貧弱の英雄

カタナヅキ

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嵐の前の静けさ

第1005話 連携

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――グマグ火山の火口付近では討伐隊とマグマゴーレムの大群の激しい戦闘が繰り広げられ、戦況は討伐軍が優勢だった。数は劣るが個々の戦力に関しては討伐隊が大きく上回り、次々とマグマゴーレムは討ち取られていく。


『ふははははっ!!その程度かぁっ!?』
「ゴガァッ!?」
「ゴオオッ!?」
「ゴギャアッ!?」


ゴウカがドラゴンスレイヤーを振るう度にマグマゴーレム達は吹き飛び、溶岩の飛沫が舞う。一方で他の者たちもゴウカに負けずに戦い抜き、マグマゴーレムを打ち倒す。


「でやぁあああっ!!」
「ゴアッ!!」
「きゃあっ!?」
「ヒイロ、無理しないで……はあっ」
「ゴガァッ!?」


ヒイロは烈火を振りかざすがマグマゴーレムの拳で弾き返され、それを見たミイナが如意斧の柄を伸ばして代わりに攻撃する。彼女の如意斧は自由に柄の長さを伸ばせるため、それを生かしてリーチを広げて攻撃する。

さらにミイナには輪斧と呼ばれる魔道具を所持しており、こちらはブーメランのように投げて攻撃し、自分の元に戻ってくる機能を持つ魔道具だった。


「てりゃっ」
「ゴアッ!?」
「きゃっ!?ちょっ、ちょっと!?今、私にも当たりそうになりましたよ!?」
「あ、ごめん」


ミイナの投げ放った輪斧はマグマゴーレムの頭部に的中し、戻ってくる際に危うくヒイロの身体に当たりかけた。乱戦状態で使用するには不向きの魔道具であり、ミイナは輪斧を回収して如意斧を頼りに戦う。


「おりゃりゃりゃっ!!」
「ほう、中々やるな」
「当たり前だ!!ルナは聖女騎士団で一番強いんだ!!」
「ふっ、大きく出たな」


猛虎騎士団と共に戦うルナは両手に戦斧を抱えてマグマゴーレムの群れを蹴散らし、その様子を見たロランは感心した声を上げる。ちなみにこの二人は昔からお互いに知っており、こう見えてもルナは聖女騎士団の中では古参の騎士でもある。

少女の様な見た目をしているが実際の年齢は20代後半であり、その実力は確かで彼女に勝てる人間は聖女騎士団の中でも数えるほどしかいない。他の古参の騎士と比べると年齢も一番若く、負けん気の強い性格から彼女が聖女騎士団で最強と信じる者も多い。

尤も子供っぽい性格とすぐに油断するせいでまだまだ戦士としては未熟な面があり、実際に彼女が聖女騎士団で一番強いという言葉には疑問が残る。それでもこのような乱戦の戦闘では彼女が一番活躍し、瞬く間に彼女の足元にはマグマゴーレムの残骸の山が築かれた。


「はあっ、はあっ……ど、どうだ!!ルナの強さを思い知ったか!?」
「慢心するな、まだまだ敵は来るぞ」
「えっ!?」


ロランの言葉に驚いたルナは振り返ると、火口から新手のマグマゴーレムの群れが出現した。どうやら火口には相当数の敵が残っていたらしく、他の部隊の元へ向かう。


「バッシュ王子!!また新手が来ましたわ!!」
「ちっ、どれだけいるんだ……気を引き締めろ!!」
『はっ!!』


バッシュは防魔の盾でマグマゴーレムの攻撃を防ぎ、相手の体勢を崩す。その隙を逃さずに他の者が隙を突いて攻撃を行う。ドリスは特に相性が悪いマグマゴーレムを相手に奮戦し、彼女はバッシュと肩を並べて戦う。

その一方で銀狼騎士団と白狼騎士団と共に戦っていたナイはリーナと共に火口へ向かい、敵がどの程度残っているのかを確認する。その結果、まだ火口には数十体のマグマゴーレムが残っている事が判明し、それを見たナイは汗を流す。


(まだこんなに残っているのか……旋斧があれば、せめて岩砕剣なら……)


テンの退魔刀を借りてナイはここまで戦い抜いていたが、やはり自分の大剣でなければ調子は出ず、魔法剣が使えないというのが痛手だった。しかし、その代わりに今回は魔法腕輪にモモが制作した煌魔石を複数装着しており、それらを利用して全力で戦う。


(今回は前みたいに失敗はしない……行くぞ!!)


事前にイリアから受け取っていた「仙薬」も取り出し、それを口に含んだナイは体力と魔力を回復させると、リーナと共に駆け出す。リーナはナイの援護役に徹し、足手まといにならないように全力で戦う。


「リーナ!!ここからは本気で動くよ!!」
「大丈夫、任せて!!」
「うおおおおっ!!」


ナイは一瞬だけ強化術を発動させて肉体の限界まで身体能力を上昇させると、マグマゴーレムの大群に目掛けて退魔刀を振りかざす。それを見たリーナも蒼月の能力を解放させ、彼の援護のために敵を凍り付かせる。


「がああああっ!!」
「凍れっ!!」
『ゴアアアアッ!?』


退魔刀を振りかざす度にマグマゴーレムが吹き飛び、更に蒼月が生み出した冷気と氷によって敵は凍り付く。二人は火口に残っているマグマゴーレムを一掃するために奮闘し、その間にも他の騎士団が火口から離れたマグマゴーレムの群れの殲滅に専念できた。

戦闘が開始されてから大分時間が経過しており、徐々にマグマゴーレムの数が減ってきていた。既に屍の数は100匹を越えるが、それでもせいぜい半分程度であり、徐々に騎士団の面子も体力が削られて押し返されていく。


「老師、部隊が押され始めています!!」
「遂に限界が来たか……儂の出番じゃな」


火口から少し離れた場所にてエルマとマホが待機しており、彼女達は戦闘に参加せずに戦況を伺っていた。マホは座禅を行い、長い時間を掛けて魔力を練り上げる。

先の飛行船の戦闘ではマホは魔力を練り上げられずに広域魔法の発動に失敗した。これは長年の間、彼女がシャドウの呪いに蝕まれた影響で魔力が上手く練れず、呪いが解けた今でも彼女の身体は既に


(恐らく、これが儂の最後の魔法となるじゃろう……)


身体の負担が大きい広域魔法を使用すればマホはもう二度と自分が魔術師として戦えない事になるとは推測していた。せめて十年ほど身体を休めれば元通りの肉体に戻る可能性もあるが、魔導士という立場がそれを許さなかった。


(やれやれ、まさか森人族《エルフ》の儂が人の国のために命を賭ける時が来たとは……)


マホは純粋な森人族であり、真っ当に生きていればもっと長生きできたかもしれない。しかし、彼女はこの国の魔導士として取り上げられ、多大な恩を受けてきた。

この恩を報いるには彼女自身が命を賭けてこの国を守るしかなく、亡くなった王妃の約束のためにも彼女は戦う。王妃と交わした約束は自分の死後、この国を守ってほしいという内容であり、その約束を果たすためにマホは覚悟を決める。


「エルマよ、儂にもしもの時があれば……この国を支えるのはお主じゃ」
「えっ!?老師、何を言って……」
「頼んだぞ、我が弟子よ。浮上《レビテーション》!!」


最後にマホはエルマに言い残すと、彼女は杖を振りかざして上級魔法を発動させる。彼女の身体に風の魔力が纏い、身体が浮き上がる。


「風圧加速《ジェット》」
「ろ、老師!?お待ちください、私も共に……!!」


空中に浮上したマホはそのまま加速すると、エルマを置いて火口へ向かう。そこにはナイとリーナがマグマゴーレムに囲まれる形で戦っていたが、マホはそれを確認して二人の元へ降り立つ。


「二人とも、よくやった。後は儂に任せよ」
「はあっ、はあっ……マホ、魔導士!?」
「ぜえっ、ぜえっ……ど、どうしてここに?」


ナイは強化術が切れて煌魔石で体力と魔力を回復させ、そのナイを守るためにリーナはマグマゴーレムの群れに立ち向かっていたが、その二人を見てマホは笑みを浮かべる。

彼女は二人を自分の傍に寄せると杖を構え、それを目撃したマグマゴーレムの群れは彼女の身体から放たれる強大な魔力を感じ取る。ここでマホを殺さなければ自分達の身にとんでもない事が起きると野生の本能が危険を告げ、マグマゴーレムの大群は一斉にマホに襲い掛かろうとした。


「「「ゴアアアアッ!!」」」
「もう気付いたか、だが遅い……二人とも、儂から離れるな!!これが魔導士マホの最後の魔法じゃ!!」
「最後!?」
「ナイ君、掴まって!!」
「広域魔法《サイクロン》!!」


マホの言葉を聞いてナイは驚いたが、すぐにリーナが彼の身体を掴んでマホの足元に伏せた途端、マホは地面に杖を置いた瞬間に三人の周囲に竜巻が発生した。




――ゴガァアアアアアッ……!?



グマグ火山の火口にて凄まじい竜巻が吹き溢れ、その影響で火口に集まっていたマグマゴーレムはマグマ溜まりごと吹き飛び、空中にて粉々に砕け散った。かつてナイは広域魔法を発動する光景を何度か見た事があるが、今回のマホの使用したサイクロンはこれまでとは比べ物にならない威力を誇る。

数十体のマグマゴーレムが竜巻に飲み込まれて天高く上昇し、やがて完全に見えなくなった。その瞬間にマホの魔力が切れたのか、彼女は杖を手放すと竜巻が掻き消え、虚ろな瞳で倒れ込む。


「うっ……」
「マホ魔導士!?」
「しっかりして下さい!!」


マホが倒れ込むとナイとリーナは慌てて彼女を支えるが、既にマホは意識を失っていた。瞳の色も失い、ぴくりとも動かない。まるで死人の様に動かなくなったマホにナイ達は声をかけるが、彼女が返事を返す事は二度となかった――




――それから数分後、残っていたマグマゴーレムの討伐の成功を果たした騎士団がマホを取り囲み、彼女は弟子のエルマに抱えられていた。エルマは涙を流してマホを抱きしめるが、既にマホは意識はなく、目覚める様子がない。


「老師、老師ぃいいいっ!!」
「エルマさん……」
「今はそっとしておいてやれ……」


エルマがいくら声をかけてもマホが返事を返す事はなく、彼女の意識は完全に失われていた。一応は肉体の方はまだ生きているが、この調子だといつ目覚めるのかは分からない。

しかし、マホの最後の広域魔法のお陰で戦況は一変し、遂に討伐隊はマグマゴーレムの大群の討伐に成功した。これでグマグ火山の安全は確保され、王国の平和は保たれた。その代わりに失った物も大きく、王国はの有能な人材を失う――





――飛行船に討伐隊が引き返すと、既に医療室にてハマーンは息を引き取っていた事が報告された。
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