人生最後のときめきは貴方だった

中道舞夜

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最終話 この恋を人は”不倫”と呼ぶ

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桜が舞い散る季節から幾度かの季節が巡り、再び春の光が優しく降り注ぐようになった。あの小高い丘で、七海と恭吾は未来への小さな一歩を踏み出した。

「母親なんだから」「母親なのに」その言葉が、今も七海の心に深く刻まれている。愛しい海斗と陽菜の存在は、彼女の生きる理由で生活の基盤だ。そして恭吾も、そんな七海を支えたいと思い、母として強く生きる七海を応援していた。

ーーーーーーーーーーーーーーーーー
・子どもたちとの生活を最優先にする
・平日は逢わない
・電話やメールなどの連絡は平日の昼間のみ
・逢うのは月に一度子どもたちを両親に預ける日だけ
・子どもたちの体調を最優先にする
・恭吾くんに気になる人が出来たらすぐに別れ応援する
ーーーーーーーーーーーーーーーーー

この6つを約束事に、七海と恭吾は一緒にいる道を選んだ。

「他に気になる人なんて出来るわけないじゃないですか」

恭吾は少し不服そうな表情を浮かべ、そう言い張ったけれど、未来のことは誰にも分からない。そして、七海も恭吾を自分の都合の良いように縛り付けたくはなかった。

お互いの気持ちを尊重し、無理のない関係を築いていくこと。それが二人が選んだ共に歩むための最低限のルールだった。


普段は、海斗と陽菜との三人暮らしで単身赴任中の夫がいる。もう三年以上も離れて暮らしており、今後、再び共に生活する予定もない。それでも、社会的な立場において七海は紛れもない既婚者だ。
恭吾との関係を、この恋を、人は"不倫"と呼ぶ。



【不倫】……人が踏み行うべき道からはずれること。特に、配偶者でない者との男女関係。


第三者から見れば、私たちは道を踏み外した、許されない行動をしているのかもしれない。後ろめたさがないと言えば嘘になる。それでも七海は思うのだ。あの時、恭吾の温もりに触れ、優しい言葉に支えられたからこそ、心が救われたのだと。そして今も、恭吾という存在が七海の心の片隅に温かい光を灯してくれているからこそ、彼女は、母親として、女性として、前を向いて生きていられるのだと。


道からはずれた恋。それは、決して褒められることではない。けれど、七海と恭吾は、その事実から目を背けることなく、大きく道を外すことの無いよう、お互いの手をしっかりと握りしめながら、今日も歩んでいる。

ーー完ーー
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