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外の世界へ
第22話 三毛猫亭
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「お金は返す当てができたらすぐに返す」
「別に気にしなくていいよ。じゃあ、一緒に宿を探そうか」
「ぷるんっ!!」
ナオは握手するためにミズネに手を伸ばすと、彼女は手を繋ぎたいと勘違いしたのかナオの手を握りしめる。
「宿屋なら心当たりがある。こっちについて来て」
「え?あ、うん……」
女の子と初めて手を繋いだナオは戸惑いながらも後に続き、こうして二人は宿屋を探して街の中を歩き回る――
――ミズネに連れられて辿り着いた場所は「三毛猫亭」と記された看板の建物だった。ミズネが最初に街に来た時に見かけた宿屋らしく、名前が気になって訪れたという。
「泊まるとしたらこの宿屋がいい」
「三毛猫亭……随分と変わった名前だね」
「あそこを見て、本当に猫がいる」
「あ、本当だ」
「にゃ~」
宿屋の屋根の上には本物の三毛猫が横たわっており、ナオ達に気が付くと「いらっしゃい」とばかりに鳴き声を上げる。それを見てナオとミズネは和むが、鞄に隠れていたスラミンが顔を出す。
「ぷるぷるっ!!」
「にゃにゃっ!?」
「うわ、急にどうしたの!?」
「もしかして猫に嫉妬してる?」
スラミンは鞄から飛び出すと屋根の上にいる三毛猫と火花を散らし、可愛いの自分だとばかりにお互いに牽制する。そんなスラミンを抱きかかえてナオとミズネは中に入ると、掃除を行っていた老婆が二人に気付く。
「おや?珍しいね、お客さんが来るなんて何時ぶりかね~」
「え?あの……ここ、宿屋ですよね?」
「ああ、そうだよ。最近は全然誰も来ないから暇してたんだけどね」
「……ナオ、やっぱり他の宿屋にする?」
宿泊客が誰もいない事を知ってミズネは不安を抱くが、ナオは受付の張り紙に記されている宿泊料を確認して随分と安い事に気が付く。これまでナオは宿屋に宿泊した事はないので値段の相場は知らないが、それでも明らかに安いと分かる程の値段だった。
「こんなに安い値段で泊まれるんですか!?」
「ああ、うちの宿屋は三人までしか泊まれないんだよ。昔は夫や子供達も居たから何とか経営できていたんだけどね、今は夫も亡くなって子供達も自立してからは私一人で頑張ってるのさ。でも、やっぱり一人だと大人数の相手はできないからね……お客様は三人までしか泊められないのさ」
「そうだったんですか……でも、それって経営は大丈夫なんですか?」
「正直に言えば半分は趣味で店を続けてるようなもんだからね。子供達の仕送りだけで十分生活はできるんだけど、この宿屋は夫と二人だけで作った大切な建物だからね。だから身体が動けるうちは宿屋を開いておこうと思ったのさ。けど、お客さんの人数を制限してからは客足は殆どなくなって今ではこの有様さ」
店主である老婆の話を聞いてナオ達は納得し、彼女一人では大人数の客を相手にできない理由は分かった。値段も安いうえに建物の中は掃除が行き届いているので綺麗であり、今日はこちらに世話になる事にした。
「二人分の部屋を借りれますか?できれば食事付きでお願いしたいんですけど……」
「それは構いませんけど、本当にうちなんかの宿でいいんですか?もっと大きくて綺麗な宿屋ならいくらでもありますよ」
「ここがいい、名前が気に入った」
「あらあら……それはありがとうございます。亡くなった主人が付けた名前なんですよ」
老婆は嬉しそうに久しぶりの客を歓迎し、流石に二人一緒の部屋に泊まるわけにはいかないのでナオは個室を二つ借りる事にした――
――自分の部屋に案内されたナオは荷物をまとめると、これからの先の事を考える。当面の目標は王都に向かう事だが、まずは王都まではどのような手段で移動するのかを考える。
(ミズネの話だと街から街へ移動する馬車もあるらしいけど、結構な値段が掛かるみたいだな。こんな事なら馬の乗り方も師匠に教えて貰えば良かったな……)
馬や馬車を操る事ができれば自力で王都に向かう事もできたが、生憎とナオは乗馬の技術は学んでいない。だからといって村から出た時のように荷車を利用して魔法の力で移動する方法は色々と問題が多い。
(適当な大きさの荷車を購入して移動する手段もあるけど、凹凸が激しい道のりだと横転する心配もあるしな。かといって画面に乗っての移動は危険過ぎるし……どうしたもんかね)
街間を移動する馬車を乗り継いで王都に移動するのが一番無難だと思われるが、その場合だとナオの手持ちの金だけでは足りず、途中で金を使い果たすのは目に見えていた。
商人のドルトンのお陰でナオは長旅ができるぐらいの金銭は得られたが、やはり自分で稼ぐ手段を見つけておかないといけない。しかし、金を稼ぐと言ってもどんな方法が良いのか思いつかない。
(この街で住む場所を見つけて地道に働いてお金を稼ぐしかないかな。そうだ、ドルトンさんに頼んで仕事先を斡旋してもらうとか……いや、流石に迷惑をかけ過ぎかな)
商人であるドルトンに相談すれば仕事場を紹介してくれるかもしれないが、街に辿り着くまでにナオは色々と世話になっており、これ以上に彼に迷惑をかけるのは忍びない。だが、自分一人では金を稼ぐ良い方法が思いつかない。
一日でも早く一人前の魔術師になってマリアに会いに行きたいと思うナオにとっては短期間で大金を稼げる方法が一番なのだが、都合よくそんな方法が思いつくはずがない。
(魔法を使える事を隠すのを辞めればいくらでも仕事にありつけるだろうけど……)
ナオが古代魔法を扱える魔術師だと知れば大勢の人間が彼に興味を抱き、護衛などの仕事を依頼してくるかもしれない。しかし、魔術師は貴重な存在のため、噂が広まるとミズネのように悪党に付け狙われる危険性も高い。
(さっきの奴等はなんとかなったけど、もしも捕まっていたら大変な目に遭っていたかも……やっぱり、魔法は使える事は隠しておいた方が良いよな)
古代魔法を扱える魔術師は滅多に存在せず、もしも正体を知られたらミズネ以上に狙われる可能性が高く、これからもナオは魔術師である事を隠す事にした。色々と考えても良案は思いつかず、息抜きも兼ねてスラミンの相手をする事にした。
「ほれほれ、スライムじゃらしは気に入った?」
「ぷるぷるっ♪」
ナオが宿に向かう途中で見つけた猫じゃらしを振ると、スラミンは楽しそうにじゃれつく。すると何処から入り込んできたのか部屋の中に三毛猫が現れ、スラミンの上に乗り込んでナオの猫じゃらしに手を伸ばす。
「にゃ~!!」
「ぷるんっ!?」
「うわ、びっくりした!!何時の間に入り込んだの?」
「私もいる」
「わあっ!?」
部屋に侵入していたのは三毛猫だけではなく、何故かミズネも入り込んでいた。いきなり現れた彼女にナオは驚くが、ミズネは三毛猫を抱えて扉を指差す。
「部屋に居る時は鍵を閉めた方が良い。誰かに襲われるか分からないから気をつけた方が良い」
「わ、分かった……気を付けるよ。それで俺に何か用事?」
「……ナオの古代魔法について知りたい事がある」
「古代魔法?」
ミズネがナオの部屋に訪れたのは彼が習得した古代魔法「ステータス」に興味を抱いたらしく、同じ魔術師として興味を抱くのも無理はなかった。古代魔法は現在に流通されている魔法とは根本的に原理が異なり、色々と謎が多い事で有名だった。
「別に気にしなくていいよ。じゃあ、一緒に宿を探そうか」
「ぷるんっ!!」
ナオは握手するためにミズネに手を伸ばすと、彼女は手を繋ぎたいと勘違いしたのかナオの手を握りしめる。
「宿屋なら心当たりがある。こっちについて来て」
「え?あ、うん……」
女の子と初めて手を繋いだナオは戸惑いながらも後に続き、こうして二人は宿屋を探して街の中を歩き回る――
――ミズネに連れられて辿り着いた場所は「三毛猫亭」と記された看板の建物だった。ミズネが最初に街に来た時に見かけた宿屋らしく、名前が気になって訪れたという。
「泊まるとしたらこの宿屋がいい」
「三毛猫亭……随分と変わった名前だね」
「あそこを見て、本当に猫がいる」
「あ、本当だ」
「にゃ~」
宿屋の屋根の上には本物の三毛猫が横たわっており、ナオ達に気が付くと「いらっしゃい」とばかりに鳴き声を上げる。それを見てナオとミズネは和むが、鞄に隠れていたスラミンが顔を出す。
「ぷるぷるっ!!」
「にゃにゃっ!?」
「うわ、急にどうしたの!?」
「もしかして猫に嫉妬してる?」
スラミンは鞄から飛び出すと屋根の上にいる三毛猫と火花を散らし、可愛いの自分だとばかりにお互いに牽制する。そんなスラミンを抱きかかえてナオとミズネは中に入ると、掃除を行っていた老婆が二人に気付く。
「おや?珍しいね、お客さんが来るなんて何時ぶりかね~」
「え?あの……ここ、宿屋ですよね?」
「ああ、そうだよ。最近は全然誰も来ないから暇してたんだけどね」
「……ナオ、やっぱり他の宿屋にする?」
宿泊客が誰もいない事を知ってミズネは不安を抱くが、ナオは受付の張り紙に記されている宿泊料を確認して随分と安い事に気が付く。これまでナオは宿屋に宿泊した事はないので値段の相場は知らないが、それでも明らかに安いと分かる程の値段だった。
「こんなに安い値段で泊まれるんですか!?」
「ああ、うちの宿屋は三人までしか泊まれないんだよ。昔は夫や子供達も居たから何とか経営できていたんだけどね、今は夫も亡くなって子供達も自立してからは私一人で頑張ってるのさ。でも、やっぱり一人だと大人数の相手はできないからね……お客様は三人までしか泊められないのさ」
「そうだったんですか……でも、それって経営は大丈夫なんですか?」
「正直に言えば半分は趣味で店を続けてるようなもんだからね。子供達の仕送りだけで十分生活はできるんだけど、この宿屋は夫と二人だけで作った大切な建物だからね。だから身体が動けるうちは宿屋を開いておこうと思ったのさ。けど、お客さんの人数を制限してからは客足は殆どなくなって今ではこの有様さ」
店主である老婆の話を聞いてナオ達は納得し、彼女一人では大人数の客を相手にできない理由は分かった。値段も安いうえに建物の中は掃除が行き届いているので綺麗であり、今日はこちらに世話になる事にした。
「二人分の部屋を借りれますか?できれば食事付きでお願いしたいんですけど……」
「それは構いませんけど、本当にうちなんかの宿でいいんですか?もっと大きくて綺麗な宿屋ならいくらでもありますよ」
「ここがいい、名前が気に入った」
「あらあら……それはありがとうございます。亡くなった主人が付けた名前なんですよ」
老婆は嬉しそうに久しぶりの客を歓迎し、流石に二人一緒の部屋に泊まるわけにはいかないのでナオは個室を二つ借りる事にした――
――自分の部屋に案内されたナオは荷物をまとめると、これからの先の事を考える。当面の目標は王都に向かう事だが、まずは王都まではどのような手段で移動するのかを考える。
(ミズネの話だと街から街へ移動する馬車もあるらしいけど、結構な値段が掛かるみたいだな。こんな事なら馬の乗り方も師匠に教えて貰えば良かったな……)
馬や馬車を操る事ができれば自力で王都に向かう事もできたが、生憎とナオは乗馬の技術は学んでいない。だからといって村から出た時のように荷車を利用して魔法の力で移動する方法は色々と問題が多い。
(適当な大きさの荷車を購入して移動する手段もあるけど、凹凸が激しい道のりだと横転する心配もあるしな。かといって画面に乗っての移動は危険過ぎるし……どうしたもんかね)
街間を移動する馬車を乗り継いで王都に移動するのが一番無難だと思われるが、その場合だとナオの手持ちの金だけでは足りず、途中で金を使い果たすのは目に見えていた。
商人のドルトンのお陰でナオは長旅ができるぐらいの金銭は得られたが、やはり自分で稼ぐ手段を見つけておかないといけない。しかし、金を稼ぐと言ってもどんな方法が良いのか思いつかない。
(この街で住む場所を見つけて地道に働いてお金を稼ぐしかないかな。そうだ、ドルトンさんに頼んで仕事先を斡旋してもらうとか……いや、流石に迷惑をかけ過ぎかな)
商人であるドルトンに相談すれば仕事場を紹介してくれるかもしれないが、街に辿り着くまでにナオは色々と世話になっており、これ以上に彼に迷惑をかけるのは忍びない。だが、自分一人では金を稼ぐ良い方法が思いつかない。
一日でも早く一人前の魔術師になってマリアに会いに行きたいと思うナオにとっては短期間で大金を稼げる方法が一番なのだが、都合よくそんな方法が思いつくはずがない。
(魔法を使える事を隠すのを辞めればいくらでも仕事にありつけるだろうけど……)
ナオが古代魔法を扱える魔術師だと知れば大勢の人間が彼に興味を抱き、護衛などの仕事を依頼してくるかもしれない。しかし、魔術師は貴重な存在のため、噂が広まるとミズネのように悪党に付け狙われる危険性も高い。
(さっきの奴等はなんとかなったけど、もしも捕まっていたら大変な目に遭っていたかも……やっぱり、魔法は使える事は隠しておいた方が良いよな)
古代魔法を扱える魔術師は滅多に存在せず、もしも正体を知られたらミズネ以上に狙われる可能性が高く、これからもナオは魔術師である事を隠す事にした。色々と考えても良案は思いつかず、息抜きも兼ねてスラミンの相手をする事にした。
「ほれほれ、スライムじゃらしは気に入った?」
「ぷるぷるっ♪」
ナオが宿に向かう途中で見つけた猫じゃらしを振ると、スラミンは楽しそうにじゃれつく。すると何処から入り込んできたのか部屋の中に三毛猫が現れ、スラミンの上に乗り込んでナオの猫じゃらしに手を伸ばす。
「にゃ~!!」
「ぷるんっ!?」
「うわ、びっくりした!!何時の間に入り込んだの?」
「私もいる」
「わあっ!?」
部屋に侵入していたのは三毛猫だけではなく、何故かミズネも入り込んでいた。いきなり現れた彼女にナオは驚くが、ミズネは三毛猫を抱えて扉を指差す。
「部屋に居る時は鍵を閉めた方が良い。誰かに襲われるか分からないから気をつけた方が良い」
「わ、分かった……気を付けるよ。それで俺に何か用事?」
「……ナオの古代魔法について知りたい事がある」
「古代魔法?」
ミズネがナオの部屋に訪れたのは彼が習得した古代魔法「ステータス」に興味を抱いたらしく、同じ魔術師として興味を抱くのも無理はなかった。古代魔法は現在に流通されている魔法とは根本的に原理が異なり、色々と謎が多い事で有名だった。
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