文字変換の勇者 ~ステータス改竄して生き残ります~

カタナヅキ

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廃墟編

イリスの正体

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「では質問を続けます。二人に尋ねますが、イルミナという者とイリス様は似ているのですか?」
「むっ……言われ見てみれば確かに」
「顔は全然違うけど、確かに背格好は似ているわね」
「イリス?まさかお前……」
「い、いやいや……冗談は止めて下さいよ。私は善良な人間ですって」


全員に見つめられてイリスは慌てふためきながら否定するが、彼女はすぐに何かを思い出したように掌を叩く。


「そ、そうだ!!もしも私がその魔王軍の幹部だとしたら、人間であるレアさんを殺さないはずがないじゃないですか!!だって、ねえっ!?ずっと一緒に居たんですよ!!」
「え、まあ……確かに」


イリスはこの中の誰よりもレアと共に過ごしており、最初に遭遇したのも彼女である。シルフィアが誕生する前から二人は寝食を共にしており、イリスはレアを殺す機会は幾らでも存在した。しかし、彼女の説明に対してシルフィアは首を振る。


「殺さなかったのではなく、殺せなかったのでは?話を聞く限り、イリス様は戦闘は得意ではなかったそうですね」
「え、いや……まあ、医療魔導士ですから……」
「イルミナも戦闘面では特別に優れてはいなかったと聞いています。事実ですね?」
「あ、ああ……」
「確かに頭は良いけど、強くはなかったわね……」
「最初にゴブリンに襲われていた時、殺されかけていた。という事は正直に言わせてもらいますが、既にゴブリンを圧倒できる強さを持っていたレア様を殺す事は出来なかったのでは?」
「えっ……?」


シルフィアの言葉にレアは呆気にとられ、確かにイリスと最初に遭遇した時からステータスを改竄した事で常人を遥かに上回る身体能力を持っており、しかも現実世界の銃器も装備していた。もしもあの時にイリスに襲われていたとしても、レアに敵うとは考えにくい。


「で、でも……幾らレアさんが化物じみているからと言って寝ている間に始末する事も出来ますよ?」
「確かにその可能性も否定できません。しかし、それならどうしてイリス様はレア様を殺さなかったのか……単純にレア様の能力に強い興味を抱いたのでは?」
「……興味?」
「レア様の能力は正に万能です。実在しない架空の兵器や人間さえも作り出せるのです。そんな能力を目にしてイリス様はレア様を殺すのではなく、利用しようと考えたのでは?」
「うっ!?」
「え、マジで?」


文字変換の能力を所有しているレアは物体を別の物に変換させる事が可能であり、イリスの目の前で現実世界の銃器や乗り物を生み出している。レアは最初に作り出した自動車にイリスが夢中になっていた事を思い出し、自動車は自分が整備しなければ時間が経過すれば動かすことが出来ない事も伝えている(正確にはレアしか自動車の燃料や修理は行えない)。


「しかし、私が生まれた事でイリス様の計画は狂いました。私が常にレア様の傍に待機し、ロボ・ゴーレム達も護衛を行った事でイリス様はレア様を殺す事が出来なくなった。だから正体を隠して共に行動しているのでは?」
「……まあ、確かに面白い推理ですけど、それは証拠がありませんよね?全部、憶測じゃないですか」


シルフィアの言葉にイリスは溜息を吐きながら座り込み、馬鹿馬鹿しいとばかりに首を振る。しかし、そんな彼女らしからぬ態度にレアは一層怪しさを感じ取り、シルフィアは更に畳みかける。


「証拠がないとおっしゃいましたが、実は先ほどからイリス様の体内に送り込んだナノマシンが私に信号を伝えています。この信号はナノマシンの所有者が嘘を吐いた時に発せられる信号です」
「し、しんごう?」
「一体何の話をしているのよ……」
「さっぱり訳が分からん……」


二人の会話にアルディラとマカセは戸惑うが、レアはシルフィアの発言を聞いて要は「嘘発見器」のように彼女はイリスの体内に送り込んだナノマシンを通して彼女の虚実を確かめていた事を知る。言葉の意味が分からないが、それでも嘘を見破られたと感じたのか、イリスは観念したように両手を上げた。


「……分かりましたよ。私の負けです」
「自分がイルミナである事を認めるのですね?」
「ええ、そうです……私こそが魔王軍の頭脳担当のイルミナですよ」
「ええっ!?」
「馬鹿なっ!?」
「……いや、なんえ貴方達の方がめっちゃ驚いているんですか」


イリスの言葉にマカセとアルディラは真っ先に大声を上げ、レアとしても驚きを隠せないが、シルフィアは自分の推理が正しかった事に満足気に頷く。


「最初に遭遇した時、念のためにナノマシンを注入しておいて幸いでした。言っておきますがもしもレア様に手を出せば貴方に送り込んだナノマシンがウイルスへと変化し、一瞬にしてその身体を破壊します。よく覚えておいてください」
「そんな真似しませんよ。私としてもレアさんには本当に恩義は感じているんです。この馬鹿サキュバスがしっかりゴブリンに教育していなかったせいで私も殺されそうになりましたからね」
「馬鹿とは何よ!!しょ、しょうがないじゃない!!あいつら馬鹿だから人間を追い払うように命じても勝手に殺しちゃうんだから!!」
「その甘い命令系統のせいで私は殺されかけたんですよ!!魔王軍最弱幹部の名前は伊達じゃないですよ!!」
「あ……本当にヤバかったのか」


最初にレアがイリスと遭遇した時、彼女がゴブリンに命を奪われそうになっていたのは演技ではないらしく、実際にあの時のイリスは本気でゴブリンに殺されかけた所をレアに救われたらしい。
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