ステータス画面がバグったのでとりあえず叩きます!!

カタナヅキ

文字の大きさ
25 / 69
外の世界へ

第25話 魔力の残滓

しおりを挟む
(……分かるぞ。ミズネはこっちの方に移動したんだ)


目を閉じた状態でナオはミズネの魔力を探すと、彼女が移動したと思われる場所に青色の魔力が伸びている事に気づく。ナオが見つけたのは彼女の魔力のであり、ミズネのように強い魔力を持つ魔術師の場合、魔法を発動せずとも身体から魔力を常に滲み出している。

恐らくはミズネはナオが自分の魔力を辿って来る事を想定して行動しており、ナオは彼女の魔力の残滓を辿りながら移動を開始した。途中で何度か目を開いて自分の居場所を確認し、彼女の魔力の残滓が消える前に移動を行う。


(だんだんと魔力が濃くなっている気がする……こっちか!!)


魔力を辿っていくとナオが辿り着いたのは最初にミズネと出会った場所だった。前回と違って路地裏を塞いでいた木箱はなくなっているが、奥側から彼女の魔力が感じ取れた。


「ここはあの時の……どうしてこんな所に?」


不思議に思いながらもナオは路地裏の奥に移動すると、彼が辿り着いた場所は空き地だった。周囲が建物で取り囲まれているのでナオが通った細道からしか出入りはできず、その空き地の中央にミズネが倒れていた。


「ミズネ!?」


倒れている彼女を見てナオは慌てて駆けつけようとしたが、不意に強い魔力を感じ取った。ミズネに近付いた瞬間、彼女の全身から放たれる魔力が高まり、咄嗟にナオは右手を構えた。


「アクアボール!!」
「ステータス!!」


起き上がったミズネが手に握りしめていた杖で魔法を放つと、即座にナオはステータス画面を展開して彼女の攻撃を防いだ。気絶したと思われたミズネの方から攻撃を仕掛けてきた事にナオは驚くが、彼女は自分の魔法を察知して防いだナオを見て頷く。


「……もう完全に魔力感知を覚えた。これで修行は終わり」
「ど、どういう事?」
「魔力感知は他の魔術師の居場所を探るためだけの技術じゃない。相手の魔術師が魔法を仕掛けるタイミングを計る事だってできる……だからナオは私の魔法を防げた」
「あっ……」


気絶したふりをしてまでミズネが不意打ちを仕掛けた理由、それはナオが魔力感知の技術を完璧に習得したのか確かめるためらしい。結果から言えばナオは他者が魔法を繰り出すのを予測できる段階まで到達し、これでもうミズネがナオに教える事はない。


「もう私からナオに教える事はない。今までよく頑張った」
「ミズネ……」
「あ、でもまだ稼ぎ口を見つけてないからもうしばらくは養ってほしい。できれば一か月ぐらい……」
「……台無しだよ」


修業を見る間は世話をするという約束であるため、ナオはもうミズネの世話を見る必要はなくなった。だが、ここまで世話になったのでナオは修行など関係なしに彼女を見捨てるつもりはない。


「はあっ……良かったらミズネも俺と一緒に旅しない?実は俺、王都に行きたいんだ」
「王都?この国の?それだったら私も行きたいと思ってたから問題ない」
「じゃあ、二人で王都に行こうよ。旅をするにも二人の方が色々と役立つでしょ?」
「分かった。それなら私はナオを守る用心棒になる」
「用心棒って……まあ、それでいいや」


ミズネはナオの提案に賛成し、二人は改めて握手しようとした。だが、不意にナオはミズネの後方に存在する建物の屋根の上から人影を確認し、反射的に嫌な予感がした彼はミズネを抱き寄せて画面を拡大化させて自分達の前に移動させる。


「危ない!!」
「きゃっ!?」


いきなりナオに抱きしめられたミズネは戸惑うが、直後に画面に何かが当たるような音が鳴り響く。画面に衝突したのは矢であり、射抜いたのは建物の屋上にいる獣人族の男だった。


「ちぃっ……勘の良いガキだ」
「お前は……あの時の!?」
「ど、どうしてここに?」


屋根の上から現れたのは先日にナオ達を襲った獣人族の男であり、相方と共に兵士に捕まったはずだが、何故か頭に包帯を巻いた状態で姿を晒す。ナオが通ってきた細道からはもう一人の獣人が姿を現す。


「見つけたぞくそガキ共!!今度こそ逃がさないぞ!!」
「まさか!?」
「……こいつらしつこい」


兵士に捕まったはずの悪党が再び現れた事にナオは驚き、ミズネは面倒くさそうな表情を浮かべた。しかも今回は二人だけではなく、兵士の格好をした人間の男達が姿を現す。


「くっくっくっ……こいつらか?お前等の言っていた魔術師のガキ二人は?」
「どっちも顔は悪くねえじゃないか。こいつは高く売れそうだな」
「あんまり傷つけるなよ。商品としての価値が下がっちまうからな」
「な、何を言ってるんだ!?」
「こいつら……下衆」


兵士でありながら悪党に協力する男達の言葉にナオは信じられず、ミズネは杖を構えて戦闘態勢に入った。街の平和を守るはずの兵士が悪党と組んで子供を攫おうとするなどナオは許せなかった。


(数が多い。それに武器も持ってる……けど、何だろう。前よりは怖くない気がする)


初めて悪党に襲われた時は緊張したが、今はミズネも傍にいるせいかナオは落ち着いていられた。それにナオ自身も約一週間の修業で魔力感知の技術を習得し、今ならば上手く戦える気がした。


(今なら分かる……見えなくても敵の位置が!!)


これまでと違い、魔力感知を使用すれば離れている相手や隠れている敵の位置も正確に把握できる。そして先ほど展開した画面を縮小化させると、屋根の上にいる男に目掛けて振り返らずに放つ。


「まずはお前だ!!」
「ぎゃああっ!?」
「な、何だ!?」
「おい、どうした!?」
「……おおっ」


死角に存在するはずの男に目掛けて高速回転が加えられた画面が接近し、男が手にしていた弓を破壊する。いきなり武器が壊れた男は悲鳴を上げ、バランスを崩して屋根の上から落ちてしまう。


「ぎゃああああっ!?」
「あ、やべっ……間に合えっ!!」
「げふっ!?」


男が地上に叩きつけられる前に画面を拡大化させ、男の身体を下から突き飛ばす。再び屋根の上に吹き飛んだ男は白目を剥いて気絶し、それを見た他の者達は騒ぎ出す。


「ま、魔法だ!!やっぱりこいつら魔法使いなんだ!!」
「今のは何の魔法だ!?」
「馬鹿野郎!!相手が魔術師だからってなんだ!!近付けばこっちのもんよ!!」
「そ、そうだ!!」


ナオが男を助けたのを見て魔術師であると確信し、男達は彼を捕まえようと迫る。だが、その前にミズネが杖を構えて魔法を繰り出す。


「アクアボール」
「うおっ!?」
「馬鹿、怯むな!!」
「こんだけ数が居るんだ!!ばらけて捕まえろ!!」


ミズネが水の塊を作り出すと悪党達は慌てふためき、全員散る事で狙いを定めさせない様にする。だが、それを見越してミズネはナオに声をかけた。


「ナオ、よく見ていて……これが魔法の応用」
「応用?」
「……アクアウィップ!!」
「「「うわぁあああっ!?」」」


通常よりも一際大きな水の塊を生み出すと、ミズネは杖を掲げた瞬間に無数の触手が生えて周囲に散らばった男達を吹き飛ばす。この魔法はナオも初見であり、慌ててミズネの傍に避難した。

アクアボールの魔法は球体状の水を作り出して相手に攻撃を仕掛ける初級魔法だが、使い方によっては別の攻撃法も行える。今回の場合は鞭のように変化させた触手を利用して悪党達を倒す。水とはいえ魔法で構成された液体は術者の力量で鉄の装備をも打ち砕く威力を誇る。


(す、凄い……これがミズネの実力なのか!!)


仮にナオがミズネと戦った場合、彼女の魔法を防げる自身はなかった。いくらステータス画面が無敵の防御力を誇ろうと、無数の触手を全て防ぐのは不可能に等しく、一本でも当たればナオは負けてしまう。改めてナオはの実力を思い知った。
しおりを挟む
感想 7

あなたにおすすめの小説

平凡なサラリーマンが異世界に行ったら魔術師になりました~科学者に投資したら異世界への扉が開発されたので、スローライフを満喫しようと思います~

金色のクレヨン@釣りするWeb作家
ファンタジー
夏井カナタはどこにでもいるような平凡なサラリーマン。 そんな彼が資金援助した研究者が異世界に通じる装置=扉の開発に成功して、援助の見返りとして異世界に行けることになった。 カナタは準備のために会社を辞めて、異世界の言語を学んだりして準備を進める。 やがて、扉を通過して異世界に着いたカナタは魔術学校に興味をもって入学する。 魔術の適性があったカナタはエルフに弟子入りして、魔術師として成長を遂げる。 これは文化も風習も違う異世界で戦ったり、旅をしたりする男の物語。 エルフやドワーフが出てきたり、国同士の争いやモンスターとの戦いがあったりします。 第二章からシリアスな展開、やや残酷な描写が増えていきます。 旅と冒険、バトル、成長などの要素がメインです。 ノベルピア、カクヨム、小説家になろうにも掲載

チートツール×フールライフ!~女神から貰った能力で勇者選抜されたので頑張ってラスダン前まで来たら勇者にパーティ追放されたので復讐します~

黒片大豆
ファンタジー
「お前、追放な。田舎に帰ってゆっくりしてろ」 女神の信託を受け、勇者のひとりとして迎えられた『アイサック=ベルキッド』。 この日、勇者リーダーにより追放が宣告され、そのゴシップニュースは箝口令解除を待って、世界中にバラまかれることとなった。 『勇者道化師ベルキッド、追放される』 『サック』は田舎への帰り道、野党に襲われる少女『二オーレ』を助け、お礼に施しを受ける。しかしその家族には大きな秘密があり、サックの今後の運命を左右することとなった。二オーレとの出会いにより、新たに『女神への復讐』の選択肢が生まれたサックは、女神へのコンタクト方法を探る旅に目的を変更し、その道中、ゴシップ記事を飛ばした記者や、暗殺者の少女、元勇者の同僚との出会いを重ね、魔王との決戦時に女神が現れることを知る。そして一度は追放された身でありながら、彼は元仲間たちの元へむかう。本気で女神を一発ぶん殴る──ただそれだけのために。

目つきが悪いと仲間に捨てられてから、魔眼で全てを射貫くまで。

桐山じゃろ
ファンタジー
高校二年生の横伏藤太はある日突然、あまり接点のないクラスメイトと一緒に元いた世界からファンタジーな世界へ召喚された。初めのうちは同じ災難にあった者同士仲良くしていたが、横伏だけが強くならない。召喚した連中から「勇者の再来」と言われている不東に「目つきが怖い上に弱すぎる」という理由で、森で魔物にやられた後、そのまま捨てられた。……こんなところで死んでたまるか! 奮起と同時に意味不明理解不能だったスキル[魔眼]が覚醒し無双モードへ突入。その後は別の国で召喚されていた同じ学校の女の子たちに囲まれて一緒に暮らすことに。一方、捨てた連中はなんだか勝手に酷い目に遭っているようです。※小説家になろう、カクヨムにも同じものを掲載しています。

アルフレッドは平穏に過ごしたい 〜追放されたけど謎のスキル【合成】で生き抜く〜

芍薬甘草湯
ファンタジー
アルフレッドは貴族の令息であったが天から与えられたスキルと家風の違いで追放される。平民となり冒険者となったが、生活するために竜騎士隊でアルバイトをすることに。 ふとした事でスキルが発動。  使えないスキルではない事に気付いたアルフレッドは様々なものを合成しながら密かに活躍していく。 ⭐︎注意⭐︎ 女性が多く出てくるため、ハーレム要素がほんの少しあります。特に苦手な方はご遠慮ください。

念願の異世界転生できましたが、滅亡寸前の辺境伯家の長男、魔力なしでした。

克全
ファンタジー
アルファポリスオンリーです。

劣悪だと言われたハズレ加護の『空間魔法』を、便利だと思っているのは僕だけなのだろうか?

はらくろ
ファンタジー
海と交易で栄えた国を支える貴族家のひとつに、 強くて聡明な父と、優しくて活動的な母の間に生まれ育った少年がいた。 母親似に育った賢く可愛らしい少年は優秀で、将来が楽しみだと言われていたが、 その少年に、突然の困難が立ちはだかる。 理由は、貴族の跡取りとしては公言できないほどの、劣悪な加護を洗礼で授かってしまったから。 一生外へ出られないかもしれない幽閉のような生活を続けるよりも、少年は屋敷を出て行く選択をする。 それでも持ち前の強く非常識なほどの魔力の多さと、負けず嫌いな性格でその困難を乗り越えていく。 そんな少年の物語。

転生幼女の攻略法〜最強チートの異世界日記〜

みおな
ファンタジー
 私の名前は、瀬尾あかり。 37歳、日本人。性別、女。職業は一般事務員。容姿は10人並み。趣味は、物語を書くこと。  そう!私は、今流行りのラノベをスマホで書くことを趣味にしている、ごくごく普通のOLである。  今日も、いつも通りに仕事を終え、いつも通りに帰りにスーパーで惣菜を買って、いつも通りに1人で食事をする予定だった。  それなのに、どうして私は道路に倒れているんだろう?後ろからぶつかってきた男に刺されたと気付いたのは、もう意識がなくなる寸前だった。  そして、目覚めた時ー

転生メイドは絆されない ~あの子は私が育てます!~

志波 連
ファンタジー
息子と一緒に事故に遭い、母子で異世界に転生してしまったさおり。 自分には前世の記憶があるのに、息子は全く覚えていなかった。 しかも、愛息子はヘブンズ王国の第二王子に転生しているのに、自分はその王子付きのメイドという格差。 身分差故に、自分の息子に敬語で話し、無理な要求にも笑顔で応える日々。 しかし、そのあまりの傍若無人さにお母ちゃんはブチ切れた! 第二王子に厳しい躾を始めた一介のメイドの噂は王家の人々の耳にも入る。 側近たちは不敬だと騒ぐが、国王と王妃、そして第一王子はその奮闘を見守る。 厳しくも愛情あふれるメイドの姿に、第一王子は恋をする。 後継者争いや、反王家貴族の暗躍などを乗り越え、元親子は国の在り方さえ変えていくのだった。

処理中です...