貧弱の英雄

カタナヅキ

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王国の闇

第786話 進化し続ける魔剣

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――伝説の鍛冶師フクツが一番最初に作り上げた魔剣「旋斧」製作者のフクツは旋斧を作り上げた事をだと嘆いた。

理由としてはこの旋斧が制作された理由はとある剣士の願いを聞き入れ、絶対に壊れない魔剣の制作を彼は依頼された。その剣士は生まれた時から腕力に秀でており、その癖に雑に剣を扱うので大抵の武器は簡単に壊れてしまう。

当時のフクツは彼の願いを叶えるだけの魔剣を作り出す事ができず、結局は敵を倒す度に相手の生命力を奪い、自己修復を行う魔剣を作り出す。斧と剣が合わさったよう歪な形状の武器にしたのはフクツの依頼者からの要求であり、フクツはそれを受け入れる。

その後、フクツが作り出した「旋斧」は依頼者は満足したが、フクツはこの時にわだかまりを覚える。依頼者の希望通りに旋斧はいくら乱暴に使っても壊れる事はなく、依頼者は文句はなかった。しかし、製作者のフクツ本人はどうしても納得できなかった。



時は流れ、フクツは何者にも壊さぬ魔剣を作り出す事に専念し、遂には「岩砕剣」という自信作を作り出す。この魔剣ならばどんな事があろうと破壊されないという絶対の自信を抱き、彼は旋斧を受け取った依頼者を探し出そうとしたが、彼の家族から依頼者は死んだという話を聞いて衝撃を受けた。

それ以降、フクツは決して魔剣を作る事はなかった。理由としては自分の初めての依頼人に対し、彼は納得のいかない武器を手渡した事に酷く後悔する。もしも依頼人に渡したのが旋斧ではなく、岩砕剣だったならば彼もここまでは後悔しなかっただろう。

自分が初めて作り出した魔剣にも関わらず、フクツは旋斧を作り出した事に恥を抱く。しかし、彼の死後に旋斧は様々な人間の元にいきわたり、徐々に変化し始めていた。

フクツは旋斧は最初は他者の生命力を吸収させて刃を自己修復させるだけの機能を取り付けたつもりだった。しかし、倒した敵が強靭な生命力を持つ場合、旋斧は刃の修復だけではなく、刃その物がより固く、より大きく、より重く変化していく。



――旋斧はフクツの元に離れた事で様々な人間の手に渡り、世代ごとに「進化」を繰り返し、そして今の時代に最高の主人と巡り合う。それはまだ少年だが、圧倒的な力の差がある存在を前にしても決して怯まず、果敢に挑む勇敢な子だった。



その子供の義理の父親ですら手を余らせた魔剣だったが、旋斧が強敵を倒す度に成長するように少年の方も死線を乗り越えて強さを増し、遂には最強の大剣へと変化するまでに至る。

赤毛熊、ミノタウロス、火竜、ゴーレムキング、ゴブリンキングといった強敵との戦闘を経て旋斧は強化され、更にリザードマンの力を取り込んだゴブリンキラーを倒した時に旋斧は岩砕剣をも上回る大きさへと変化を果たす。

膨大な生命力を糧にして成長を続けた旋斧はフクツの思惑とは離れた魔剣へと進化したが、それでも彼の魔剣は多くの人間を救った事は事実だった。その力はもう魔剣の領域を超えかけている事は誰も知らない――





――旋斧の所有者であるナイは夢を見ていた。その夢は綺麗な花畑にナイはアルとゴマンと共に座り込み、二人の間に座る形で色々と語り掛ける。


「それでね、その時は本当に死ぬかと思ったよ」
「はあっ……そいつはたまげたな」
「全く、お前は相変わらずだな……」
「うん……」


ナイはこれまでに自分が体験した出来事を二人に話すと、ゴマンとアルは驚いた様な呆れた表情を浮かべて話を聞いてくれる。久々に出会えた二人に対してナイは嬉しく思い、色々と話す。

しかし、二人が死んだ後の出来事も話し終えると、ナイはアルとゴマンに対して黙り込み、そんな彼に二人は黙って肩に手を伸ばす。


「お前が元気そうで何よりだ」
「僕の渡した盾、大切にしてくれてるんだな」
「……うん」


二人の言葉にナイは頷き、目元に涙を流す。ナイはもう理解していた、これが夢である事を。それでもこの二人とまた出会えた事にナイは喜び、もっと二人と一緒に話したかった。


「さあ、もういいだろう……そろそろお別れだな」
「僕の盾、大切にしろよ」
「爺ちゃん……ゴマン……」


しかし、二人は立ち上がると彼等は最後にナイに笑みを浮かべ、アルは彼の頭を撫でるとゴマンはナイと拳を合わせる。そして二人は歩み出し、徐々に姿が小さくなっていく。

ナイは声を掛けようとしたり、手を伸ばそうとしたが、いつの間にかナイの身体が薄れて声を出す事が出来なかった。それでもナイは必死に二人の後を追いかけようとしたが、次の瞬間には意識が覚醒して現実世界へと引き返していた――





――その頃、王都の城壁の上にてアルトとクノは草原を移動する総勢三千は存在する騎馬隊を確認し、冷や汗を流す。その光景は他の兵士達も確認し、唖然としていた。


「も、猛虎騎士団だ……間違いない」
「ど、どうしてここに!?猛虎騎士団が戻ってくるという報告は受けていないぞ!!」
「いったい何が起きてるんだ!?」


先ほどまでは盗賊(クノ)からアルトを救出するために兵士達は集中していたが、突如として王都に迫る「虎」の旗を掲げる騎馬隊を見て混乱に陥る。その一方でアルトは猛虎騎士団を見て冷や汗を流し、最悪の事実を思い出す。


「まさか……宰相か」
「え?どういう意味でござる?」
「猛虎騎士団の団長ロランは……宰相の息子だ」
「なんと!?」


クノはアルトの言葉に驚愕し、その一方でアルトは猛虎騎士団が戻ってきた事に対して考え込む。ロランは宰相の実の息子であり、その彼がこの状況下で騎士団を率いて戻ってきた事に動揺する。

猛虎騎士団の目的の意図が分からず、少なくとも確かめる必要があった。アルトはクノに視線を向け、彼女に頼みごとを行う。


「僕は猛虎騎士団の様子を探りに行く。君はその間、他の人間に知らせるんだ」
「えっ!?いや、しかし……」
「僕の事は大丈夫だ、王子である僕を殺す様な愚か者はいない……頼んだよ!!」
「ぬあっ!?」


クノの返事を聞く前にアルトは彼女から離れると兵士達の元に駆け込む。その途端、アルトが解放された事に気付いた兵士達は慌てて彼を保護すると、クノに武器を構えた。


「王子を救出したぞ!!今の内だ、捕まえろ!!」
「はわわっ!?」
「……すまない」


クノは兵士に取り囲まれる前に逃げ出し、その様子を見てアルトは申し訳なさそうな表情を浮かべるが、ここは彼女を信じてアルトは猛虎騎士団を探るため、その場を離れた――
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