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カタナヅキ

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外の世界へ

第54話 魔力の抑制

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「残念ですけど、この橋を渡って移動するのは諦めた方がいいですよ。赤毛熊は執念深い性格ですから、縄張りを荒らした奴を絶対に許しませんから」
「それは困る。でも、私達はこの先に用事がある」
「ちょちょっ、話聞いてました!?赤毛熊に襲われたら大変ですよ!!」
「問題ない。私達は強いから」


少年の忠告を聞いてもミズネは下がるつもりはなく、彼女はナオ達にも橋を渡るように促す。赤毛熊が橋の向こう側にいると知って商団の人間は不安がるが、この先を進まなければサンノへはたどり着けない。


「よし、進もう」
「ええっ!?大丈夫なのか?赤毛熊が現れたらどうするんだよ」
「その時は俺とミズネが何とかするよ」
「そ、そうですな……ミノタウロスを倒したこともあるナオ殿が一緒ならば心強いですな」
「まあ、兄ちゃんと姉ちゃんが一緒なら大丈夫か。よし、怯えてないで行くぞ」
「ウォンッ……」
「ぷるぷるっ」


ナオの魔術師としての腕前を知っているドルトンは彼を信じ、狼車と共に商団も橋を渡り始めた。その様子を見てエルフの少年は頭を抱え、彼は枝の上から飛び降りた。


「もう、どうなっても知りませんからね。赤毛熊が現れたら自力でなんとかしてくださいよ!!」
「ご忠告どうも」
「えっと、君はエルフだよね?俺たちは人間だけど、どうして助けてくれたの?」


エルフは基本的には自然を破壊する人間を毛嫌いすると思っていたが、マリアとは違ってエルフの少年は初対面の相手でも普通に対応してくれた。


「確かにあたしはエルフですけど、別にエルフ全員が人間嫌いというわけでもないっすよ」
「へえ、そうなんだ。でも先生以外のエルフなんて初めて見たな」
「あたしはエルフを見るのは初めてだぞ」
「同じく」


ネココとミズネはエルフを見るのは初めてらしく、エルフは滅多に人前に姿を現さないため、物珍しそうに少年を見つめる。女の子たちにじっと見られて恥ずかしいの少年は胸元を隠すそぶりを行う。


「いやんっ、そんなに見つめられると照れるっす」
「なんだか変わったしゃべり方してるけど、それって方言なの?」
「この話し方は生まれつきっすね」
「……エルフは魔法に優れた種族だと聞いてる。でも、あなたからは魔力はほとんど感じられない」
「あれ、言われてみれば……」


魔力感知を会得しているミズネがエルフの少年に気付かなかったのは、彼の魔力が全くと言っていいほどに感じられなかったのが原因だった。ナオも今更ながらに少年の魔力が感知できない事に疑問を抱く。

生物であるのならば自然と魔力が醸し出されるはずなのだが、少年の魔力はまるで小動物と大差ないほどに小さく、人間よりも魔法に優れた種族のエルフならばあり得ない魔力量だった。


「へえ~お二人は魔力感知を身に着けてるんですね。でも、魔力を抑える方法はどうやら知らないようですね」
「魔力を抑える?」
「……まさか、魔力を抑制している?そんな高等技術は一流の魔術師でも難しいはずなのに」
「覚えるのに苦労しますけど、習得してみると意外と便利ですよ」


エルフの少年は魔力を体内に抑え込む事ができるらしく、本来の魔力を隠し通す事で並の魔術師の魔力感知では気付かれることはないという。そんな事が実際にできるのかとナオは不思議に思うと、そんな彼の顔を見てエルフの少年は腕を広げる。


「あ、その顔は信じてないみたいっすね?いいでしょう、それならあたしの魔力を見せてあげるっす!!」
「魔力を見せるって……うわっ!?」
「な、なんだ!?」
「これは……魔力を解放した!?」
「ウォンッ!?」
「ぷるぷるっ!?」


少年の身体から魔力が一気に噴き出し、魔力感知を習得しているナオとミズネは驚き、普通の人間よりも五感が優れる獣人族のネココも肌で感じ取る。魔力を感知できない人間からすればエルフの少年の変化には気づけないが、ナオ達は少年の存在感が一気に増したような感覚に陥った。


(凄い魔力だ!!これだけの魔力を隠してたなんて……)


エルフなだけはあって魔力量は並の人間とは比べ物にならず、彼の魔力量はナオやミズネにも匹敵した。だが、魔力を解放する行為は疲れるのか少年は額の汗を拭いながら魔力を抑え込む。


「ふうっ、流石に魔力を全開にするのは疲れますね。でも、これであたしの話が本当だって信じてくれました?」
「う、うん」
「なんだかよくわからないけど、凄い姉ちゃんだな!!」
「ちょ、ちょっと!!あたしは男っすよ!!この恰好見れば分かるでしょ?」
「……でも、口調も女の子っぽい。本当に男?」
「かっち~んっ!!なら証拠見せましょうか!?この場で脱ぎますよ!!」
「ちょ、ちょっと!!何してんの!?」


ミズネの言葉に少年は怒ったようにズボンに手を伸ばすが、それを慌ててナオは止めた。中性的な顔立ちと華奢な体格をしているために一見すると女の子にも見えるが、本人が男性と言い張っている以上は信じることにした。
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