隊長さんとボク

ばたかっぷ

文字の大きさ
12 / 16

十ニ話

しおりを挟む

ーー心から願うこと…それは、みんなの幸せ。


大好きなシーグさん。
いつも果物をくれる露店の女将さん。
お隣のおじさんとおばさん教会の神官さまたち。

意地悪だと思ってたハイカだって、大事な人達の為に頑張ってる。

そして何より大切な、大好きな大好きな隊長さん…。

なのにボク達が馬鹿な真似をしたせいで、隊長さんを危険な目にあわせてしまった。


だから……。


「きゅっ…うきゅーっ!!(ボクは貴方のように自分の為に人を傷つける精霊を解放したりなんか絶対にしないっ!!)」

ボクは力の限り心の底からそう願って、前足を秘石にかけた。

『…この…小童…っ!』

その瞬間、まばゆいばかりの光が洞窟中を覆う。

そしてその光は洞窟から滝を通りぬけ、龍の谷すべてを覆い尽くしていった。


『…ぎ…やあああああ………っ』


光の洪水の中で、精霊の断末魔の叫びを聞いた気がした。


そのまま意識をなくしたボクには、それが本当だったのかどうか確かめる術はなかったのだけれど……




*****




…ナ…エナ…起きて…


目を覚ますんだ…エナ…


遠くからボクを呼ぶ声がする…この声は…シーグさんと…ああ、大好きな隊長さんの声だ…。

ふふ…あのね隊長さん…。…ボク凄い夢を見たんだよ。

…ボクがねっ悪い精霊を倒したの…ボクが力いっぱい念じたらね…なんでかボクの体から凄い光のかたまりみたいなのが出て来て、秘石と一緒に精霊が粉々に消えちゃったんだよ…。

隊長さんのお膝の上でよく読んでもらった、絵本に出て来た伝説の神獣のお話しみたいにボクに翼が生えてね。

龍の谷をそのままくるくる飛び回ってたら、ボクから出て来る光がたくさんの欠片になって、谷に降り注いで行って龍の谷が明るくなったんだよ。

ボクが夢の中の神獣みたいだったら、隊長さんのパートナーになれるのになあ。

でもいいんだ…。

パートナーにはなれなくても、隊長さんがボクを大事に思ってくれてるのは十分分かったもん。

だから今は無理でも、いつの日かボクが強くなったら…そのときは、ボクをパートナーにしてね隊長さん……。





「…エナっ!」

夢の中から目覚めると、シーグさんと隊長さんが心配そうに、ボクを見下ろしていた。

「良かったっ!エナ…っ」

シーグさんが泣きながら、ボクを抱きしめてくれる。

「きゅ…(あれ…ボク…)」

「ずっと目を覚まさないから、このままだったらどうしようかと…」

ボクを抱きしめるシーグさんの肩が震えている…きっとすごく心配かけちゃったんだ。

「きゅ…(…ごめんなさい)」

シーグさんの肩に手を置いた隊長さんが、ボクを見つめて言った。

「気に病むな、シーグが心配性なだけだ。力を使い過ぎたせいだから5日経てば目が覚めるとちゃんと医者から言われただろう?」

「だって心配するのは当たり前じゃないかっ!こんな小さな体であんな無茶をして、もし力を使い果たしていたらと思うと…」

「それについては同感だが、おかげで私もハイカも助かったしなあ。ありがとうエナ、改めて礼を言うよ」

「きゅっ!(えっ!あれってやっぱり夢じゃなかったの?…って言うかどこからが夢なの?)」

「エナ、夢って?」

「きゅーっ!(龍の谷に行ったら悪い精霊が秘石に閉じ込められてて、それでハイカと隊長さんが死にそうになって…)」

「それをエナが助けてくれたんだよ」

「きゅ?(ボクが助けた…?)」

「そうだよエナのおかげで精霊もいなくなった上に、龍の谷も本来の姿を取り戻せた」

ま…さか…あの光の夢は…本当にあったこと…?

えっ?じゃあボク…っ!?

ばっっ、と振り向いて背中を見てみたけど、やっぱりいつも通りの斑色だった。

はあ~っがっかり…やっぱり夢だったのか…。

「ああでもこれで明後日の目覚めの儀式はエナの本当の姿で迎えられるね。良かったね、エナ」

…ん?シーグさんの言ってる意味がよくわからない…ああっ!それよりいま目覚めの儀式が明後日ってシーグさん言わなかった?

ボクが寝てる間にそんなに日にちが経っちゃっていたの?

「クラウドも良かったね。これで煩さ方の大臣や神官様達も、エナをパートナーに選んでも何も言わないだろうしね」

「文句どころか手の平を返したように、エナを選べと言って来るだろうよ。まあ私はエナがエナであれば、伝説の神獣であろうとなかろうと何も関係ないがな」

「あ~だねえ…まったくクラウのもふもふ好きは子供の頃からちっとも変わらないねえ」

「いいや変わったぞ?以前はもふもふした物すべてが好きだったが、エナに出会ってからはエナのもふもふが一番好きだ」

「………お願いだから、他の人の前ではソレ言わないでね…」

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

炎の精霊王の愛に満ちて

陽花紫
BL
異世界転移してしまったミヤは、森の中で寒さに震えていた。暖をとるために焚火をすれば、そこから精霊王フレアが姿を現す。 悪しき魔術師によって封印されていたフレアはその礼として「願いをひとつ叶えてやろう」とミヤ告げる。しかし無欲なミヤには、願いなど浮かばなかった。フレアはミヤに欲望を与え、いまいちど願いを尋ねる。 ミヤは答えた。「俺を、愛して」 小説家になろうにも掲載中です。

王弟の恋

結衣可
BL
「狼の護衛騎士は、今日も心配が尽きない」のスピンオフ・ストーリー。 戦時中、アルデンティア王国の王弟レイヴィスは、王直属の黒衣の騎士リアンと共にただ戦の夜に寄り添うことで孤独を癒やしていたが、一度だけ一線を越えてしまう。 しかし、戦が終わり、レイヴィスは国境の共生都市ルーヴェンの領主に任じられる。リアンとはそれきり疎遠になり、外交と再建に明け暮れる日々の中で、彼を思い出すことも減っていった。 そして、3年後――王の密命を帯びて、リアンがルーヴェンを訪れる。 再会の夜、レイヴィスは封じていた想いを揺さぶられ、リアンもまた「任務と心」の狭間で揺れていた。 ――立場に縛られた二人の恋の行方は・・・

末っ子王子は婚約者の愛を信じられない。

めちゅう
BL
 末っ子王子のフランは兄であるカイゼンとその伴侶であるトーマの結婚式で涙を流すトーマ付きの騎士アズランを目にする。密かに慕っていたアズランがトーマに失恋したと思いー。 お読みくださりありがとうございます。

神獣様の森にて。

しゅ
BL
どこ、ここ.......? 俺は橋本 俊。 残業終わり、会社のエレベーターに乗ったはずだった。 そう。そのはずである。 いつもの日常から、急に非日常になり、日常に変わる、そんなお話。 7話完結。完結後、別のペアの話を更新致します。

手切れ金

のらねことすていぬ
BL
貧乏貴族の息子、ジゼルはある日恋人であるアルバートに振られてしまう。手切れ金を渡されて完全に捨てられたと思っていたが、なぜかアルバートは彼のもとを再び訪れてきて……。 貴族×貧乏貴族

聖女召喚の巻き添えで喚ばれた「オマケ」の男子高校生ですが、魔王様の「抱き枕」として重宝されています

八百屋 成美
BL
聖女召喚に巻き込まれて異世界に来た主人公。聖女は優遇されるが、魔力のない主人公は城から追い出され、魔の森へ捨てられる。 そこで出会ったのは、強大な魔力ゆえに不眠症に悩む魔王。なぜか主人公の「匂い」や「体温」だけが魔王を安眠させることができると判明し、魔王城で「生きた抱き枕」として飼われることになる。

もう一度、その腕に

結衣可
BL
もう一度、その腕に

貴族軍人と聖夜の再会~ただ君の幸せだけを~

倉くらの
BL
「こんな姿であの人に会えるわけがない…」 大陸を2つに分けた戦争は終結した。 終戦間際に重症を負った軍人のルーカスは心から慕う上官のスノービル少佐と離れ離れになり、帝都の片隅で路上生活を送ることになる。 一方、少佐は屋敷の者の策略によってルーカスが死んだと知らされて…。 互いを思う2人が戦勝パレードが開催された聖夜祭の日に再会を果たす。 純愛のお話です。 主人公は顔の右半分に火傷を負っていて、右手が無いという状態です。 全3話完結。

処理中です...