機械仕掛けの殲滅少女

サンボン

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幕間⑤

踊れ

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■ソフィア=アルベルティーニ視点

 深夜になり、私はベッドから起き上がると神官服に着替えた。

 これから私は、人と会うことになっている。

 本当は理由をつけてアデル様のお部屋にお伺いしたいところだけど、今回ばかりはアデル様やあの二人に見つかる訳にはいかない。

 そのために、全員が寝静まっているだろうこの時間を待っていたのだから。

 そっと扉を開けて辺りを確認する……うん、誰もいない。
 ですが、あのジャックさんの弟子というハンナさんは鋭いですので、かなり警戒しないと気づかれてしまいますが……。

 私は最大限の警戒をしつつ部屋を出ると、最短距離で玄関へと向かう。

 ——カタ。

 っ!? しまった!?

 私は廊下に飾ってあった調度品に触れてしまい、音を立ててしまった。
 慌てて物陰に隠れ、息を潜める。

 ……どうやら、気づかれなかったようですね。

 気づかれていたなら、あのハンナさんはこの程度の物音でも警戒して確認にくる筈ですから……。

 私は細心の注意を払いながらようやく玄関にたどり着き、屋敷を出て門をくぐった。

 すると。

「……遅かったわね」
「くふ……すいません。なかなか警戒が強いものですから」

 約束通り、門にもたれながらカルラさんが待っていた。

「それで……私は何をすればいいの?」
「くふ♪ 簡単ですよ。あの男をそそのかして、独断専行で『天国への階段』の調査に向かって欲しいのです」
「……正気?」

 依頼内容を伝えると、彼女はギロリ、と睨んだ。

「ええ、正気ですとも。私達も明日の朝、あなた達の後を追いかけてすぐに『天国への階段』を降りますから。それで……」

 私はカルラさんの傍に寄ると、そっと耳打ちする。

「……どうです? 悪い話ではないでしょう?」
「……そうね。それなら……」
「ただし、気づかれてしまうとアレですので、最下層にたどり着くまでは注意してくださいね?」
「分かったわ」

 そう言うと、カルラさんはクルリ、と踵を返す。

 そして。

「…………………………んふ♪」

 夜空に輝く三日月のようにその口の端を吊り上げ、この場を去って行った。

 彼女の姿が見えなくなり、しばらくすると。

「クハハ、首尾は上々、ってところかい?」

 暗闇の中から音もなく、ニヤニヤしながらジャックさんが現れた。

「ええ、そうですね。後は彼女が上手くやってくれるでしょう……いえ、引き返せなくなる・・・・・・・・、という表現が正しいかもしれませんね」
「クハ! えげつねえ」
「……そういうあなたは、彼女・・のところに行ったりはしないんですか?」

 皮肉を言うジャックさんをジト目で睨みつつ、同じように皮肉を返す。

「まさか! いくら俺でも、アイツに気づかれずに近づくのは容易じゃねえよ……それに、試しに忍び込んでみたんだが、結構色々と罠が仕掛けてあるみたいでよ……」

 ジャックさんはそう言って、肩を落とした。
 既に一度は試しているんですね……。

「それに」
「それに?」
「……いや、なんでもねー」

 すると彼にしては珍しく、顔をしかめながら言い淀んだ。

「クハ! それよりもあの王様、この街に“レッドキャップ”の連中を送り込んだみたいだぜ?」
「“レッドキャップ”……なんですかそれ?」
「ああ、王様直属の暗殺部隊でな。俺も仕事の都合上何度かかち合ったことがあるけどよ、アイツ等なかなかメンドクサイんだよ」

 ジャックさんが肩を竦めながら苦笑する。

「ま、俺的には大したことねえけどな。とはいえ[聖女セイント]様にとっちゃ、ちょっと都合が悪いんじゃねえの?」
「あら……助けてはくださらないんですか?」
「クハハ! まあ気が向いたらな!」

 楽しそうに笑っているジャックさんは置いておいて、“レッドキャップ”ですか……少々面倒ですね。

「ではジャックさん。正式な依頼としてお願いしたいのですが、『天国への階段』に潜り、“黄金の旋風”に気づかれないように彼等の後をつけてもらえませんか?」
「ん? [聖女セイント]様の護衛じゃなくてか?」

 私の意図が分からないためか、ジャックさんが怪訝な表情を浮かべて私を見る。

「はい。というか、あのカルラさんを死なないように護衛して欲しいのです」
「ますます分からねえな……そりゃどうして?」
「くふ♪ 決まってるではないですか。彼女は、私がアデル様を手に入れるための大切ななんですよ。それに……そうじゃないとあなたも欲しいものが手に入れられませんよ?」

 私が意味深にそう告げると、ジャックさんは一瞬キョトンとした。

 そして。

「クハハハハ! そういうことかよ!」

 私の意図を理解した彼が、膝を叩いて大声で笑った。

「ええ。ですので、ジャックさんには期待していますよ?」
「クハ! 了解!」

 ジャックさんは敬礼の姿勢をとったかと思うと、そのままスウ、と暗闇に溶けて消えた。

「これでカルラさんが一線を越えてくだされば、後は堕ちるだけ……楽しみですねえ……」

 私はその時を思うと嬉しくなり、つい口の端を吊り上げてしまった。
 だけど、それは仕方ない。

 だって……そうなれば、いよいよアデル様はこの私のものとなるのだから……。

「くふ♪ 皆さん、精々この私のために踊ってくださいね」
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