貧弱の英雄

カタナヅキ

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嵐の前の静けさ

第983話 猛虎騎士団の力

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双紅刃で打ち砕かれたマグマゴーレムは木端微塵に吹き飛び、飛び散った溶岩は双紅刃から発せられる重力によって弾かれ、ロランの身体には当たらない。

ロランの「双紅刃」は刃に地属性の魔力を付与させる事で重力を自在に操り、刃の重量を増加させるのではなく、刃の周りの空間に重力の膜のような物を作り出す。この膜に触れると重力で押し返され、その力を利用してロランはマグマゴーレムを破壊しても飛び散った溶岩ごと吹き飛ばす。性質は旋斧の魔法剣と似通っているが、出力に大きな差があった。


「全員、火傷したくなければ俺の傍に近寄るな!!」
「「「はっ!!」」」


彼に従う直属の騎士達は歴戦の猛者ばかりであり、王国を守護する「猛虎騎士団」はかつては王妃が率いていた聖女騎士団と双璧を成していた。ロランが捕まった後は騎士団は解散されてしまったが、彼が復帰した際に猛虎騎士団の団員も再集結された。

猛虎騎士団の団員の殆どは40代から50代で形成されているが、長年の間国境を守り続けてきた猛者たちばかりである。彼等とロランとは数十年来の付き合いであり、戦闘の際は彼が戦いやすいように他の騎士達も動く。


「ゴオオオッ!!」
「ゴアアッ!!」
「大盾部隊!!ロラン様を守れ!!」
「ロラン様にばかり苦労させるな!!」


大盾を構えた騎士達が駆けつけ、迫りくるマグマゴーレムを押し止めようとした。しかし、大盾で防ごうとしても相手は溶岩で構成された巨人であり、大盾に触れただけで熱伝導を引き起こし、大盾を構える騎士達は苦悶の表情を浮かべる。


「ぐううっ!?」
「うぐぅっ!?」
「危ない!!下がって!!」
「いや、手を出すな!!」


大盾を構える騎士達にマグマゴーレムが迫り、金属製の盾に熱が宿って騎士達の身体を焼く。それを見たナイは彼等を救おうとしたが、それを止めたのはロランだった。

バッシュの「防魔の盾」とは違い、猛虎騎士団の騎士達が所持する大盾はミスリルと鋼鉄の合金である。魔法金属であるが故に簡単に溶ける事はないが、それでも加熱した大盾を支えるせいで腕が焼かれてしまう。しかし、彼等は意地でも大盾を手放さず、それどころか逆に他の者たちが駆けつけて彼等を後ろから支えた。


「行くぞぉおおっ!!」
「押し返せぇっ!!」
「「ゴアッ……!?」」


大盾を掴んだマグマゴーレム達に対して騎士達は数で押し返し、逆にマグマゴーレムを後方へ追い込む。その間にロランは双紅刃を回転させて刃に宿す魔力を高め、騎士達に合図を出す。


「十分だ、下がれ!!」
「「「はっ!!」」」


騎士達はロランの指示に従って左右に分かれると、マグマゴーレム達は何時の間にか一か所に集まっていた。大盾越しに押し返した騎士達がマグマゴーレムを誘導していたらしく、そこに目掛けてロランは突っ込む。


「地裂!!」
「「「ゴアアアアッ!?」」」


ロランが地面に目掛けて双紅刃を叩き込んだ瞬間、地割れが発生してマグマゴーレムを飲み込む。地面が崩れて誕生した亀裂にマグマゴーレムは落ちていくと、ロランは続けて双紅刃を振りかざす。


「くたばれっ!!」
「全員、伏せろ!!」
「「「ッ――!?」」」


双紅刃を振りかざしたロランを見てバッシュは皆に指示を出すと、投げ放たれた双紅刃が地割れの中に突っ込み、凄まじい衝撃波を放つ。そのあまりの威力に地割れに飲み込まれたマグマゴーレムは跡形もなく吹き飛び、この時に双紅刃も上空へ吹き飛ぶ。

上空へ吹っ飛んだ双紅刃に向けてロランは手を伸ばし、彼は一歩も動かずに自分の武器を回収する。ロランの魔剣は所有者の元に戻る性質を持ち合わせるらしく、ミイナの所持する「輪斧」と似通っていた。


「よし、ひとまずは倒したな。先を急ぐぞ!!」
「「「………」」」
「どうした?何を呆けている?」


何事もなかったように火山の頂上部へ向けて移動を再開したロランに全員が呆気に取られ、改めて彼等は大将軍ロランの実力を思い知らされる。


「す、凄い……ロラン大将軍、強い事は知っていたけどこんなに強かったなんて」
「いや、いくらなんでも強すぎる……監獄で閉じ込められている間も身体を鍛え続けたのか?」
『ふはははっ!!そういえば監獄に居た時はよく俺の相手をして貰ったぞ!!そのお陰で中々に楽しい囚人生活を送れた!!』


監獄に収監される前よりもロランは明らかに強くなっており、彼と共に収監されたゴウカによると囚人として過ごしていた間は二人は共に鍛錬をしていたらしい。

最強の冒険者であるゴウカとまともに相手をできるのはロランだけであり、この二人は監獄では同じ部屋で過ごしていた。そのせいでロランもゴウカの相手をする事が多く、彼が以前よりも力を身に付けた理由はゴウカを相手に毎日鍛錬していたからかもしれない。

ゴウカ以外にもナイに訓練を付けていたため、そのお陰もあってロランは全盛期の実力を完全に取り戻していた。


「ロラン大将軍殿!!上の方から新手が迫ってきているでござる!!」
「むっ……お前は確か、銀狼騎士団の者か?」


ロランは少女の声がした方向に振り返ると、そこには岩の上に立つクノの姿が存在した。彼女は目つきを細めて新手のマグマゴーレムが接近している事を伝える。


「数は……今度は54匹でござる!!」
「正確な数が分かるか?」
「拙者、目の良さなら誰にも負けないでござる!!」


迫りくるマグマゴーレムの正確な数と方向を伝えてきたクノに対し、ロランは彼女が視線を向ける方向に顔を向けた。確かに遠目でよく見えないが、接近してくるマグマゴーレムの集団が見えた。

クノの言う通りに先ほどの倍以上のマグマゴーレムが迫っており、それを確認したロランは感心する。自分よりも早くに敵に気付いたクノに彼は素直に褒めた。


「よく教えてくれた。下がっていろ、ここは俺が……」
「おっと待ちな!!大将軍ばかりに良い所を取らせないよ!!」
『その通りだ!!今度は俺達に戦わせろ!!』


ロランは接近する約50匹のマグマゴーレムに対して自分達の部隊で突っ込もうとしたが、その前に聖女騎士団の団長のテンが遮り、黄金級冒険者のゴウカも彼の肩を掴む。


「テン、ゴウカ……敵の数はさっきの倍以上だ。無理をするな」
「はんっ、何時までもガキ扱いは困るね……こっちはうちの部隊だけで十分なんだよ!!なあ、エルマ!?」
「む、無茶を言わないでください……」
「やれやれ、仕方ないのう……儂も手伝ってやろう」


テンの言葉に同行していたエルマは苦言を告げ、魔導士のマホも戦闘に加わろうとした。この二人はテンの部隊に配属されたが、マホの場合は極力は魔力の消費を抑える必要があったので先ほどの戦闘には参加しなかった。

頂上部にはマグマゴーレムの大群が潜んでいる可能性が高く、火口付近のマグマゴーレムを一掃するためにはマホの「広域魔法」が頼りだった。だからこそ不必要な戦闘を避ける必要はあったが、流石に50匹のマグマゴーレムと聞いて彼女も戦おうと杖を握りしめる。


『はっはっはっ!!先に行くぞ、早い者勝ちだ!!』
「あ、こら!?」
「ま、待ちなさい!!」
「馬鹿者!!一人で先走るな!!」


だが、ここまでの戦闘で自分の出番がなかったゴウカは我慢できずに駆け出し、1人で50匹以上のマグマゴーレムの相手をしようとした。それを見た他の者たちが止めようとした時、彼の後を追いかけるように駆け出す者達が居た。


「ゴウカさん、待ってください!!」
「ナイ君!!僕も行くよ!!」
『こら、おいてくなっ!!』
「お待ちなさい!!貴方達も危険ですわよ!?」
「ちっ、仕方ない!!後を追うぞ!!」


ゴウカの後を追うようにナイと他の黄金級冒険者も坂道を駆け上り、その後に黒狼騎士団と銀狼騎士団も続く。勝手に行動を始める部隊にロランは頭を悩ませるが、そんな彼の肩を掴んでいたテンが語り掛ける。


「ロラン大将軍……あいつらをよく見てな」
「何?」
「どいつもこいつも一癖も二癖もある奴等だけど、それでも一つだけ言える事がある。あいつらは
「……ほう」


ロランはテンの言葉を聞いて向かった者達を止める事はせず、自分の部隊は動かさずに様子を伺う。やがて先頭を走っていたゴウカにナイは追いつき、二人はマグマゴーレムの大群に目掛けてお互いの大剣を振りかざす。


『ふんっ!!』
「でやぁあああっ!!」
「「「ゴアアアアッ!?」」」


怪力剣士二人が放った大剣は数体のマグマゴーレムを吹き飛ばし、派手に吹き飛んだマグマゴーレム達は他の個体を巻き込んで倒れ込む。

この時にナイは旋斧に水属性の魔力を宿し、ゴウカの場合はハマーンが作り出した特注の甲冑のお陰で攻撃の際に飛び散るマグマゴーレムの溶岩を防ぐ。


『おおっ、こいつはいいな!!全然熱くないぞ!!』
「ふうっ……ちょっとゴウカさん!!勝手に先に行かないでください!!」
『いや、すまんすまん!!つい、我慢できなくてな!!』
「「「ゴォオオオッ……!!」」」


マグマゴーレムの集団に取り囲まれているにも関わらずにナイはゴウカを叱りつけ、そんな彼にゴウカは謝罪する。その光景を見せつけられたマグマゴーレム達は自分達を侮っているのかと憤慨し、一斉に襲い掛かろうとした。


「ゴアアッ!!」
「ゴオオッ!!」
「ナイ君、危ない!!」
『ゴウカ、邪魔!!』


数体のマグマゴーレムが二人の背後を狙おうとした時、リーナは目にも止まらぬ速度でナイの後ろに回り込むと、彼女は蒼月を地面に突き刺す。その直後に地面に巨大な氷柱が誕生して迫ってきたマグマゴーレムを貫く。

マリンはゴウカの後方に迫るマグマゴーレムに対して杖を構え、彼女は飛行船でガオウとフィルを水浸しにした「水球」を生み出す。但し、今回の場合は1つではなく、複数の水球を作り出して同時に放つ。
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