107 / 146
幕間⑤
愚者は嗤う
しおりを挟む
■エリアル視点
「あ……う……」
疲れ果てたロロがベッドの上でぐったりとしている。
それはレジーナも同じで、スヤスヤと寝息を立てていた。
だが、こんなものじゃ俺の怒りは収まらない。
「じゃあセシル、コッチに来い」
「う、うむ……」
既に済ませていたセシルだったが、俺にまた求められて嬉しいのか、頬を赤く染めて傍に寄って来た。
「さあ……」
「あ……ん、んん……」
俺の合図でセシルがゆっくり腰を下ろそうとした、その時。
——コンコン。
……不意に、俺の部屋をノックする音が聞こえた。
「……チッ、こんな夜中に誰だ一体!」
「あっ!?」
俺は乱暴にセシルを払いのけると、彼女に目で合図して扉を開けに行かせる。
セシルは裸なのが恥ずかしいのか扉を開けるのを少しためらうが、そんなことはお構いなしに俺は扉を開けるように顎で促す。
そして、セシルがゆっくりと扉を開けると。
「カルラ……」
現れたのは、カルラだった。
「カルラ、今さら何の用だ?」
俺は吐き捨てるようにそう告げる。
だってそうだろう? コイツはあの地下水路で、ハッキリと“黄金の旋風”を抜けた上に悪態まで吐いたんだからな。
「……『天国への階段』の調査の件だけど、私達で先行して潜ってしまわない?」
「はあ!?」
カルラの言葉に、俺は思わず声を上げる。
「んう……何なの、一体……」
「ふあ……」
その声で、レジーナとロロも起きたようだ。
「「……って、カルラ!?」」
「…………………………」
二人も驚いて声を上げるが、カルラは一瞥もせずにただ俺だけを見据えている。
「なあ、俺がオマエのそんな提案に乗ると思うのか?」
「ええ、思っているわ」
俺が馬鹿にするようにそう言い放つが、カルラは表情をピクリとも変えずに答えた。
「ハッ……ま、確かにオマエが裸で土下座したら、考えてやらんでもないがな」
俺は口の端を持ち上げ、鼻で笑った。
どうせプライドの高いカルラのことだ、そんな真似はしないのは分かってるがな。
「……そんなことはしないわ」
「フン! ならこの話はなしだ。とっとと立ち去……「だけど、私ならソフィア様に口添えできるわよ?」」
カルラを追い出そうと手で払う仕草をすると、カルラが突然そんなことを言った。
「……どういう意味だ?」
「分からない? 私はあなた達とは別にソフィア様からこの依頼を受けているのよ」
まあ、だろうな。
じゃなきゃ、あんなにアッサリと“黄金の旋風”を抜けるとか言わないだろうからな。
だが。
「それとさっきの話がどう関係があるんだ?」
少しだけ興味が湧いた俺は、カルラにそう尋ねる。
「簡単よ……私はそれだけあの[聖女]様に信頼されてるの。つまり、あなたをソフィア様の傍に置いてもらえるようお願いすることくらい、簡単だってことよ」
「…………………………」
「それに、あのアデル達を出し抜いて『天国への階段』を暴いたら、ソフィア様の覚えもめでたいだろうし、あれだけの遺跡だもの……ひょっとしたら、かなりの財宝も眠ってるかもしれないわよ?」
……確かに、カルラの言うことにも一理ある。
先に潜って、財宝だけ俺達のものにした後、調査結果をソフィア様に報告すれば、アデルなんかよりも俺達に重きを置くようになってもおかしくはない。
なにせ、ソフィア様はあの『天国への階段』にかなりご執心の様子だからな。
「で……どう? 一緒にやる?」
「……いいだろう」
「チョ、チョット!? エリアル!?」
俺がカルラの話に乗る姿勢を見せると、レジーナが慌てて止めに入る。
「何だ?」
「分かってるの!? コイツは一度、私達を裏切ったのよ!? それなのに、そんな言葉を信用するの!?」
「信用?」
フン……相変わらずレジーナもプライドが高いだけの馬鹿女だな。
「信用じゃないよレジーナ。これは、利用しているんだ。お互いに、な」
そう言うと、俺はチラリ、とカルラを見やる。
するとカルラも、こちらを見据えたままゆっくりと頷いた。
「だからレジーナ……それに二人も、どうか俺に協力してくれ!」
俺は三人に対し、頭を下げた。
「っ! も、もう、しょうがないわね……」
「アハハー、ボクは大丈夫だよー!」
「うむ……誇り高いエリアルが我々に頭を下げてまで頼むのだ。私達はあなたに従おう」
「ありがとう……」
優しく微笑む三人に、俺はもう一度礼を言う。
本当に……チョロい奴等だ。
「そういうことだ。カルラ、すぐ支度するから、宿の外で待っていてくれ」
「分かったわ」
そう告げると、カルラは部屋を出て行った。
「フ……まあ、『天国への階段』の一番下までたどり着いたら、カルラを散々嬲った後、罠にかかって死んだことにするがな」
「で、でもカルラは[剣聖]よ!?」
俺の言葉を耳聡く聞いていたレジーナが、困惑した表情でそう告げる。
「オイオイ、それを言ったら俺だって[英雄]なんだぞ? それに四対一の状況で、負ける訳ないだろ?」
「あ、そ、そっか……」
「そういうことだよ」
俺は微笑みながらレジーナの頭を撫でてやると、彼女は目を細めた。
まあ……無事にソフィア様とお近づきになれた暁には、コイツ等も切り捨てるがな。
「ハハハハハ! 楽しくなってきたぞ!」
俺はこれからの輝かしい未来を思い、声を上げて嗤った。
「あ……う……」
疲れ果てたロロがベッドの上でぐったりとしている。
それはレジーナも同じで、スヤスヤと寝息を立てていた。
だが、こんなものじゃ俺の怒りは収まらない。
「じゃあセシル、コッチに来い」
「う、うむ……」
既に済ませていたセシルだったが、俺にまた求められて嬉しいのか、頬を赤く染めて傍に寄って来た。
「さあ……」
「あ……ん、んん……」
俺の合図でセシルがゆっくり腰を下ろそうとした、その時。
——コンコン。
……不意に、俺の部屋をノックする音が聞こえた。
「……チッ、こんな夜中に誰だ一体!」
「あっ!?」
俺は乱暴にセシルを払いのけると、彼女に目で合図して扉を開けに行かせる。
セシルは裸なのが恥ずかしいのか扉を開けるのを少しためらうが、そんなことはお構いなしに俺は扉を開けるように顎で促す。
そして、セシルがゆっくりと扉を開けると。
「カルラ……」
現れたのは、カルラだった。
「カルラ、今さら何の用だ?」
俺は吐き捨てるようにそう告げる。
だってそうだろう? コイツはあの地下水路で、ハッキリと“黄金の旋風”を抜けた上に悪態まで吐いたんだからな。
「……『天国への階段』の調査の件だけど、私達で先行して潜ってしまわない?」
「はあ!?」
カルラの言葉に、俺は思わず声を上げる。
「んう……何なの、一体……」
「ふあ……」
その声で、レジーナとロロも起きたようだ。
「「……って、カルラ!?」」
「…………………………」
二人も驚いて声を上げるが、カルラは一瞥もせずにただ俺だけを見据えている。
「なあ、俺がオマエのそんな提案に乗ると思うのか?」
「ええ、思っているわ」
俺が馬鹿にするようにそう言い放つが、カルラは表情をピクリとも変えずに答えた。
「ハッ……ま、確かにオマエが裸で土下座したら、考えてやらんでもないがな」
俺は口の端を持ち上げ、鼻で笑った。
どうせプライドの高いカルラのことだ、そんな真似はしないのは分かってるがな。
「……そんなことはしないわ」
「フン! ならこの話はなしだ。とっとと立ち去……「だけど、私ならソフィア様に口添えできるわよ?」」
カルラを追い出そうと手で払う仕草をすると、カルラが突然そんなことを言った。
「……どういう意味だ?」
「分からない? 私はあなた達とは別にソフィア様からこの依頼を受けているのよ」
まあ、だろうな。
じゃなきゃ、あんなにアッサリと“黄金の旋風”を抜けるとか言わないだろうからな。
だが。
「それとさっきの話がどう関係があるんだ?」
少しだけ興味が湧いた俺は、カルラにそう尋ねる。
「簡単よ……私はそれだけあの[聖女]様に信頼されてるの。つまり、あなたをソフィア様の傍に置いてもらえるようお願いすることくらい、簡単だってことよ」
「…………………………」
「それに、あのアデル達を出し抜いて『天国への階段』を暴いたら、ソフィア様の覚えもめでたいだろうし、あれだけの遺跡だもの……ひょっとしたら、かなりの財宝も眠ってるかもしれないわよ?」
……確かに、カルラの言うことにも一理ある。
先に潜って、財宝だけ俺達のものにした後、調査結果をソフィア様に報告すれば、アデルなんかよりも俺達に重きを置くようになってもおかしくはない。
なにせ、ソフィア様はあの『天国への階段』にかなりご執心の様子だからな。
「で……どう? 一緒にやる?」
「……いいだろう」
「チョ、チョット!? エリアル!?」
俺がカルラの話に乗る姿勢を見せると、レジーナが慌てて止めに入る。
「何だ?」
「分かってるの!? コイツは一度、私達を裏切ったのよ!? それなのに、そんな言葉を信用するの!?」
「信用?」
フン……相変わらずレジーナもプライドが高いだけの馬鹿女だな。
「信用じゃないよレジーナ。これは、利用しているんだ。お互いに、な」
そう言うと、俺はチラリ、とカルラを見やる。
するとカルラも、こちらを見据えたままゆっくりと頷いた。
「だからレジーナ……それに二人も、どうか俺に協力してくれ!」
俺は三人に対し、頭を下げた。
「っ! も、もう、しょうがないわね……」
「アハハー、ボクは大丈夫だよー!」
「うむ……誇り高いエリアルが我々に頭を下げてまで頼むのだ。私達はあなたに従おう」
「ありがとう……」
優しく微笑む三人に、俺はもう一度礼を言う。
本当に……チョロい奴等だ。
「そういうことだ。カルラ、すぐ支度するから、宿の外で待っていてくれ」
「分かったわ」
そう告げると、カルラは部屋を出て行った。
「フ……まあ、『天国への階段』の一番下までたどり着いたら、カルラを散々嬲った後、罠にかかって死んだことにするがな」
「で、でもカルラは[剣聖]よ!?」
俺の言葉を耳聡く聞いていたレジーナが、困惑した表情でそう告げる。
「オイオイ、それを言ったら俺だって[英雄]なんだぞ? それに四対一の状況で、負ける訳ないだろ?」
「あ、そ、そっか……」
「そういうことだよ」
俺は微笑みながらレジーナの頭を撫でてやると、彼女は目を細めた。
まあ……無事にソフィア様とお近づきになれた暁には、コイツ等も切り捨てるがな。
「ハハハハハ! 楽しくなってきたぞ!」
俺はこれからの輝かしい未来を思い、声を上げて嗤った。
0
あなたにおすすめの小説
バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します
namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。
マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。
その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。
「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。
しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。
「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」
公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。
前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。
これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
復讐のための五つの方法
炭田おと
恋愛
皇后として皇帝カエキリウスのもとに嫁いだイネスは、カエキリウスに愛人ルジェナがいることを知った。皇宮ではルジェナが権威を誇示していて、イネスは肩身が狭い思いをすることになる。
それでも耐えていたイネスだったが、父親に反逆の罪を着せられ、家族も、彼女自身も、処断されることが決まった。
グレゴリウス卿の手を借りて、一人生き残ったイネスは復讐を誓う。
72話で完結です。
わたくしがお父様に疎まれている?いいえ、目に入れても痛くない程溺愛されております。
織り子
ファンタジー
王国貴族院の卒業記念パーティーの場で、大公家の令嬢ルクレツィア・アーヴェントは王太子エドワードから突然の婚約破棄を告げられる。
父であるアーヴェント大公に疎まれている――
噂を知った王太子は、彼女を公衆の面前で侮辱する。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
処刑された勇者は二度目の人生で復讐を選ぶ
シロタカズキ
ファンタジー
──勇者は、すべてを裏切られ、処刑された。
だが、彼の魂は復讐の炎と共に蘇る──。
かつて魔王を討ち、人類を救った勇者 レオン・アルヴァレス。
だが、彼を待っていたのは称賛ではなく、 王族・貴族・元仲間たちによる裏切りと処刑だった。
「力が強すぎる」という理由で異端者として断罪され、広場で公開処刑されるレオン。
国民は歓喜し、王は満足げに笑い、かつての仲間たちは目を背ける。
そして、勇者は 死んだ。
──はずだった。
十年後。
王国は繁栄の影で腐敗し、裏切り者たちは安穏とした日々を送っていた。
しかし、そんな彼らの前に死んだはずの勇者が現れる。
「よくもまあ、のうのうと生きていられたものだな」
これは、英雄ではなくなった男の復讐譚。
彼を裏切った王族、貴族、そしてかつての仲間たちを絶望の淵に叩き落とすための第二の人生が、いま始まる──。
友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。
だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった
何故なら、彼は『転生者』だから…
今度は違う切り口からのアプローチ。
追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。
こうご期待。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる