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第4話 微熱
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『居酒屋の個室、帰ろうと思ったら鈴木が隣に座ってきて勢いよく手を引いてきた。そして私は今、鈴木の胸の中にいる…。』
ドックン……ドックン……ドックン……
鈴木の胸から力強く早い鼓動が聞こえる。
『合鍵を渡したくて待っていて欲しい…そして、この展開…。少なくとも鈴木は私を特別な存在だと思っているってこと…だよね?』
早苗も、鈴木に負けないくらい動揺とときめきが交互に押し寄せてきて胸がはちきれそうになっていた。
鈴木は、がっしりと早苗の腕と頭に触れていたが、髪を撫でまわしたあとゆっくりと背中に手を周り手を回し両腕で包み込むよう抱きしめた。
鈴木が隣に座ってきてからは、床に手を付けたままだったが早苗もぎこちないながらも鈴木の背中に手を回した。
細身だが決して痩せ細っているわけではなく、適度に筋肉のついた厚みのある背中だった。大柄な早苗が腕を回してもわずかに届くだけだった。
『わぁ…鈴木、思ったより体格いいんだな。大きいな、そして温かい…」
普段見ることのない鈴木の男らしい部分に、早苗の鼓動はさらに高まっていた。
鈴木の腕が自分の背中に回っていて、自分の手も鈴木の背中を撫でている。その事実が不思議だった。
3日前のメールを受け取るまではこんな関係になると思ってもいなかった。
早苗は戸惑いながらも、どこか嬉しさを感じていた。無理だと思って諦めた相手と抱き合っている。強く、強く、抱き合っている。
しばらくの沈黙が流れた。
その沈黙を破ったのは、鈴木だった。
「あのさ…俺、楠木のこと抱きしめたんだけど、楠木も手を回したってことは、同じ気持ちだと思っていいんだよな?」
「…………。」
『こんな時くらい中高生の告白みたいに「好き。」と言葉で分かりやすく伝えてよ……。』
『この状況、わざわざ確認しなくても分かるよね?』
と思ったが、緊張と恥ずかしさが勝りただ首を縦に振ることしかできなかった。
鈴木は、早苗の反応を見て安堵の表情を浮かべた。
そして、ゆっくりと顔を下げる。早苗も鈴木の視線を感じ顔を上げると二人は見つめ合うような形になった。
早苗の背中にあった鈴木の腕が、少しずつ上にあがっていく。
優しく、なでるように、まるで壊れやすい繊細なものを扱うかのように、指を這わせる。
ゆっくりと背中から首筋を通っていく。早苗の背中は敏感になりゾクゾクと反応するが
声に出さぬよう堪えていた。
しかし、鈴木の指が背中から首すじに触れた瞬間、ぴくりと反応し「ん、んっ…」と、抑えていた吐息が小さく漏れた。
いつもとは違う甘い”女”の声が漏れた。
恥ずかしくなったが、鈴木もうっとりとした目で物欲しげに早苗の顔を見つめている。
二人は、磁石のように吸い込まれるようにお互いの口を近づけ、ゆっくりと、そして長い、長いキスをした。
今までの同僚としての距離感とは全く違う、特別な距離感で、鈴木を感じていた。
鈴木の息遣い、体温、唇の柔らかさ。全てが、早苗の五感を刺激し今まで感じたことのない感情を呼び起こした。
『ん…んん…もっと…』
早苗と同じ気持ちなのだろうか、鈴木が舌を入れてきた。舌と舌が絡み合う。
そのうち、上顎や歯を舐めたり下唇や舌を吸うなど激しさを増していった。
「ん…ふ…んん…」声にならない声が早苗から漏れる。
鈴木は一旦、唇を離すといたずらげな顔で微笑み、唇の中央を人差し指で触れた。
個室とはいえ、ここは居酒屋。薄い壁とふすまだけ。換気のため天井は吹き抜けになっているため声が漏れる。声を出しちゃ駄目だよという合図らしい。
『鈴木が激しくしてこんなになったのに……意地悪……』
そう思う反面、また鈴木の唇と会わせたかった。鈴木も意味ありげに笑ったのちに、またキスをしてきた。
声が漏れないように気を付けながら、二人はまた長く激しく舌と舌を絡めあう情熱的なキスを続けた。
口を離すとお互いまだ相手の口元を見つめている。息も乱れ熱帯びている。
「はぁ…はぁ…ふ…ありがとう」
鈴木は優しく微笑んだ後、囁くように言った。早苗は脱力したように微笑み返した。
今までの日常とは違う、新しい何かが始まった。それは心躍る、特別な始まりだった。
ドックン……ドックン……ドックン……
鈴木の胸から力強く早い鼓動が聞こえる。
『合鍵を渡したくて待っていて欲しい…そして、この展開…。少なくとも鈴木は私を特別な存在だと思っているってこと…だよね?』
早苗も、鈴木に負けないくらい動揺とときめきが交互に押し寄せてきて胸がはちきれそうになっていた。
鈴木は、がっしりと早苗の腕と頭に触れていたが、髪を撫でまわしたあとゆっくりと背中に手を周り手を回し両腕で包み込むよう抱きしめた。
鈴木が隣に座ってきてからは、床に手を付けたままだったが早苗もぎこちないながらも鈴木の背中に手を回した。
細身だが決して痩せ細っているわけではなく、適度に筋肉のついた厚みのある背中だった。大柄な早苗が腕を回してもわずかに届くだけだった。
『わぁ…鈴木、思ったより体格いいんだな。大きいな、そして温かい…」
普段見ることのない鈴木の男らしい部分に、早苗の鼓動はさらに高まっていた。
鈴木の腕が自分の背中に回っていて、自分の手も鈴木の背中を撫でている。その事実が不思議だった。
3日前のメールを受け取るまではこんな関係になると思ってもいなかった。
早苗は戸惑いながらも、どこか嬉しさを感じていた。無理だと思って諦めた相手と抱き合っている。強く、強く、抱き合っている。
しばらくの沈黙が流れた。
その沈黙を破ったのは、鈴木だった。
「あのさ…俺、楠木のこと抱きしめたんだけど、楠木も手を回したってことは、同じ気持ちだと思っていいんだよな?」
「…………。」
『こんな時くらい中高生の告白みたいに「好き。」と言葉で分かりやすく伝えてよ……。』
『この状況、わざわざ確認しなくても分かるよね?』
と思ったが、緊張と恥ずかしさが勝りただ首を縦に振ることしかできなかった。
鈴木は、早苗の反応を見て安堵の表情を浮かべた。
そして、ゆっくりと顔を下げる。早苗も鈴木の視線を感じ顔を上げると二人は見つめ合うような形になった。
早苗の背中にあった鈴木の腕が、少しずつ上にあがっていく。
優しく、なでるように、まるで壊れやすい繊細なものを扱うかのように、指を這わせる。
ゆっくりと背中から首筋を通っていく。早苗の背中は敏感になりゾクゾクと反応するが
声に出さぬよう堪えていた。
しかし、鈴木の指が背中から首すじに触れた瞬間、ぴくりと反応し「ん、んっ…」と、抑えていた吐息が小さく漏れた。
いつもとは違う甘い”女”の声が漏れた。
恥ずかしくなったが、鈴木もうっとりとした目で物欲しげに早苗の顔を見つめている。
二人は、磁石のように吸い込まれるようにお互いの口を近づけ、ゆっくりと、そして長い、長いキスをした。
今までの同僚としての距離感とは全く違う、特別な距離感で、鈴木を感じていた。
鈴木の息遣い、体温、唇の柔らかさ。全てが、早苗の五感を刺激し今まで感じたことのない感情を呼び起こした。
『ん…んん…もっと…』
早苗と同じ気持ちなのだろうか、鈴木が舌を入れてきた。舌と舌が絡み合う。
そのうち、上顎や歯を舐めたり下唇や舌を吸うなど激しさを増していった。
「ん…ふ…んん…」声にならない声が早苗から漏れる。
鈴木は一旦、唇を離すといたずらげな顔で微笑み、唇の中央を人差し指で触れた。
個室とはいえ、ここは居酒屋。薄い壁とふすまだけ。換気のため天井は吹き抜けになっているため声が漏れる。声を出しちゃ駄目だよという合図らしい。
『鈴木が激しくしてこんなになったのに……意地悪……』
そう思う反面、また鈴木の唇と会わせたかった。鈴木も意味ありげに笑ったのちに、またキスをしてきた。
声が漏れないように気を付けながら、二人はまた長く激しく舌と舌を絡めあう情熱的なキスを続けた。
口を離すとお互いまだ相手の口元を見つめている。息も乱れ熱帯びている。
「はぁ…はぁ…ふ…ありがとう」
鈴木は優しく微笑んだ後、囁くように言った。早苗は脱力したように微笑み返した。
今までの日常とは違う、新しい何かが始まった。それは心躍る、特別な始まりだった。
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