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外の世界へ
第49話 エルフとダークエルフ
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「正体を見られていない以上は大丈夫でしょうけど、このままあの子たちを行かせていいものかしら……いっそのこと、魔物だけでも始末しておくべきかしら」
ダークエルフは自分の手下として従えていたゴブリン達を失い、その代わりとしてナオ達が連れている白狼種を始末して配下にするべきか考えた。移動の要である白狼種を奪われたナオ達がどのように行動するのかも気にかかる。
「いえ、それは駄目ね。あの子の恨みを買うような真似をすれば嫌われてしまうわ。まだ確かめてもらいたい本はあるのに」
老人が所持していた魔導書は偽物だったが、実はダークエルフはもう一冊だけ魔導書を所持していた。こちらの魔導書は背表紙が黒に染まり、闇属性の魔力を醸し出していた。
この魔導書を手に入れるのにダークエルフは相当な苦労をかけられた。だから古代語をナオが本当に読めるのか確かめなければならず、もしも本物の魔導書だとしたら迂闊に手放すわけにはいかなかった。
(また適当な死体に操らせて持っていかせるべきかしら?いいえ、さすがに警戒されるわね)
既にナオ達は死霊人形の存在を把握し、先の戦闘ではナオもミズネも「魔力感知」の技術を習得しているのは間違いない。下手に死体を操らせて大切な魔導書を送り込めば奪われる可能性もある。
「どうしたものかしら……それといつまで見張っているつもり?いい加減に目障りだわ」
岩の上に座り込んだダークエルフは苛立った様子で正面に生えている大樹に視線を向けると、枝の上に立っている金髪の少年を睨みつけた。こちらの少年はマリアと同じく純粋なエルフであり、口元を布で隠した状態でダークエルフに弓を構えていた。
「さっきから私に殺気を向けるのは止めてもらえるかしら?」
「さっきから殺気《さっき》……意外とおちゃめな人っすね」
「……殺されたいようね?」
少年の言葉にダークエルフは杖を構えると、相手は慌てて弓を背中に戻して両手を上げる。少年は顔を隠したまま、自分には戦闘の意志がないことを伝える。
「勘弁してください!!からかったのは謝りますから!!」
「あら、頭の固いエルフにしては珍しく殊勝ね。それとも私の正体に気付かないほどに間抜けなのかしら?」
「いやいや、お姉さんの正体はわかってますよ。でも、うちも似たような立場なので」
「……なるほど、そういう事ね。道理で気配が薄いと思ったわ」
少年の言葉にダークエルフは納得した表情を浮かべ、それでも彼女は杖を手にすると少年に向けて獰猛な笑みを浮かべる。
「それでは貴方は何者かしら?私への刺客ではないとしたら誰の差し金かしら?」
「ちょ、ちょっと!!それは誤解です!!別にお姉さんが目的で来たわけじゃないので見逃してほしいっす!!」
「私に弓を構えておいてよくもそんな台詞を吐けるわね」
ダークエルフは少年が少し前から自分に敵意を向けていたのは勘づいており、もしも手を出してくれば即座に始末するつもりだった。だが、いつまでも仕掛けてこないので疑問を抱いた彼女は声をかけたに過ぎない。
少年の目的が自分ではないのだとしたら敵意を向けられるいわれはなく、何の目的があって自分を狙うのか問いただす。すると少年は頭を掻きながら忠告した。
「あたしは別にお姉さんと争うつもりはないっすけど、あの子たちに手を出された困るんすよ」
「あの子たち?もしかしてお友達だったのかしら?」
「正確に言えばこれから友達になる予定というか……」
「……意味が分からないわね。もういいわ、消えなさい」
意味不明な言葉を告げた少年にダークエルフは興味が尽きて指鳴らす。その瞬間、彼女が座り込んでいた岩に人面が浮き上がり、地中から手足の形をした岩の塊が出現した。
「ゴォオオオッ!!」
「これは……ゴーレム!?そんなのまで死霊人形にしてたんすか!?」
「覚えておきなさい。元が生物であれば私はどんな存在でも操れるのよ」
ダークエルフが腰かけていた岩石の正体は「ゴーレム」と呼ばれる魔物であり、本来は火山や岩山などにしか生息しない種なのだが、ダークエルフの魔法によって死骸を操って同行させていた。
全身が岩石で構成されたゴーレムは並の魔物では太刀打ちできず、硬度だけならばミノタウロスさえも上回る。少年が足場としている大樹に近づくと、ゴーレムは全力で体当たりを仕掛けた。
「ゴォオオオッ!!」
「うひゃっ!?」
大樹に強烈な衝撃が伝わり、少年は枝の上から落ちてしまう。落ちてくる彼女をゴーレムは捕まえようとしたが、寸前で少年は矢を撃ち込む。
「退散っす!!」
「ゴオッ!?」
「……逃げ足は速いわね」
放たれた矢には細い糸が括り付けられており、少年の身体と繋がれていた。少年は別の樹木に矢を撃ち込んで落下を阻止すると、まるで猿のように身軽に樹木の枝の上を飛び移って姿を消す。
力は強いが動きが鈍重なゴーレムでは少年を追う事はできず、ダークエルフは見逃すしかなかった。どこぞのしれないエルフを追いかけるよりもダークエルフはナオを利用して魔導書の解析を試みるのが先だった。
「さて、次はどんな手を使おうかしら?」
まるで小さな子供がいたずらを思いついたような無邪気な笑顔を浮かべながら、ダークエルフはゴーレムを連れて森の奥へと消えた――
ダークエルフは自分の手下として従えていたゴブリン達を失い、その代わりとしてナオ達が連れている白狼種を始末して配下にするべきか考えた。移動の要である白狼種を奪われたナオ達がどのように行動するのかも気にかかる。
「いえ、それは駄目ね。あの子の恨みを買うような真似をすれば嫌われてしまうわ。まだ確かめてもらいたい本はあるのに」
老人が所持していた魔導書は偽物だったが、実はダークエルフはもう一冊だけ魔導書を所持していた。こちらの魔導書は背表紙が黒に染まり、闇属性の魔力を醸し出していた。
この魔導書を手に入れるのにダークエルフは相当な苦労をかけられた。だから古代語をナオが本当に読めるのか確かめなければならず、もしも本物の魔導書だとしたら迂闊に手放すわけにはいかなかった。
(また適当な死体に操らせて持っていかせるべきかしら?いいえ、さすがに警戒されるわね)
既にナオ達は死霊人形の存在を把握し、先の戦闘ではナオもミズネも「魔力感知」の技術を習得しているのは間違いない。下手に死体を操らせて大切な魔導書を送り込めば奪われる可能性もある。
「どうしたものかしら……それといつまで見張っているつもり?いい加減に目障りだわ」
岩の上に座り込んだダークエルフは苛立った様子で正面に生えている大樹に視線を向けると、枝の上に立っている金髪の少年を睨みつけた。こちらの少年はマリアと同じく純粋なエルフであり、口元を布で隠した状態でダークエルフに弓を構えていた。
「さっきから私に殺気を向けるのは止めてもらえるかしら?」
「さっきから殺気《さっき》……意外とおちゃめな人っすね」
「……殺されたいようね?」
少年の言葉にダークエルフは杖を構えると、相手は慌てて弓を背中に戻して両手を上げる。少年は顔を隠したまま、自分には戦闘の意志がないことを伝える。
「勘弁してください!!からかったのは謝りますから!!」
「あら、頭の固いエルフにしては珍しく殊勝ね。それとも私の正体に気付かないほどに間抜けなのかしら?」
「いやいや、お姉さんの正体はわかってますよ。でも、うちも似たような立場なので」
「……なるほど、そういう事ね。道理で気配が薄いと思ったわ」
少年の言葉にダークエルフは納得した表情を浮かべ、それでも彼女は杖を手にすると少年に向けて獰猛な笑みを浮かべる。
「それでは貴方は何者かしら?私への刺客ではないとしたら誰の差し金かしら?」
「ちょ、ちょっと!!それは誤解です!!別にお姉さんが目的で来たわけじゃないので見逃してほしいっす!!」
「私に弓を構えておいてよくもそんな台詞を吐けるわね」
ダークエルフは少年が少し前から自分に敵意を向けていたのは勘づいており、もしも手を出してくれば即座に始末するつもりだった。だが、いつまでも仕掛けてこないので疑問を抱いた彼女は声をかけたに過ぎない。
少年の目的が自分ではないのだとしたら敵意を向けられるいわれはなく、何の目的があって自分を狙うのか問いただす。すると少年は頭を掻きながら忠告した。
「あたしは別にお姉さんと争うつもりはないっすけど、あの子たちに手を出された困るんすよ」
「あの子たち?もしかしてお友達だったのかしら?」
「正確に言えばこれから友達になる予定というか……」
「……意味が分からないわね。もういいわ、消えなさい」
意味不明な言葉を告げた少年にダークエルフは興味が尽きて指鳴らす。その瞬間、彼女が座り込んでいた岩に人面が浮き上がり、地中から手足の形をした岩の塊が出現した。
「ゴォオオオッ!!」
「これは……ゴーレム!?そんなのまで死霊人形にしてたんすか!?」
「覚えておきなさい。元が生物であれば私はどんな存在でも操れるのよ」
ダークエルフが腰かけていた岩石の正体は「ゴーレム」と呼ばれる魔物であり、本来は火山や岩山などにしか生息しない種なのだが、ダークエルフの魔法によって死骸を操って同行させていた。
全身が岩石で構成されたゴーレムは並の魔物では太刀打ちできず、硬度だけならばミノタウロスさえも上回る。少年が足場としている大樹に近づくと、ゴーレムは全力で体当たりを仕掛けた。
「ゴォオオオッ!!」
「うひゃっ!?」
大樹に強烈な衝撃が伝わり、少年は枝の上から落ちてしまう。落ちてくる彼女をゴーレムは捕まえようとしたが、寸前で少年は矢を撃ち込む。
「退散っす!!」
「ゴオッ!?」
「……逃げ足は速いわね」
放たれた矢には細い糸が括り付けられており、少年の身体と繋がれていた。少年は別の樹木に矢を撃ち込んで落下を阻止すると、まるで猿のように身軽に樹木の枝の上を飛び移って姿を消す。
力は強いが動きが鈍重なゴーレムでは少年を追う事はできず、ダークエルフは見逃すしかなかった。どこぞのしれないエルフを追いかけるよりもダークエルフはナオを利用して魔導書の解析を試みるのが先だった。
「さて、次はどんな手を使おうかしら?」
まるで小さな子供がいたずらを思いついたような無邪気な笑顔を浮かべながら、ダークエルフはゴーレムを連れて森の奥へと消えた――
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