ステータス画面がバグったのでとりあえず叩きます!!

カタナヅキ

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外の世界へ

第56話 打ち砕かれた自信

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――ウガァアアアアッ!!


山中にまで響き渡るほどの赤毛熊の咆哮に全員が硬直し、木々に停まっていた鳥たちが一斉に逃げ出す。あまりの迫力にナオ達は身動きすらできず、全身から冷や汗が止まらない。

先ほどまでは微塵の気配さえも発していなかった赤毛熊だが、姿を晒した途端に凄まじい気迫を放つ。ナオは赤毛熊の身体が実物よりも大きく見えたが、脳裏にミノタウロスの姿が思い浮かぶ。


(怯えるな!!あいつと比べたら大差ないだろ!!)


赤毛熊は恐るべき相手だが、ミノタウロスという強敵を打倒したナオは他の誰よりも早くに正気を取り戻す。そして姿を晒した赤毛熊に対して魔法を繰り出す。


(この一撃で仕留める!!)


ミノタウロスさえも倒した自分の魔法ならば赤毛熊でも倒せると信じ、手元で高速回転させた画面を放つ。師であるマリアの魔法をあやかって「旋風」と名付けたナオの攻撃が赤毛熊の首元に迫る。だが、攻撃が当たる前に赤毛熊が毛を逆立てて慌てて頭を下げて攻撃を躱した。


「ガアッ!?」
「なっ!?」


まるで自分の作り出したステータス画面が見えているかのように攻撃を回避した赤毛熊にナオは動揺し、慌てて画面を操作して今度は背後から狙う。死角からの攻撃ならば当てられると思ったが、赤毛熊は今度は背中の毛皮を逆立たせて身体を反らして回避する。


「ウガァッ!!」
「ま、また避けた!?」
「ナオ、どうしたの?」
「な、何してんだよ!!いつも通りに兄ちゃんの魔法でぶっ飛ばしてくれよ!?」


ナオの攻撃が回避されている事は他の者は気付いておらず、やはり画面は自分だけにしか見えていないのだとナオは確信した。しかし、それならばどうして赤毛熊に当たらないのか分からずに戸惑う。


(まさかこいつ、本当に俺の魔法が見えているのか!?)


今までどんな相手もナオの魔法を目視することはできなかった。しかし、赤毛熊はナオの魔法が迫る瞬間に回避行動を取り、当たれば確実に致命傷を与えられる攻撃なのに避けられてしまう。

これまでの敵はナオの画面が見えなかったからこそ不意を突くことができた。しかし、赤毛熊は見えぬはずの画面を察知して回避するため、ナオの攻撃が通じない。その事実にナオは自分の魔法の自信が揺らいでしまう。


(当たらなければ勝てないのに……)


初めて魔法を見破られたと思い込んだナオは動揺し、そんな彼の態度に気付いてエリオが肩を掴む。


「兄貴、落ち着いて!!」
「……エ、エリオ?」
「あいつは兄貴の魔法が見えてるわけじゃないっす!!多分、風の流れを感じ取って攻撃を避けてるだけっすよ!!」
「風の流れ?」


エリオの推察では赤毛熊はナオの魔法が見えているわけではなく、全身に生えている体毛で空気の乱れを感じ取り、迫りくる画面を察知しているのではないかと考えた。実際にナオが攻撃を仕掛けたとき、画面がある程度の距離まで迫ると赤毛熊の毛が逆立った。

見えなくてもナオの画面は実体が存在するため、空中に浮揚させた状態でも高速回転を加えれば周囲に風が流れ込む。その風を体毛で受けることで攻撃が近づいていると予測し、回避しているのではないかとエリオは考えた。


「大丈夫!!兄貴の魔法は無敵です!!あんな奴に負けるはずがありませんよ!!」
「……ありがとう、落ち着いたよ」


エリオの言葉にナオは正気を取り戻し、冷静に考えれば彼の発言に色々と気になる点はあるが、今は赤毛熊を倒すことに専念した。


(さっきの攻撃でこいつは警戒している。仕掛けるなら今のうちだけど……)


先の二度の攻撃は無駄ではなく、得体のしれない攻撃を仕掛けられた赤毛熊は警戒したようにナオ達に近づかない。その様子を見てナオはどのように攻撃をするのか迷っていると、隣に立つエリオが弓矢を構えた。


「あたしが隙を作るっす。兄貴は止めをお願いします」
「えっ?」
「おいおい、あんな化け物に矢なんて通じるのか!?」
「下手な攻撃はやめておいた方がいい。刺激して暴れ出したら大変なことになる」
「ふふんっ、エルフの弓術を舐めないでほしいっすね」


弓を構えるエリオに全員が不安を抱くが、彼は赤毛熊に狙いを定めると矢を放つ。放たれた矢はまっすぐに赤毛熊の顔面に迫るが、反射的に赤毛熊は腕を振り払って矢を打ち落とそうとした。


「ガアッ……!?」
「曲がれっ!!」


しかし、矢が赤毛熊の腕に当たる直前にエリオが声を上げると、矢の軌道が直角に落ちて地面にめり込んだ。その次の瞬間、矢が高速回転して地面の砂を巻き上げて赤毛熊は土煙に覆われてしまう。


「ウガァッ!?」
「今です!!攻撃を仕掛けるなら早く!!」
「こ、これって!?」
「……よくわからないけど、今のうちに!!」


砂煙を巻き上げた矢にナオは驚くが、ミズネはいちはやく杖を構えた。彼女は先ほど川の水をくみ上げて作り出した水の塊は健在であり、砂煙にめがけて放つ。この時に水の塊を「槍」に変化させて打ち込む。
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