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お嬢様視点
しおりを挟む私の産みのお母様は、私がもっと小さい頃に亡くなったと聞きました。
でも私はさみしくありません。
だって、私にはお母様がいるのですから。
お母様が家にやってきたのは、私がまだとっても小さかった頃のことです。
にこやかな笑みを浮かべるお母様はとってもきれいでしたし、私の目線に合わせてしゃがんでくれたことがとっても嬉しかったことを覚えています。
何をするのも全てお母様と一緒にやってきました。
お母様は優しくて、怒る時も何故怒ったのかその理由をわかりやすく教えてくれました。
私がもう少し成長してからは、淑女教育ということで姿勢改善や歩き方など、早くに身に付けた方がいいことからやっていきました。
ある日の事、お父様が王子殿下の婚約者候補として私を推薦したいと言いました。
“王子殿下”というものは絵本の中と“お母様のお話し”でしか知りませんが、シゴデキ男かダメ男のどちらかだとお母様は言っていました。
シゴデキ男は仕事が出来る男という意味で、殿下がシゴデキならば才能に溢れて民を引っ張っていくことが出来るとお母様が言っていました。
それでも恋愛面としてはお母様曰く、「仕事が出来ても妻を愛さない男はNGよ。絶対選んではいけないわ」といっていました。
そしてダメ男については、最近お母様が教えてくれました。
なんでも五十年くらい前に隣国であった話で、とても優れた婚約者がいた王子様は、令嬢のその才能に嫉妬し、いつしか婚約者に対して憎しみを抱くようになり、女性として見れなくなったそうです。
そして婚約者である令嬢とは全く正反対の、勉強も遮光も全く出来ない令嬢と恋に落ち、そして婚約者の令嬢に在らぬ罪を着せて断罪しようとしたというもの。
「ひどい人!」と私は憤慨したものですが、お母様はにこりと笑って話をつづけました。
やっぱり令嬢は王子殿下よりも優れた人で、断罪を事前に予知し冤罪を証明。
そして民を率いる王族にあるまじき行為をしてきた王子殿下の行いを、王族についている影を利用して次々と公開。
ただの婚約破棄をするのではなく、王子だったその人から王位継承権をなくし、そして王子と浮気していた令嬢の両方から慰謝料をがっぽりととってみせる手腕を見せ、更に王妃教育の中才能を発揮していたご令嬢を逃したくないと考えた王様から、高位な役職を与えられたとか。
私と同じ女性なのに凄い!と感心しスッキリポイントの高いお話しではありましたが、この王子殿下がダメ男として代表例だとお母様は言っていました。
人の才能を恨み、そのくせプライドは高く、そして女性を下見るような男。
勿論お母様は「そんな男なんてニアちゃん_私の愛称_の視界にも入れる価値ないから!」と言っていました。
この国の王子殿下がどのような人柄なのかはわからないけれど、お母様の言うとおり例え優れた男性であっても妻となる人を放置されるならば、そんな男性との婚姻はそもそも望まないと私も同意見です、
だから私は恋愛結婚がいいと、自分の意思を伝えたの。
そうしたらお父様もわかってくれて、王子殿下への婚約者候補として推薦しなかったと教えていただいたわ。
そして季節が何度か変わり、そして繰り返したある日のこと。
私はお母様と共に出掛けていて、その時一人の男性と出会ったの。
闇のような漆黒の髪の毛は短く切りそろえられていて、不機嫌かとも思えるような表情はあまり変えることがないだけで、とても整っている男性の方。
目の色はまるでルビーを思い起こさせる程綺麗な赤色で、私は目を奪われましたわ。
もしかしたら時間が止まったのかと、そう思えるほどに見つめていたのかもしれません。
その男性の方は騎士を目指していて、どちらも社交界にいない為、接点は当然のことながらありませんでした。
ですがそんな私でも、お母様のアドバイスを受けて、必死にアプローチをしたの。
手紙を書いて、姿は見えなくとも差し入れをして。
そしてやっと呼びかけに答えてくれるようになってからは、二人でデートをしたの。
幸せだった。
ううん。
今でもとっても幸せで、恋愛結婚って本当に良いものだと思っているわ。
あの時王子殿下との婚約者候補として頷かないでよかったと、お母様がお父様に反対してくれてよかったと、本当に思っているの。
だからこそ…、なのかしら?
私はお母様にも幸せになってほしいと思っているのよ。
ねえ?お母様?
そろそろお父様の熱のこもった視線に気づいていない振りはお止めになさらない?
じゃないと、今度は私がお父様の味方に付いて、……ふふ。
私はお母様もお父様も大好きなんです。
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