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カタナヅキ

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外の世界へ

第60話 商人の意地

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「後でドルトンさんのお店に行ってお礼を言わないとね」
「そうっすね。あ、そうだ兄貴……実は後で話しておきたい事があるんですけど、聞いてもらえますか?」
「ん?別にいいけど……」


エリオは昨夜に遭遇した死霊使いの女性の件を話していないことを思い出し、街に入った後でナオに話す事にした。先に今日の宿屋を手配して落ち着いた場所で話そうと決め、街に入る際に警備兵に宿屋の場所を窺う。


「この街でお勧めの宿屋はありますか?」
「そうですね、一番有名なのは白猫亭ですね。街の中心の方にある白猫の看板が立てかけられた宿屋なのですぐにわかると思います」
「白猫亭……三毛猫亭と似てるのが気になるな」
「もしかしたらあのお婆さんの親戚が経営しているのかも」


イチノの街でナオ達は宿泊した三毛猫亭は老婆が経営する店だったが、どうやらサンノには似たような名前の宿屋があるらしく、とりあえずは街の中心に向かって移動を開始する。

街道を狼車が通り過ぎると道行く人たちは驚いた表情を浮かべ、白狼種が車を引く場面など滅多に見られる光景ではない。馬車よりも移動が速いとはいえ、ウルは街中では目立ちすぎる事にナオは悩む。


(やっぱりウル君は人目を引くな。でも、一人で街の外に残すのも可哀そうだし……)


ウルだけを街の外に待機させるのは不憫に思い、街の中にいる間は好奇な視線を向けられるのは耐えねばならない。ナオは一刻も早く目的の宿屋に辿り着くことを祈っていると、運転していたネココが急に指さす。


「なあ、兄ちゃん。あれってさっきのおじさんじゃないか?」
「おじさん?」
「……ドルトンさん」


ネココが指さした先に全員が視線を向けると、そこにはドルトンの姿があった。彼は大きな店の前で立ち尽くしており、傍には普通の人間の倍以上の背丈を誇る男性の姿があった。


(あれって巨人族か!?しかも随分と強そうだぞ!!)


ドルトンの前に立っている「巨人族」と思われる男性は背丈が四メートル近く存在し、筋骨隆々とした体形をしていた。背中には大きな斧を背負っており、ドルトンを相手に凄んだ表情を浮かべる。


「おいっ!!どういう事だ!!この俺に武器を売れないだと!?」
「ですからうちの店ではツケの支払いは承っておりません。申し訳ございませんが、その値段では装備を売る事はできません」
「何だと、この俺を誰だと思っている!?銀級冒険者のダイアだぞ!!」
「勿論、存じておりますとも。しかし、いくら高名なお客様であろうと代金を支払ってもらわなければ商品はお売りできませんな」


巨人族の男性は名前はダイアというらしく、ドルトンの店の商品を購入しに訪れたようだが、金が足りないのでツケで支払いを済ませようとしている様子だった。ドルトンは自分の何倍もの大きさを誇るダイアを相手にも一歩も引かずに堂々と言い返す。


「ぐぬぬっ、頭の固い爺さんだな!!金ならすぐに用意してやる!!次の依頼が終われば報酬が手に入るんだ!!」
「それでは仕事を終わらせて報酬金を得てからうちの店に来るのはどうでしょうか?」
「それじゃあ遅すぎる!!この店で売っている武器じゃないと仕事もままならんのだ!!」
「我が店の商品をそこまで気に入ってくださるのはありがたい話ですが、代金を支払ってもらわなければこちらも商品を引き渡す事はできませんので、どうかお引き取りください」
「爺!!この俺をおちょくっているのか!?」



ダイアという冒険者はどうしても仕事の前にドルトンの商品を手に入れたいようだが、どんな理由があろうと代金を支払えないのであればドルトンは商品を売るつもりはなく、相手が冒険者であろうと物怖じせずに言い返す。その姿にナオは格好よく思う一方、少し不安を抱いた。


(大丈夫かな?ドルトンさんに暴力振るおうとしたら俺が止めないと……)


ナオはいざという時のために自分が出向くべきかと思った時、ダイアは我慢の限界を迎えたのかドルトンに手を伸ばす。


「いいから俺の言う通りに……ぬおっ!?」
「おっと、暴力は勘弁してもらえますかな」
「「「えっ!?」」」


ダイアが腕を伸ばしてきた瞬間、ドルトンは相手の腕を掴んで逆に引き寄せる。まさか自分の方から引っ張られると思わなかったダイアは地面に膝を崩し、そんな彼にドルトンは微笑む。


「私も若いころは冒険者や傭兵など齧っておりましてな……これ以上に店の前で騒ぐようならば冒険者ギルドに苦情を申し付けますぞ」
「ぐっ!?こ、この……」
「おい、そこで何をしている!!これは何の騒ぎだ!?」


巡回中の警備兵が駆けつけ、それを見てダイアは流石にまずいと思ったのかドルトンから腕を振り払い、苛立った表情で怒鳴り返す。


「ちっ、今日の事は忘れないからな!!この俺に恥をかかせたことを後悔させてやる!!」
「……またのご来店をお待ちしております。今度はちゃんと代金を持ってきてください」
「くそがっ!!」
「おい、待て!!またお前か!!」
「冒険者だからと言って横暴が許されると思うなよ!!」
「うるせえっ!!俺についてくるんじゃねえっ!!」


逃げるように去っていくダイアに警備兵は後を追いかけ、それを見送ったドルトンはため息を吐き出す。そんな彼の元に狼車は訪れると、ドルトンはナオ達に気付いて慌てて頭を下げた。
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