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カタナヅキ

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外の世界へ

第39話 怒りのナオ

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「こらっ!!勝手に人の部屋に入るのも問題なのに鍵を開けるなんて何を考えてるの!!そんな悪い子に育てた覚えはありません!!これからはおやつ抜きにするよ!?」
「……ごめんなさい、お母さん」
「か、変わった姉ちゃんだな……あ、それならさっきの話聞いてたんだろ?これからあたしも一緒に旅する事になるからよろしくな!!」
「分かった。妹」
「誰が妹だ!?」


ベッドの下で話を聞いていたミズネはネココの同行を認め、とりあえずはこれからの事を話し合う。今日は遅いので旅の準備は明日にする事を決めると、ネココは一足先にウルの元へ向かう事にした。


「じゃあ、あたしはウルを外で待たせてるから行くぞ」
「もう行くの?外まで送ってあげようか?」
「子供じゃあるまいし、平気だよ。それにあたし一人の方が早いからな」


獣人族のネココならば建物の上を駆け抜けるのもお手の物であり、ナオが同行すると逆に遅くなる心配があった。彼女は窓から外に出ようとすると、思い出したようにミズネが水筒を渡す。


「これ、念のために持って行って」
「何だこれ?」
「私の魔法で造り出した回復液が入ってる。怪我した時にこれを掛ければ大抵の傷は治せると思う」
「え、そんな事もできるの?全然知らなかった」
「ナオはあんまり怪我しないから」


ミズネの回復魔法で生成した水は保存も可能らしく、彼女から水筒を受け取ったネココは首にぶら下げた。彼女は今度こそ外に出ると、元気よく手を振って去っていく。


「じゃあ、明日の朝に北門で会おうな!!」
「分かった。ネココも気をつけるんだよ、夜更かししたら駄目だからね」
「ナオお母さんの言う事はちゃんと聞きなさい」
「そこは父ちゃんじゃねえの!?まあ、いいや。それじゃあ急ぐから!!」


ネココは勢いよく跳躍すると宿屋の屋根の上に移動し、そこからさらに跳躍して別の建物へ飛び移る。ナオ達は彼女を見送ると、とりあえずは明日に備えて色々と話し合う――





――夕食を終えた後、ナオは自分の部屋で旅支度を行っていると、ノックもせずにミズネが入り込んできた。彼女が急に部屋に入ってきた事にナオは驚くが、様子がおかしい事に気が付く。


「ナオ、あの子が厄介な事態に巻き込まれてるかもしれない」
「ミズネ!?いきなりどうしたの……って、あの子?」


ミズネは心配しているのはネココだと思われるが、どうして宿屋から立ち去った彼女が面倒事に巻き込まれているのか分かるのかと狩人は不思議に思う。するとミズネはネココに渡した水筒と同じ物を取り出す。


「さっきあの子に渡した水筒、私の魔法で造り出した水が入っている。だから私の魔力が混じっている」
「そ、それで?」
「ナオも知っているだろうけど、魔術師が作り出した魔法は感覚で居場所を捉える事ができる。魔力感知を使えばナオも感じ取れるはず」
「魔力感知……?」


試しにナオは魔力感知を発動すると、遠くの方でミズネと同じ魔力を感知した。目の前にミズネがいるというのに同じ魔力が別の場所に感じられたという事は、この魔力こそがネココに先ほど渡した魔法の水が入った水筒で間違いない。

夕食を食べる前にネココは外にいるはずのウルと合流するという話だったのだが、何故か彼女は街中に残っている事になる。しかも魔力は全く移動する気配がなく、その事からミズネは疑問を抱く。


「さっき、ナオが冒険者に襲われた話をした。その時にネココも顔を見られたんでしょ?」
「そうだけど……まさか、さっきの奴等が!?」
「嫌な予感がする。探しに行った方がいいかもしれない……私の魔法は数時間で効果が切れる」
「わ、分かった!!すぐに向かおう!!」
「念のために荷物は持って行った方がいいかもしれない」


ナオはネココの身を案じて荷物をまとめると、彼女を探すために外へ飛び出す。魔力感知を頼りに進んでいくと、二人が辿り着いたのは路地裏だった。


「ネココはこの先にいるのかな?」
「……分からない」


人の気配を感じない路地裏にナオとミズネは不安を抱くが、とりあえずは奥に進む。この時にナオは念のために魔法を発動させ、自分達の上空に画面を展開した。

路地裏を進んでいくと建物に取り囲まれた空き地が存在し、イチノでも似たような場所に訪れた事があったと思い出しながらナオは空き地に踏み込むと、ネココが落としたと思われる水筒を発見した。


「この水筒は……」
「私ので間違いない。どうやらここで落としたみたい」
「……建物の屋根の上を飛び移る時に落としたのかな?」


水筒を誤って落としただけなら心配する事はないのだが、ナオは周囲の建物の屋根を確認した。もしもネココが屋根の上を駆け抜けて移動していた場合、この空き地を跳び越える際に水筒を落としたと思われる。一応は屋根の上を確認しようとナオは画面を地上に下ろそうとした時、屋根の上に人影が現れた。


「お探しの奴はこいつか!?」
「その声は……まさか!?」
「……誰?」
「ううっ……す、すまねえ兄ちゃん」


声がした方に振り返ると、そこには縄で縛られたネココを抱えた男が立っていた。冒険者ギルドにてナオとぶつかった相手で間違いなく、夕方にナオに返り討ちにされた他の冒険者仲間も揃っていた。

どうやら彼等がネココを捕まえたらしく、彼女は酷い怪我をしていた。どうやってネココを捕まえたのかは分からないが、子供に手を出すような輩にナオは怒りを抱く。


「ネココを離せ!!」
「おっと、勘違いするなよ。犯罪者はてめえらの方だ!!」
「な、何言ってんだ!!あたしはもう……うぐぅっ!?」
「うるせえっ!!正義の味方の冒険者様に逆らった時点でてめえらは犯罪者なんだよ!!」
「……最低」


既にネココは罪人ではないはずだが、冒険者は自分達の邪魔をした彼女を捕まえ、ナオ達を誘き寄せる餌に利用したらしい。だが、気になるのはナオ達はここへ来たのはネココに渡した水筒の魔力を感知したからであり、もしも二人が水筒の魔力を気に掛けなければこの場所に訪れる理由はない。


「そもそもお前等、来るのが早過ぎるんだよ!!手紙には深夜に来るように書いただろうが!!」
「手紙?」
「何の話?」
「惚けんじゃねえっ!!この場所に来るように手紙をてめえらの宿屋に送り付けただろうがっ!!」


男の話を聞いてナオとミズネは何の話かと思ったが、状況を察するにネココを人質にして二人を誘き寄せようと男は場所と日時を示した手紙を用意した。本来であればナオ達が宿屋に残っていれば手紙を受け取れたのだろうが、二人は手紙が来るよりも前に目的地へ辿り着いた。

どうやら冒険者達にとっても二人がこんなにも早く来るのは想定外だったらしく、男は苛立った様子でネココを盾に近付く。どうやら二人が来るまでの間にネココは相当に痛めつけられたらしく、酷い怪我を負っていた。それを見てナオは激しい怒りを抱く。


「ネココ、大丈夫だからな。すぐに助けてやる」
「に、兄ちゃん……へへっ、頼んだぞ」
「このガキ共!!俺の事を舐めてるのか!?こいつの命がどうなってもいいのか!!」
「……それはこっちの台詞、貴方の方こそナオを本気で怒らせたらどうなるか分かってる?」
「な、何だと?」


ミズネの言葉にネココを抱えた男は戸惑うが、既にナオは彼からネココを奪い返す準備は整えていた。用心のために画面を既に展開していたのが功を奏し、相手から見えないようにナオは右手に画面を引き寄せ、後ろ手で画面を高速回転させていた。そして男がネココにこれ以上の危害を加える前に「旋風」を放つ。


「ネココ、目を閉じろっ!!」
「わ、分かった!!」
「ぎゃああっ!?」
「あ、兄貴!?」
「いったいどうしたんですか!?」


ネココに残酷な光景を見させないようにナオは注意すると、彼が繰り出した画面が男の片耳を切り裂き、悲鳴を上げて男は傷口を抑える。この時に拘束されていたネココは地面に倒れ、それを見てミズネは杖を構えた。


「アクアウィップ」
「うわぁっ!?」


杖先から水流が放たれると、まるで鞭のようにしなってネココの身体に巻き付き、ミズネの元に引き寄せる。彼女の「アクアウィップ」は本来は「アクアボール」の魔法と組み合わせる事で本領を発揮するが、少女一人を引き寄せるぐらいならば問題ないらしい。

人質を取り戻した以上、ナオが冒険者達に手加減をする理由はなくなった。彼等は都合が良い事に狭い路地裏に集まっており、夕方の時と同じようにナオは画面を拡大化させて放つ。


「吹き飛べっ!!」
「ぎゃああっ!?」
「うぎゃっ!?」
「ひいいっ!?」


正面から迫る画面に冒険者達は為す術もなく突き飛ばされ、路地裏の外側まで吹き飛ばされた。最後に残ったのは片耳から大量の血を流す男だけであり、ナオは子供に手を出した彼だけはただで許すつもりはない。
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