文字変換の勇者 ~ステータス改竄して生き残ります~

カタナヅキ

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廃墟編

マカセの奮闘

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「ふははははっ!!こっちだ馬鹿共!!この女は我が貰うぞ!!」
『ギィイイイイッ!!』


地上からゴブリンの大軍が押し寄せ、マカセは内心冷や汗を掻きながら気絶しているアルディラを抱き締めて街中に入り込む。事前に破壊された正門からゴブリン達は街中に入り込み、マカセの追跡を行う。


「ギィイッ!!」
「おっと!!今のは中々危なかったぞ!!」


先頭を走っていたホブゴブリンが落ちていた石を投擲するが、マカセはそれを避けて笑い声をあげる。敢えて敵を挑発しながら逃走を行い、彼は街の中心部を目指す。


(ええいっ……さっさと付いて来い!!この愚鈍なゴブリン共め……それが貴様らの命取りとなる)


執拗に自分を追いかけてくるゴブリンの大軍に視線を向けながらマカセは作戦通りに目的地に向かい、一定の距離を保ちながらゴブリンを誘導する。しかし、街中に入れば建物が邪魔をしてゴブリンが見失うのではないかとマカセは考えていたが、実際の所はゴブリン達は建物を逆に利用して彼の跡を追う。


「ギィアッ!!」
「ギギィッ!!」
「何っ!?」


建物の屋根の上を駆けつける影があり、マカセが驚いて視線を向けると通常種のゴブリンが鎧兜を脱ぎ捨てて彼に向けて飛び掛かる。ホブゴブリンやゴブリンキングと比べると身軽な彼等は屋根の上を駆け抜ける事も容易く、空を飛ぶマカセに飛び掛かる。


「アガァッ!!」
「あいたぁっ!?は、離せこの獣がっ!!」
「ギャウッ!?」


自分の足首に噛みついたゴブリンを振り払い、マカセは慌てて上昇しようとしたが、その間に地上を走っていたホブゴブリンが街中に存在する様々な道具を投擲する。


「ギギィッ!!」
「いだぁっ!?き、貴様!!顔は覚えたからな!!後で必ず殺してやる!!」


井戸の水を汲む桶を頭部に叩きつけられたマカセは怒鳴り声を散らし、危うくアルディラを落としかけてしまう。どうにか体勢を立て直して移動を再開しようとした時、ゴブリンキングの1体が他のゴブリンを振り払いながら接近してきた。


「グギィイイイイイッ!!」
「うおおっ!?」


巨体が跳躍してマカセに衝突しかけるが、寸前で彼は低空飛行に切り替え、跳躍してきたゴブリンキングを回避する。どうにか危機を乗り越えたと思ったが、今度は高度を低下した事で地上のホブゴブリンに囲まれてしまう。


「ギィイッ!!」
「ぐあっ!?」
「きゃあっ!?」


ホブゴブリンの1体が握りしめていた棍棒が遂にマカセの背中に衝突し、彼に抱えられていたアルディラも衝撃で目を覚ます。そのままマカセは地上に衝突しそうになるが、寸前で翼を広げて着地を行う。


「く、くそっ……ぐふっ!?」
「いい加減に離しなさいよ!!」


地上に降りた瞬間に抱えられていたアルディラはマカセの股間を肘で叩きつけ、吸血鬼でも普通の人間と同じように急所であるため、マカセは苦悶の表情を浮かべる。それでも彼女を手放さなかったのは意地であり、マカセは顔を赤くしながらもアルディラを抱える。


「動くなっ!!こいつがどうなってもいいのか!?」
「あ、あんたっ……!?」
『ギィッ……!?』


自分達を取り囲むゴブリンに対してマカセは息も絶え絶えの状態にも関わらず、アルディラを人質にして危機を乗り越えようとする。彼女の首元に鋭い爪先を構え、近づけば殺す事を示す。


「ギギィッ!!」
「動くなっ!!本当に殺すぞ!!」
「くっ……な、何のつもりよ!!どうしてこんな事を……」
「やかましい!!」


アルディラは怯えた表情を浮かべるが、彼女はマカセが裏切った理由が分からず、質問する。


「こ、答えなさいよ!!どうして私の邪魔をするのよ!!そんなに私の事が嫌いだったの!?」
「馬鹿を言うな、我は貴様の事を気に入っていたぞ」
「えっ……?」


予想外の返答にアルディラは頬を赤くするが、当のマカセは下品な笑顔を浮かべて囁く。


「魔将の中でお前が一番胸がでかかったからな」
「最っ低ねあんたっ!?地獄に落ちろ!!」
『ギギィッ……?』


二人のやり取りにゴブリン達は顔を見合わせ、困惑の表情を浮かべる。そんな彼等を目にしながらマカセは十分に街の中心部にまで訪れたことを確認し、自分の懐からシルフィアから受け取っていたスマホ型の通信端末を取り出す。


「おい!!もう十分だろうっ!?いい加減に我を助けろっ!!」
「はあっ!?あんた、誰に言って……」
「貴様ではない!!黙っていろ!!」
「あいてっ!?」
『ギギィイイイイッ!!』


アルディラが騒ぎ出す前に彼女の頭部に拳骨を食らわせ、その光景にゴブリン達が再び殺気立つが、マカセの手に握りしめられた通信端末からシルフィアの声が響く。



『――ええ、もう十分です。手段はともかく、よくぞやり遂げましたね』



通信端末から流れてきた声にマカセは笑みを浮かべ、彼は上空に視線を向ける。そこには既に光の翼を生やした状態のシルフィアの姿があり、彼女は戦闘態勢を整えていた。
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