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第33話 一時帰国
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スマートフォンのバイブレーションがなり「鈴木浩太」の文字が表示され、すぐに開くとメッセージが届いていた。
「おつかれさま。12月2週目に帰国する予定になったけれど、都合つく日あるかな?」
12月2週目……忘年会シーズンではあるが、まだ1か月近くあるので都合はつけやすい。
「今のところ予定入っていないから大丈夫。あっても部門の忘年会が1日入るだけだと思う。」
「了解。また近くなったら連絡する」
相変わらずサッパリとした内容だった。
「楠木さん、今のって彼氏……じゃなくて、それっぽい人ですか?」
滝が意味ありげにニヤニヤと笑っている。
「…………別に」
「普段、聞いてもらってばかりなんで俺いつでも聞きますよ!」
「いいよ、遠慮しておく。滝さんには絶対言わない(笑)」
いつの間にか早苗も滝に対し気を許し、冗談を言う仲になっている。
一方の鈴木は、早苗からすぐに返信がきたことに安堵した。
前回の帰国時は、お互い気持ちがあることを確かめ合ったものの待たせるということが鈴木の中で申し訳なさが勝り、不確実な中でヨリを戻さない方がいいと話をしたのだが、そのことが裏目に出て早苗とは微妙な空気のままその場を別れることになってしまった。
『幻滅されていたらどうしよう……。』
仕事ではどうにかなる、どうにかしてやると自信に満ちていたが、早苗との恋愛となると弱気で悪いことばかり考え自信暗鬼になっていた。
今回も一週間の帰国だが移動の時間もあるため、実質の稼働時間は2-3日だろう。毎回、帰国のたびに上司は部門の飲み会を開き親睦を深めようとしてくれる。相手の好意を無碍にするのも悪いので、ありがたいと思い参加していたが本当は早苗との時間に充てたかった。
『どこかで1日でもゆっくり出来る日があるといいな……。』
鈴木は早苗との再会を心待ちにしながら帰国の日を待った。そして、早苗も同じ気持ちでいた。
「日本の冬は寒いな……。」
あっと言う間に帰国日となり、鈴木は再び日本の地へと足を踏み入れた。
会社では、役員への現状報告が終われば比較的自由に過ごせた。
海外が勤務地のため、日本のここに自席はない。空いているスペースはあるが、一人の方が落ち着くため、報告を終わらせるとメール処理をするため近くのカフェに行くことにした。
「楠木!!!」
エレベーターを降りると入口に早苗の姿があった。
「……鈴木」
早苗も気が付き、小さく微笑み返してくれた。
「鈴木、会社ついていたんだ」
「ああ、今日は空港から直行で出社にしたんだ。もう用件終わったから、今からカフェでメールとか片付けに行くところ」
「そっか。……あ、9月から総務部に入った滝さん」
早苗を見つけたときからずっと後ろで静かに立っていた男を紹介してくれた。
「初めまして。滝孝太郎と申します。よろしくお願いします。」
「鈴木です。よろしくお願いします」
滝と言う男は、パーマでネイビーのV字のニットに水色のYシャツ・ネクタイをつけ、爽やかな風貌をしており、にこやかな笑顔とハキハキした口調はうちの会社らしからぬ雰囲気だった。
「それじゃ、行くよ。また」そう早苗に言って、話を切り上げた。
「あ、うん。また」
早苗のいる総務部は年齢層が高かった。そのため、早苗が同期以外で同世代の男と話すことをあまり見たことがない。
『なんかあの余裕がある感じが好きになれないんだよな……』
久々に早苗に会えたが、同じ部門で業務中とは言え隣に男がいたのが面白くなかった。
鈴木は気持ち察知されたくなくて、早々に話を切り上げ会社を後にした。
鈴木を見送り、姿が見えなくなると滝が意味ありげに視線を送っていることに気が付いた。
「楠木さんのことを呼び捨てにする人って珍しいですね」
「ああ…。同期なの。」
「ふーーーん。僕にはただの同期には見えなかったけどな。鈴木さん、僕のこと少し威嚇している感じがありましたよ。嫉妬したんじゃないですか。」
「ないない。」
浩太に限って嫉妬なんてないだろう。日頃から社内に敵を作らないように謙虚な姿勢で、常に感謝の言葉を口にすることを意識していた。威嚇なんてありえない。
『……滝さんはからかっている?それとも、何か違う空気でもあって気付かれた?変なところで勘が冴えてそうだな……。』
付き合っていたことは10月に定年退職した滝の前任の早川にしか言っていない。早川が滝に吹き込むようなことをするとは思えないので、何か感じたか反応を探ってきたのだろう。
明後日の夜、帰国前日に鈴木と会うことになっている。空港まで送って行けるように翌日休暇の申請もしておいた。待ちわびていたのが声や表情に出ていたのか……。
今は浩太……いや、鈴木のことは忘れて業務に集中しよう。早苗は気を入れ直した。
「おつかれさま。12月2週目に帰国する予定になったけれど、都合つく日あるかな?」
12月2週目……忘年会シーズンではあるが、まだ1か月近くあるので都合はつけやすい。
「今のところ予定入っていないから大丈夫。あっても部門の忘年会が1日入るだけだと思う。」
「了解。また近くなったら連絡する」
相変わらずサッパリとした内容だった。
「楠木さん、今のって彼氏……じゃなくて、それっぽい人ですか?」
滝が意味ありげにニヤニヤと笑っている。
「…………別に」
「普段、聞いてもらってばかりなんで俺いつでも聞きますよ!」
「いいよ、遠慮しておく。滝さんには絶対言わない(笑)」
いつの間にか早苗も滝に対し気を許し、冗談を言う仲になっている。
一方の鈴木は、早苗からすぐに返信がきたことに安堵した。
前回の帰国時は、お互い気持ちがあることを確かめ合ったものの待たせるということが鈴木の中で申し訳なさが勝り、不確実な中でヨリを戻さない方がいいと話をしたのだが、そのことが裏目に出て早苗とは微妙な空気のままその場を別れることになってしまった。
『幻滅されていたらどうしよう……。』
仕事ではどうにかなる、どうにかしてやると自信に満ちていたが、早苗との恋愛となると弱気で悪いことばかり考え自信暗鬼になっていた。
今回も一週間の帰国だが移動の時間もあるため、実質の稼働時間は2-3日だろう。毎回、帰国のたびに上司は部門の飲み会を開き親睦を深めようとしてくれる。相手の好意を無碍にするのも悪いので、ありがたいと思い参加していたが本当は早苗との時間に充てたかった。
『どこかで1日でもゆっくり出来る日があるといいな……。』
鈴木は早苗との再会を心待ちにしながら帰国の日を待った。そして、早苗も同じ気持ちでいた。
「日本の冬は寒いな……。」
あっと言う間に帰国日となり、鈴木は再び日本の地へと足を踏み入れた。
会社では、役員への現状報告が終われば比較的自由に過ごせた。
海外が勤務地のため、日本のここに自席はない。空いているスペースはあるが、一人の方が落ち着くため、報告を終わらせるとメール処理をするため近くのカフェに行くことにした。
「楠木!!!」
エレベーターを降りると入口に早苗の姿があった。
「……鈴木」
早苗も気が付き、小さく微笑み返してくれた。
「鈴木、会社ついていたんだ」
「ああ、今日は空港から直行で出社にしたんだ。もう用件終わったから、今からカフェでメールとか片付けに行くところ」
「そっか。……あ、9月から総務部に入った滝さん」
早苗を見つけたときからずっと後ろで静かに立っていた男を紹介してくれた。
「初めまして。滝孝太郎と申します。よろしくお願いします。」
「鈴木です。よろしくお願いします」
滝と言う男は、パーマでネイビーのV字のニットに水色のYシャツ・ネクタイをつけ、爽やかな風貌をしており、にこやかな笑顔とハキハキした口調はうちの会社らしからぬ雰囲気だった。
「それじゃ、行くよ。また」そう早苗に言って、話を切り上げた。
「あ、うん。また」
早苗のいる総務部は年齢層が高かった。そのため、早苗が同期以外で同世代の男と話すことをあまり見たことがない。
『なんかあの余裕がある感じが好きになれないんだよな……』
久々に早苗に会えたが、同じ部門で業務中とは言え隣に男がいたのが面白くなかった。
鈴木は気持ち察知されたくなくて、早々に話を切り上げ会社を後にした。
鈴木を見送り、姿が見えなくなると滝が意味ありげに視線を送っていることに気が付いた。
「楠木さんのことを呼び捨てにする人って珍しいですね」
「ああ…。同期なの。」
「ふーーーん。僕にはただの同期には見えなかったけどな。鈴木さん、僕のこと少し威嚇している感じがありましたよ。嫉妬したんじゃないですか。」
「ないない。」
浩太に限って嫉妬なんてないだろう。日頃から社内に敵を作らないように謙虚な姿勢で、常に感謝の言葉を口にすることを意識していた。威嚇なんてありえない。
『……滝さんはからかっている?それとも、何か違う空気でもあって気付かれた?変なところで勘が冴えてそうだな……。』
付き合っていたことは10月に定年退職した滝の前任の早川にしか言っていない。早川が滝に吹き込むようなことをするとは思えないので、何か感じたか反応を探ってきたのだろう。
明後日の夜、帰国前日に鈴木と会うことになっている。空港まで送って行けるように翌日休暇の申請もしておいた。待ちわびていたのが声や表情に出ていたのか……。
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