは師匠であるイシと共にシンの指示に従い、裏で白面を操るための毒薬などを生成していた。
しかし、人の命を救うはずの医者や薬師が人を殺すための毒薬を作り続ける事にイシは精神的に追い詰められ、イリアとしても良い気分はしない。最も前者の場合は良心の呵責だが、後者の場合は自由に研究させるという条件なのに実際にはシンの命令を従わなければならない日々に嫌気を覚える。
イリアはこのままシンの命令を聞いて生き続けるよりも、彼を出し抜く方法を考える。そして彼女が目を付けたのはナイであり、シンは最初はナイを始末するように命じた。
ナイは他の王族とも交友があり、将来的には彼等の誰かに仕えるかもしれない。しかし、世間的には「忌み子」である彼を受け入れた場合、今後は忌み子として扱われていた子供達の対応を改めなければならない。
王国では古の時代から忌み子が生まれたら陽光教会の方で隔離させ、教会の人間に育てる政策を行ってきた。しかし、その忌み子であるナイが活躍し、注目を浴びれば浴びる程に忌み子の見方が変わる。実際に王都に訪れてからナイは一年も経過しない内に功績を立て続け、有名な存在になりつつあった。
シンとしては忌み子である彼を受け入れた場合、これまで行ってきた国の政策が間違っていた事を認める事態に陥るかもしれない。そうなった場合は国の混乱はどれほど大きくなるのか分からず、そんな事態を引き起こしてしまったら他国に大きな隙を与えてしまう。
他国でも忌み子の扱い方は慎重ではあるが、王国ほどに具体的な政策は取り行っていない。しかし、王国の場合はもう何百年も前から忌み子は普通の人間の生活を許されず、隔離されて育てられている。
それにも関わらずに忌み子であるナイを王族が招き入れ、しかも王国騎士などの称号を与える事になれば国の政策を真っ向から否定する事になる。そうすれば他国からも非難を受ける可能性もあり、宰相としてシンはナイの存在をこれ以上は放置できなかった。
これまではシンがナイに直接手を出せなかった理由、それは彼の功績があまりにも大きく、大勢の人間と関わりを持ち過ぎた。アルト王子に気に入られ、バッシュ王子も彼を認めており、しかもアッシュ公爵家やフレア公爵家(ドリス)からは貴族のメダルまで送り込まれている。
この状況でナイを罠に嵌めて彼を犯罪者にでも仕立て上げて処刑でもしようものなら大勢の人間に怪しまれ、必ずやナイを救い出そうとする者が現れる。そのためにシンはナイに直接手出しはできなかった。しかし、それはあくまでも今現在の話であり、彼は過去にナイを始末できる好機はあった。
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