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外の世界へ
第35話 白狼の飼い主
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「さっさと来るんだ!!これ以上に抵抗すれば容赦せんぞ!!」
「はんっ、連れていかれたら奴隷にされるのに誰が付いて行くかよ!!」
「こ、この……ガキだと思って優しくすれば付け上がりおって!!」
「ちょっと!?」
少女の言葉に兵士の一人が激高して殴りかかろうとするが、それを見たナオは慌てて右手を前に向けて無詠唱で画面を展開した。男の拳が画面に衝突した瞬間、悲鳴を上げて拳を抑える。
「いでぇええっ!?」
「うわっ!?な、何だよ急に!!」
「こいつ、まだ抵抗する気か!?」
「いったい何をされた!?」
少女を救ったのはナオだが、傍から見れば殴りかかろうとした兵士が急に悲鳴を上げてうずくまったようにしか見えない。兵士達は少女が抵抗したと勘違いして無理やりに抑えつけた。
「もう許さんぞ!!さあ、行くぞ!!」
「いててっ!?ちょっと待てよ、今のはあたしじゃないぞ!?」
「うるさい!!もう言い訳は聞かんぞ!!」
「しっかりと罪を償わせてやる!!」
「あっ……」
自分の仕出かした行為のせいで少女は反抗したと勘違いされ、複数人の兵士に無理やりに連れていかれる光景にナオは罪悪感を抱く。もしかしたら自分が余計なことをしたせいで少女の罪が重くなったのではないかと思い、半端な優しさが仇となった――
――少女が連れ去られた後、ナオ達は宿屋にありつけた。イチノの三毛猫亭と比べると値段は高いが、部屋の中は綺麗で居心地が良かった。それだというのにナオの気分は優れず、先ほど連れていかれた少女の事を思い出すとため息を吐き出す。
「はあっ……」
「……ナオ、落ち込み過ぎ」
「そういうミズネは人の部屋で何してんの」
「スラミンと遊んでる」
「ぷるぷるぷるっ」
ミズネはナオが借りた部屋に入り込み、勝手にベッドの上でスラミンを天井近くまで放り投げて遊んでいた。スラミンと遊ぶというよりはスラミンで遊んでいるようにしか見えないが、ともかく彼女はため息ばかり吐いているナオに注意した。
「さっきの女の子は可哀想だけど、悪いことをしてたのは事実。そんなに同情する必要はない」
「でも、俺のせいで兵士の人たちに誤解されちゃったし……」
「私が見た限りではナオが助けなかったら女の子は暴行受けていた。あの状況ならとっさに助けても仕方ない」
「ありがとう」
ミズネの言葉にナオは少しだけ気が楽になり、あの女の子がせめて奴隷にはならないように祈る。気を取り直してナオは街で購入した地図を取り出し、それを机の上に広げて今後の旅の計画を考える。
王都までの距離を確認し、やはり乗り物無しでの移動は無理があった。途中、道が険しい場所がいくつか存在するため、この街で馬車と護衛を雇う必要があった。
「とりあえずは明日は護衛してくれる人を探しに行こう。俺は冒険者がいいと思うけど、どうかな?」
「私も賛成。できれば女の人がいい」
「どうして?」
「男二人だと美少女を奪い合う展開になるかもしれない」
「何を言ってるのかよく分からないけど……」
ミズネの提案で護衛を行うのは女性冒険者となり、ついでに馬車の運転もできる人なら心強い。明日は冒険者ギルドに立ち寄って良さそうな人材を探す事にした――
――その日の夜、ナオは早朝に目を覚ます。久々に安らかなベッドで眠れたお陰で疲れは取れたが、少し早く起き過ぎてしまった。隣の部屋でミズネは眠っているはずであり、彼女が起きているのかどうか確かめようとした。
(ミズネは……多分、寝てるな)
魔力感知の技術でナオは隣の部屋にミズネの魔力を探り、普段の彼女と比べて魔力が小さい事に気づく。人間は意識を失っている場合は魔力が極端に減るため、魔術師である彼女でも眠っている間は魔力が小さくなる。
暇つぶしがてらにナオは宿屋の裏庭に移動すると、魔法の練習でも行って朝食までの時間を潰そうと思った。師匠の元を離れてから十日以上が経過しており、森で暮らしていた頃よりも魔力操作の技術は磨かれていた。
(う~ん……特に変わりはないか)
画面に表示される文字を確認し、最初に見た時からナオの画面に変化はなかった。
――ステータス――
名前:ナオ
年齢:?托シ才
職業:魔術師
レベル:?托シ
獲得経験値:?
――能力値――
攻撃力:?托シ
防御力:?托シ
魔力:?托シ
魔法耐性:?托シ
―――――――――
日本語で記された文字は読めるのだが、恐らくは「数値」が本来表示される部分だけが訳の分からぬ文字列が表示されていた。これが何を意味するのか分からないが、前回と違う点が職業の項目が「村人」から「魔術師」に変化していた。
「あれ?何時の間にか文字が変わってる?」
何時から職業の項目が変化していたのかは知らないが、今現在のナオは「村人」ではなく「魔術師」として画面に反映されており、何となく嬉しく感じた。
(職業は魔術師か。ちょっとは先生に近付けたのかな?)
師であるマリアと比べればナオは魔術師としてまだまだ未熟な点はあるが、それでも確実に成長していた。少なくともミノタウロスを倒せるだけの実力はあり、もっとも古代魔法を極めればいずれは一流の魔術師の仲間入りできるかもしれない。
「さてと、今日はどうやって練習するかな……ん?」
ナオは宿屋の屋根の方から魔力を感知し、不思議に思って振り返るとそこには見覚えのある少女が立っていた。
「君は……昨日の!?」
「はあっ、はあっ……げっ!?あの時の兄ちゃん!?」
屋根の上に隠れていたのは少女で間違いなく、昨日捕まったはずの彼女が居る事にナオは驚く。どうやら屯所から脱走してきたのか随分と身体が汚れており、顔面に殴られた跡もあった。
怪我を負った状態で現れた彼女にナオは戸惑うが、相手は子供とはいえ犯罪者である。念のためにナオは右手を構えるが、それを見て少女は慌てて両手を上げた。
「ま、待ってくれよ!!別に兄ちゃんと戦うつもりはないって!!」
「……そうだとしても泥棒を放っておくわけにはいかないよ」
「だから待てって!!鞄を盗もうとしたのは謝るよ、でもあたしだって家族を助けたいんだ!!」
「昨日もそんな事を言ってたけど、どういう意味?」
少女の身元を調べた兵士によれば彼女には家族はおらず、孤児院で育ってきた事が判明している。彼女のいう家族とは何者なのかを問い質すと、少女は事情を話す。
「あたしの家族は人間じゃなくて狼なんだよ。孤児院から脱走した後、森の中で偶然に狼の赤ん坊を見つけてずっと育ててたんだ」
「狼?」
「正確に言えばただの狼じゃなくて魔獣(獣型の魔物の通称)なんだけど……」
狼の魔獣と聞いてナオは昨日に遭遇した「白狼種」を思い出す。まさかとは思うがナオは狼の正体を尋ねた。
「その狼、もしかして白い毛皮の狼だったりしない?」
「えっ!?なんでわかったんだ!?もしかして魔術師は心を読める話は本当だったのか!?」
「いや、それは知らないけど……その狼がどうかしたの?」
「この間、街の外で冒険者に襲われたんだよ!!あいつら何もしてないのに急に襲い掛かってっ来て、何とか逃げ切れたけど酷い怪我を負ったんだ!!だからあたしは怪我を治すために薬を買う金が必要なんだよ!!」
「それで盗みを働いていたわけか……」
まさか少女が昨日にナオ達が助けた白狼の飼い主だと判明し、怪我をした白狼のためにナオから金を盗もうとした事が判明した。事情はどうであれ彼女の行ったのは犯罪行為ではあるが、普通ならば人々から忌み嫌われる魔物だろうと、彼女は白狼の事を家族として大事にしているのは理解できた。
「はんっ、連れていかれたら奴隷にされるのに誰が付いて行くかよ!!」
「こ、この……ガキだと思って優しくすれば付け上がりおって!!」
「ちょっと!?」
少女の言葉に兵士の一人が激高して殴りかかろうとするが、それを見たナオは慌てて右手を前に向けて無詠唱で画面を展開した。男の拳が画面に衝突した瞬間、悲鳴を上げて拳を抑える。
「いでぇええっ!?」
「うわっ!?な、何だよ急に!!」
「こいつ、まだ抵抗する気か!?」
「いったい何をされた!?」
少女を救ったのはナオだが、傍から見れば殴りかかろうとした兵士が急に悲鳴を上げてうずくまったようにしか見えない。兵士達は少女が抵抗したと勘違いして無理やりに抑えつけた。
「もう許さんぞ!!さあ、行くぞ!!」
「いててっ!?ちょっと待てよ、今のはあたしじゃないぞ!?」
「うるさい!!もう言い訳は聞かんぞ!!」
「しっかりと罪を償わせてやる!!」
「あっ……」
自分の仕出かした行為のせいで少女は反抗したと勘違いされ、複数人の兵士に無理やりに連れていかれる光景にナオは罪悪感を抱く。もしかしたら自分が余計なことをしたせいで少女の罪が重くなったのではないかと思い、半端な優しさが仇となった――
――少女が連れ去られた後、ナオ達は宿屋にありつけた。イチノの三毛猫亭と比べると値段は高いが、部屋の中は綺麗で居心地が良かった。それだというのにナオの気分は優れず、先ほど連れていかれた少女の事を思い出すとため息を吐き出す。
「はあっ……」
「……ナオ、落ち込み過ぎ」
「そういうミズネは人の部屋で何してんの」
「スラミンと遊んでる」
「ぷるぷるぷるっ」
ミズネはナオが借りた部屋に入り込み、勝手にベッドの上でスラミンを天井近くまで放り投げて遊んでいた。スラミンと遊ぶというよりはスラミンで遊んでいるようにしか見えないが、ともかく彼女はため息ばかり吐いているナオに注意した。
「さっきの女の子は可哀想だけど、悪いことをしてたのは事実。そんなに同情する必要はない」
「でも、俺のせいで兵士の人たちに誤解されちゃったし……」
「私が見た限りではナオが助けなかったら女の子は暴行受けていた。あの状況ならとっさに助けても仕方ない」
「ありがとう」
ミズネの言葉にナオは少しだけ気が楽になり、あの女の子がせめて奴隷にはならないように祈る。気を取り直してナオは街で購入した地図を取り出し、それを机の上に広げて今後の旅の計画を考える。
王都までの距離を確認し、やはり乗り物無しでの移動は無理があった。途中、道が険しい場所がいくつか存在するため、この街で馬車と護衛を雇う必要があった。
「とりあえずは明日は護衛してくれる人を探しに行こう。俺は冒険者がいいと思うけど、どうかな?」
「私も賛成。できれば女の人がいい」
「どうして?」
「男二人だと美少女を奪い合う展開になるかもしれない」
「何を言ってるのかよく分からないけど……」
ミズネの提案で護衛を行うのは女性冒険者となり、ついでに馬車の運転もできる人なら心強い。明日は冒険者ギルドに立ち寄って良さそうな人材を探す事にした――
――その日の夜、ナオは早朝に目を覚ます。久々に安らかなベッドで眠れたお陰で疲れは取れたが、少し早く起き過ぎてしまった。隣の部屋でミズネは眠っているはずであり、彼女が起きているのかどうか確かめようとした。
(ミズネは……多分、寝てるな)
魔力感知の技術でナオは隣の部屋にミズネの魔力を探り、普段の彼女と比べて魔力が小さい事に気づく。人間は意識を失っている場合は魔力が極端に減るため、魔術師である彼女でも眠っている間は魔力が小さくなる。
暇つぶしがてらにナオは宿屋の裏庭に移動すると、魔法の練習でも行って朝食までの時間を潰そうと思った。師匠の元を離れてから十日以上が経過しており、森で暮らしていた頃よりも魔力操作の技術は磨かれていた。
(う~ん……特に変わりはないか)
画面に表示される文字を確認し、最初に見た時からナオの画面に変化はなかった。
――ステータス――
名前:ナオ
年齢:?托シ才
職業:魔術師
レベル:?托シ
獲得経験値:?
――能力値――
攻撃力:?托シ
防御力:?托シ
魔力:?托シ
魔法耐性:?托シ
―――――――――
日本語で記された文字は読めるのだが、恐らくは「数値」が本来表示される部分だけが訳の分からぬ文字列が表示されていた。これが何を意味するのか分からないが、前回と違う点が職業の項目が「村人」から「魔術師」に変化していた。
「あれ?何時の間にか文字が変わってる?」
何時から職業の項目が変化していたのかは知らないが、今現在のナオは「村人」ではなく「魔術師」として画面に反映されており、何となく嬉しく感じた。
(職業は魔術師か。ちょっとは先生に近付けたのかな?)
師であるマリアと比べればナオは魔術師としてまだまだ未熟な点はあるが、それでも確実に成長していた。少なくともミノタウロスを倒せるだけの実力はあり、もっとも古代魔法を極めればいずれは一流の魔術師の仲間入りできるかもしれない。
「さてと、今日はどうやって練習するかな……ん?」
ナオは宿屋の屋根の方から魔力を感知し、不思議に思って振り返るとそこには見覚えのある少女が立っていた。
「君は……昨日の!?」
「はあっ、はあっ……げっ!?あの時の兄ちゃん!?」
屋根の上に隠れていたのは少女で間違いなく、昨日捕まったはずの彼女が居る事にナオは驚く。どうやら屯所から脱走してきたのか随分と身体が汚れており、顔面に殴られた跡もあった。
怪我を負った状態で現れた彼女にナオは戸惑うが、相手は子供とはいえ犯罪者である。念のためにナオは右手を構えるが、それを見て少女は慌てて両手を上げた。
「ま、待ってくれよ!!別に兄ちゃんと戦うつもりはないって!!」
「……そうだとしても泥棒を放っておくわけにはいかないよ」
「だから待てって!!鞄を盗もうとしたのは謝るよ、でもあたしだって家族を助けたいんだ!!」
「昨日もそんな事を言ってたけど、どういう意味?」
少女の身元を調べた兵士によれば彼女には家族はおらず、孤児院で育ってきた事が判明している。彼女のいう家族とは何者なのかを問い質すと、少女は事情を話す。
「あたしの家族は人間じゃなくて狼なんだよ。孤児院から脱走した後、森の中で偶然に狼の赤ん坊を見つけてずっと育ててたんだ」
「狼?」
「正確に言えばただの狼じゃなくて魔獣(獣型の魔物の通称)なんだけど……」
狼の魔獣と聞いてナオは昨日に遭遇した「白狼種」を思い出す。まさかとは思うがナオは狼の正体を尋ねた。
「その狼、もしかして白い毛皮の狼だったりしない?」
「えっ!?なんでわかったんだ!?もしかして魔術師は心を読める話は本当だったのか!?」
「いや、それは知らないけど……その狼がどうかしたの?」
「この間、街の外で冒険者に襲われたんだよ!!あいつら何もしてないのに急に襲い掛かってっ来て、何とか逃げ切れたけど酷い怪我を負ったんだ!!だからあたしは怪我を治すために薬を買う金が必要なんだよ!!」
「それで盗みを働いていたわけか……」
まさか少女が昨日にナオ達が助けた白狼の飼い主だと判明し、怪我をした白狼のためにナオから金を盗もうとした事が判明した。事情はどうであれ彼女の行ったのは犯罪行為ではあるが、普通ならば人々から忌み嫌われる魔物だろうと、彼女は白狼の事を家族として大事にしているのは理解できた。
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