文字変換の勇者 ~ステータス改竄して生き残ります~

カタナヅキ

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廃墟編

マカセ復活!!

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――レア達がファストの街にて要塞の建設を行う頃、マカセはセカンの街に残り、シルフィアの命令に従って建物の各所にある仕掛けを行っていた。


「くそっ……あの女め、この我をこき使いおって……だが、お陰で身体は取り戻す事が出来たか」


現在のマカセは小型のロボ・ゴーレムの姿ではなくなり、レアの能力で元の肉体に戻っていた。理由はシルフィアの作戦上、マカセの存在が必要不可欠なため、仕方なく彼の肉体を元に戻すようにレアに進言したのだ。その結果、無事にマカセは吸血鬼としての肉体を取り戻す。


「それにしても主人も人が悪い。もう種族は変えられないと言われた時は焦ったが、無事に元に戻れたな。しかも前よりも心なしか身体が軽い気がする!!」


マカセは自分の手足に視線を向け、確かに身体は元に戻ったのだがどういう事なのか彼は過去の戦で身体中に古傷が残っていたのだが、その傷跡が完全に消えている事に気付く。


「そういえばあの忌まわしい勇者共から受けた傷も治っているな……そうか!!きっと我が主人が気を遣って治してくれたのだ!!流石は我が主!!」


自分の肉体から傷跡が消えた事にマカセは嬉々とした表情で自分の主人であるレアを褒め称える。彼には未だに「絶対服従」のステータスを刻んでおり、肉体を取り戻したからといって忠誠心がなくなるわけではない。むしろ長年の悩みだった自分の古傷を消してくれた事にマカセは更にレアに敬意を抱く。



――実際の所はレアが彼のステータスを改竄させる際、適当に「健康な吸血鬼の肉体」と書き込んだだけあり、そもそもレア自身はマカセの肉体に古傷が刻まれている事を知らなかった。身体が軽く感じるのは元々のマカセの肉体は暴飲暴食がたたって余分な脂肪が付いていたため、健康な肉体を手に入れた事で体重が軽くなっただけに過ぎない。



「しかし、こんな物をどうする気だ?魔物を倒すのに必要な道具だと言っていたが……」


マカセは建物内に入り込み、シルフィアから渡された四角形の箱を設置する。大きさ自体は掌に収まる程度だが、彼女の話によると街に招きこんだ魔物を倒すために利用するらしく、マカセは不思議に思いながらも街の至る場所に箱を設置する。


「よし、これで終わりだな。後はアルディラをここに招き寄せればいいだけだが……奴を探さなければな」
『マカセ、状況はどうですか?』
「うおっ!?だ、誰だ!?」
『こちらです。窓を見なさい』


唐突に声を掛けられたマカセは慌てて周囲を見渡すと、窓の方向にドローンが存在する事に気付き、不思議に思いながらも窓を開く。


「なんだこいつは……確かドローンと言ったな。まだ残っていたのか」
『状況を報告しなさいと言っているんです』
「うおっ!?き、貴様喋れたのか!!それにその声……あの女と一緒ではないか!!」
『……そういえばこの世界には通信技術どころか機械も存在しませんでしたね。その辺も詳しく説明しておくべきでした』
「何を訳の分からんことを言っている!!我は仕事中だ!!邪魔をするな!!」


ドローンから聞こえてきたシルフィアの声にマカセは怒鳴りつけると、しばらくは黙り込んでいたが、やがてマカセの目の前に接近してカメラのレンズから閃光を放つ。


『フラッシュライト』
「うおおっ!?目が、目がぁっ!?」
『もう一度聞きます。今現在の状況を報告しなさい』


予想外の攻撃にマカセは目元を抑えて転がり込むが、ドローン越しにシルフィアは冷めた言葉を彼に掛ける――





――しばらくの間はマカセも騒ぎ立てたが、やがてドローンという存在がどのような物なのかを知り、遠方に離れている相手とも会話できる機能を持っている事を知る。


「なるほど、通信機能か……言われてみれば我もあのへんな人形に変化していた時に行っていたような気がする」
『理解できたのなら報告しなさい。予定通りに「ボム」の設置は完了したのですか?』
「ボムというのはこの箱の事か?無論、言われた通りに全て設置したぞ!!」


マカセは先程設置した金属製の箱に視線を向け、今更ながらに箱の表面に「炎」を想像させる紋様が刻まれている事に気付き、報告を受けたシルフィアは次の指示を与える。


『よろしい。それなら次の行動に移りなさい。アルディラと魔物の軍勢をこの場所に呼び寄せるのです』
「簡単に言うな!!奴の居所が分からない以上、そう簡単に行くか!!」
『安心しなさい。既に魔物の軍勢は発見しています』
「な、何だと!?」
『セカンの街周辺に警戒させていたドローンが発見しました。もう間もなく、軍勢はこの街に訪れるでしょう』


予想外のシルフィアの言葉にマカセは驚くが、彼女の作戦を行うにはここからが重要となるため、念入りにマカセに忠告を行う。


『いいですか?絶対にこの作戦に失敗は許されません。貴方もマスターからの信頼を得たいのならば私の作戦に協力しなさい』
「分かっている……本当にこの作戦が上手くいったら、マスターは我の事を配下として認めてくれるのか?」
『約束しましょう。貴方が役立ちさえすればあの御方は見捨てません』
「……よし、覚悟を決めたぞ。貴様は邪魔だ!!早く帰れ!!」
『……前言撤回したくなってきました』


作戦を果たすためにマカセはドローンを退散させるように告げ、彼は建物の外に移動する。
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