World of Fantasia

神代 コウ

文字の大きさ
1,027 / 1,646

襲撃後のリナムル

しおりを挟む
 DNAとは生物の身体を作る設計図とも呼ばれている。DNAは細胞核内にあり、細胞を摂取すればDNAは容易に摂取することができる。血液中にもDNAが存在している為、ダラーヒムはそこから直接変化を見ようとしていた。

 彼らが森で遭遇しアズールが幻覚作用を受けた獣は、生物として別のモノへの変異が見られた。背中から生えていた本体とは別の物と見られる獣の腕が無数に生え揃い、羽のような働きをしていたことから、本体が生物として別の物へと変化していたのか。

 つまり、何らかの要因によってDNAが変化し別の生き物へと変わったのか。それとも血液自体に何らかの作用が引き起こされる要因となるものが仕込まれていたのか。

 獣人達とダラーヒムが捕らえた獣達を運んでいる間に、シンは姿の見えないアカリと紅葉を心配していた。リナムルにいたミアに、シン達がアズールらとリナムルを立った後の動向を伺う。

 そこでシンは、獣人達に囚われていた際の食事に獣の力を付与する薬品が仕込まれていたことを知る。慣れない力の目覚めに本来の力が出せず、スキルも使用できない状態になっていた。

 だがミア達は、獣人族の注射により獣の力を抑制し、身体に馴染ませることに成功していたのだ。その分、現在もシンの身体に異変を起こしている副作用の存在を知らなかったようだ。

 「兎に角今は、アカリと紅葉が心配だ・・・。何処か安全な場所や、避難所のような場所はないのか?」

 「それなら私が知っている。案内しよう」

 シン達の元へやって来たのは、アカリと紅葉を巨大樹の建物へ運んだ張本人であるガルムだった。現地を見て来たという彼によると、シン達が運び込まれた場所がリナムルでも一際目だつ名所であり、獣人族がアジトにしている巨大樹だった。

 そこでは今、何処からか現れた捕らえていたはずの人間達や非戦闘員の獣人達が避難しているとのことだった。それだけではなく、ケツァルが獣人族の存亡を願い同盟を結ぼうとしていたエルフ族も来ているのだという。

 彼らの会話を耳にしたのか、アズール達と被検体となる獣を運んでいたケツァルが寄って来る。

 「エルフ族が来てくれたのか?」

 「ケツァル!やはりアンタの仕業だったのか?だがこんな事、アズールやガレウスが知ったら・・・」

 「分かっている。だが、彼らの協力無くしてここまで被害を抑えられたか?」

 「それは・・・」

 巨大樹に集められていた者達の様子を見たのなら、ケツァルの言っていることが理解できる筈だ。多くの獣人達が虫の息で運び込まれ、生死を彷徨う者達も大勢目の当たりにしたガルム。

 そして看病に勤しむ人間達の姿を見て、本当に全ての人間が悪なのかと自身の中にある固定概念に疑問を抱いていた。アカリ達を運び込んだ先で、他の獣人からも諭された。

 言われてきた事が全てではない。己の目で見た真実こそ、本当に自身の思想を導く判断材料になるということを。

 ガルムの反応から、すでに彼も人間に対する考え方を改めていると確信したケツァルは、そのまま彼の返事も聞かぬままシン達に巨大樹へ共に向かおうと提案する。

 「どうやらお前以外のお仲間は薬品投与を済ませたようだな・・・。アジトに行けばお前の身体も通常の状態へと戻せる薬がある。それも、我々のような気配に関する能力を得たままに」

 「アンタは何故、俺達にそんなことを?これも計算してやった事なのか?」

 今にして思えば、ケツァル派の者達と思われる者達によって付与された“獣の力“は、この襲撃に合わせて戦力となる者を味方につける為にした事とも考えられる。

 「そんな事はない。この襲撃との関係性はなく全くの偶然だ。ただ・・・」

 俯いて話すケツァルの表情が曇る。襲撃は偶然であったが、別の騒動はs想像していたようだ。恐らくそれはガレウスやガレウス派の者達との対立に関係するものなのだろう。

 しかし、今シン達にとってそれはどうでもいい事だった。獣人族による内輪揉めに首を突っ込む気のなかったミアは、ケツァルが話し出す前に口を挟み、この会話を終わらせた。

 「そんな事はどうでもいい。すぐにアカリ達のいる元へ案内してくれ。それともまだアタシら“人間“を疑うってか?」

 「いいや、少なくとも私や今巨大樹に避難している者達はそんなこと思っていない筈だ。例えガレウスの考えに共鳴する者達であっても、少しは考えさせられた筈だからな・・・」

 ケツァルはガルムと共に、アジトである巨大樹へ向かうとアズールに報告する。調査の方は共に窮地を乗り越えてきた、信頼に値するダラーヒムに任せ、調査の準備に協力していたツクヨにも仲間と共に巨大樹へ向かうよう提案する。

 まだ足元がふらついていたシンはツクヨに支えられながら、ミアは気を失うツバキを抱えてケツァル達の後を追う。
しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

異世界に転移した僕、外れスキルだと思っていた【互換】と【HP100】の組み合わせで最強になる

名無し
ファンタジー
突如、異世界へと召喚された来栖海翔。自分以外にも転移してきた者たちが数百人おり、神父と召喚士から並ぶように指示されてスキルを付与されるが、それはいずれもパッとしなさそうな【互換】と【HP100】という二つのスキルだった。召喚士から外れ認定され、当たりスキル持ちの右列ではなく、外れスキル持ちの左列のほうに並ばされる来栖。だが、それらは組み合わせることによって最強のスキルとなるものであり、来栖は何もない状態から見る見る成り上がっていくことになる。

俺は善人にはなれない

気衒い
ファンタジー
とある過去を持つ青年が異世界へ。しかし、神様が転生させてくれた訳でも誰かが王城に召喚した訳でもない。気が付いたら、森の中にいたという状況だった。その後、青年は優秀なステータスと珍しい固有スキルを武器に異世界を渡り歩いていく。そして、道中で沢山の者と出会い、様々な経験をした青年の周りにはいつしか多くの仲間達が集っていた。これはそんな青年が異世界で誰も成し得なかった偉業を達成する物語。

異世界召喚された巫女は異世界と引き換えに日本に帰還する

白雪の雫
ファンタジー
何となく思い付いた話なので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合展開です。 聖女として召喚された巫女にして退魔師なヒロインが、今回の召喚に関わった人間を除いた命を使って元の世界へと戻る話です。

虚弱生産士は今日も死ぬ ―遊戯の世界で満喫中―

山田 武
ファンタジー
今よりも科学が発達した世界、そんな世界にVRMMOが登場した。 Every Holiday Online 休みを謳歌できるこのゲームを、俺たち家族全員が始めることになった。 最初のチュートリアルの時、俺は一つの願いを言った――そしたらステータスは最弱、スキルの大半はエラー状態!? ゲーム開始地点は誰もいない無人の星、あるのは求めて手に入れた生産特化のスキル――:DIY:。 はたして、俺はこのゲームで大車輪ができるのか!? (大切) 1話約1000文字です 01章――バトル無し・下準備回 02章――冒険の始まり・死に続ける 03章――『超越者』・騎士の国へ 04章――森の守護獣・イベント参加 05章――ダンジョン・未知との遭遇 06章──仙人の街・帝国の進撃 07章──強さを求めて・錬金の王 08章──魔族の侵略・魔王との邂逅 09章──匠天の証明・眠る機械龍 10章──東の果てへ・物ノ怪の巫女 11章──アンヤク・封じられし人形 12章──獣人の都・蔓延る闘争 13章──当千の試練・機械仕掛けの不死者 14章──天の集い・北の果て 15章──刀の王様・眠れる妖精 16章──腕輪祭り・悪鬼騒動 17章──幽源の世界・侵略者の侵蝕 18章──タコヤキ作り・幽魔と霊王 19章──剋服の試練・ギルド問題 20章──五州騒動・迷宮イベント 21章──VS戦乙女・就職活動 22章──休日開放・家族冒険 23章──千■万■・■■の主(予定) タイトル通りになるのは二章以降となります、予めご了承を。

通販で買った妖刀がガチだった ~試し斬りしたら空間が裂けて異世界に飛ばされた挙句、伝説の勇者だと勘違いされて困っています~

日之影ソラ
ファンタジー
ゲームや漫画が好きな大学生、宮本総司は、なんとなくネットサーフィンをしていると、アムゾンの購入サイトで妖刀が1000円で売っているのを見つけた。デザインは格好よく、どことなく惹かれるものを感じたから購入し、家に届いて試し切りをしたら……空間が斬れた!  斬れた空間に吸い込まれ、気がつけばそこは見たことがない異世界。勇者召喚の儀式最中だった王城に現れたことで、伝説の勇者が現れたと勘違いされてしまう。好待遇や周りの人の期待に流され、人違いだとは言えずにいたら、王女様に偽者だとバレてしまった。  偽物だったと世に知られたら死刑と脅され、死刑を免れるためには本当に魔王を倒して、勇者としての責任を果たすしかないと宣言される。 「偽者として死ぬか。本物の英雄になるか――どちらか選びなさい」  選択肢は一つしかない。死にたくない総司は嘘を本当にするため、伝説の勇者の名を騙る。

異世界ハズレモノ英雄譚〜無能ステータスと言われた俺が、ざまぁ見せつけながらのし上がっていくってよ!〜

mitsuzoエンターテインメンツ
ファンタジー
【週三日(月・水・金)投稿 基本12:00〜14:00】 異世界にクラスメートと共に召喚された瑛二。 『ハズレモノ』という聞いたこともない称号を得るが、その低スペックなステータスを見て、皆からハズレ称号とバカにされ、それどころか邪魔者扱いされ殺されそうに⋯⋯。 しかし、実は『超チートな称号』であることがわかった瑛二は、そこから自分をバカにした者や殺そうとした者に対して、圧倒的な力を隠しつつ、ざまぁを展開していく。 そして、そのざまぁは図らずも人類の命運を握るまでのものへと発展していくことに⋯⋯。

【しっかり書き換え版】『異世界でたった1人の日本人』~ 異世界で日本の神の加護を持つたった1人の男~

石のやっさん
ファンタジー
12/17 13時20分 HOT男性部門1位 ファンタジー日間 1位 でした。 ありがとうございます 主人公の神代理人(かみしろ りひと)はクラスの異世界転移に巻き込まれた。 転移前に白い空間にて女神イシュタスがジョブやスキルを与えていたのだが、理人の番が来た時にイシュタスの顔色が変わる。「貴方神臭いわね」そう言うと理人にだけジョブやスキルも与えずに異世界に転移をさせた。 ジョブやスキルの無い事から早々と城から追い出される事が決まった、理人の前に天照の分体、眷属のアマ=テラス事『テラスちゃん』が現れた。 『異世界の女神は誘拐犯なんだ』とリヒトに話し、神社の宮司の孫の理人に異世界でも生きられるように日本人ならではの力を授けてくれた。 ここから『異世界でたった1人の日本人、理人の物語』がスタートする 「『異世界でたった1人の日本人』 私達を蔑ろにしチート貰ったのだから返して貰いますね」が好評だったのですが...昔に書いて小説らしくないのでしっかり書き始めました。

処理中です...